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#3コンパッショネートなシステム思考を子育てやなんやかんやで使う

忙しくて「待てない自分」に罪悪感

 「子育て」と「焦り」は切っても切れない関係な気がします。

 振り返ると、自分自身も毎日焦り続けていました。家事も仕事も常に前倒し。朝食時に夕飯は作っておく、子どもが体調を崩すなどの事態に備えて仕事は常に前倒しスケジュールで進める……などなど。

 不思議なことに、前倒ししたからといって、心のゆとりは生まれませんでした。「不測の事態」のために前倒ししているはずなのに、不測の事態が起きなかった場合は、その分さらに前倒しする、という訳の分からないループに陥っていました。

 そんな生活を続けていると、心も頭も体も、常に先のことに囚われてしまいます。そして、余白が大事なはずの「子どもとの関わり」も、前倒しペースに巻き込まれていきます。その結果、子育てにおいて大切な「子どもを待つ」ことができなくて罪悪感を覚えたこともあります。

 子どもが失敗しないように先回りして手を出してしまう――。

 あるあるの悩みです。

 ごく単純化した例を「Shifting the Burden」というツールに当てはめてみます。朝の身支度を子どもが自分一人では上手にできない。上手にできないと時間がかかる上に、子どもの心も親の心も乱れます。それでは親も子どもも遅刻してしまう。

 遅刻すると困るから、つい親がやってあげる。親がやってあげると、親子とも平穏な心で家を出られます。遅刻も免れます。

問題=一人で上手に身支度できず時間がかかる
対症療法=親がやってあげる
根本解決=一人で上手にできるように練習する

ツールを使って家庭内で考えてみる

 子どもが自分で身支度を上手にできるようになるためには、失敗を重ねて少しずつ練習する必要があります。でも、親がいつもやってあげると、練習する機会がなくなってしまいます。また、子どもは「身支度は親がやってくれるもの」と思います。すると、挑戦する気持ちを持てなくなる可能性があります。対症療法で生まれた「副作用」が根本解決を遠ざけてしまいます。副作用はほかにもあるかもしれません。

 自分でできるようになるために少しずつ練習するには、余分な時間、子どもの失敗やそれに伴う感情の揺れを受け止める親の心構えなどが必要です。でも、いったんできるようになれば問題は解決します。さらに、子どもがそこで得た「自信」は次の挑戦への土台になるでしょう。その子の現状に合った挑戦が親の目に見えて、子どもの「できた!」を一緒に喜べることは、子育ての醍醐味でもあります。

 似たような構造は身の回りに多々あります。「自分はたくさん仕事を抱えている。でも後輩に任せると教える必要が出てくるから余計時間がかかる。自分でやったほうが早い。自分で頑張る」。そのときは解決しても、後輩が育たなければずっと仕事を任せることはできないので、また同じ問題が発生します。

 「Shifting the Burden」は、よくある構造の基本パターンを表したシステム思考の「システム原型」の一つで、コンパッショネート・システムズのワークショップでも演習がありました。

 現実はとても複雑です。ツールに当てはめたからといって解決するわけではありません。でも、つながりをいったん目に見えるようにして家庭内で考えてみることで、根本的な解決に向かう姿勢を持てそうです。(#4につづく)

子育ての「喜びどころ」について書いた関連記事はこちらです。

コンパッショネート・システムズ(Center for Systems Awareness)


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