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末席工芸作家の仕事は多岐にわたるが、そのひとつ「DM作り」について

自分が作ったものを販売して生計を立てていくのは楽ではない。
夫と私が作るのは生活必需品ではなく、美術工芸品や装身具「無くても生活には困らない贅沢な嗜好品」は、景気が悪化すれば真っ先に切り捨てられる部分だろう。

メディアで脚光を浴び個展のたびに作品完売となる作家など、ピラミッドの頂点のごく一部で、それとても5年後10年後の補償は無い。

「売ることが目的ではなく、生き甲斐として制作しています」
なんらかの手立てで生計が確保されているなら、趣味の延長として優雅に作家活動するのもアリだが、我が家の場合、不労所得は無く夫婦ともに安定しない作家稼業。この道で生きるために節約しながら自分で出来ることは何でもするし、武器にできる能力は何でも使う。

前置きが長くなったが、表題の「DM作り」について

6月5日から1週間、日本橋丸善で4人展を開催します

いつどこで展示会をします、こんな作品が並びますとお知らせするご案内ハガキ。 自分のお客さまへ郵送するほか、展示会を開催するお店に2週間前くらいから置かせていただき、お客さまに興味を持って頂くための重要なアイテムである。 ギャラリーの企画展はお店が用意するが、作家が用意することも多くなった。

百貨店の場合は、初稿を画廊や売場の担当者に送り、広告媒体部門でチェックを受ける。「この文章の漢字をひらがな表記に」や「料金後納の線を二重線に」など校正を経て修正原稿を再提出。校了を頂くまでに数回のやりとりし、その後データ入稿で印刷されたハガキが届くまでに長ければ1週間。
初稿を作ってから3週間ほど必要だ。

6月丸善での展示会は4人のグループ展で、私が企画者でもあり作家募集からとりまとめ、設置や販売、撤収まで責任者を務める。 DMに関しても、夫と私の作品は私が撮影。 他の二人の作家さんからは画像をメールで頂き、それを組み合わせて私が原稿を作った。
丸善でのグループ展は毎年何度も開催しているので、DMは初稿で1週間後にそのまま「校了」の返事を頂きスムーズに入稿できた。

下は次の神戸大丸でのDM、2,3回の校正を頂き数日前に印刷があがった。

次は6月19日から1週間、神戸大丸。
画廊ではなく、リビングフロアの和食器コーナーでの展示即売なので、ご案内もカタログ風に色々な画像を入れてみました。

作品の撮影やデザインはプロにお任せするほうが、お洒落で格好良いものができるにきまっているが、出来上がった作品を送ったりメールで打合せをする時間も含めると、校正と印刷の3週間にプラス1カ月、およそ2か月の余裕を持たなければならない。
その余裕がなかなか取れないのが実情だ。

7月17日から1週間、金沢で開催します

7月金沢・香林坊大和のDMの作品は、私の作品は一昨日、小暮の作品は昨夜7時に完成。 それからすぐに撮影し、良さそうなものを選び画像加工とDMのデザイン、その日のうちに初稿を作り上げてメールで担当者に送った。 プロのかたが見れば画像もデザインもつっこみどころ満載かもしれないが、作品完成から初稿原稿の作成に1時間半。私にできる精一杯だし、ハガキを1か月前に準備するためには、ぎりぎりの日程だった。

8月末には広島福屋美術画廊で二人展。ここは作家が画像と文章を提出すればデザインはプロのかたが素敵なものを作ってくれる。その分提出期限が早いのでDM作品の製作にすぐ取り掛かることが出来ればよいのだが、6月は東京と神戸で展示会のため出張が2週間、出品作と常設店からの注文品製作、合間に体験教室も入り私の生活は誠に慌ただしい。

工芸作家で生計をたてるのは難しい。 が、楽しい。
とんぼ玉というガラス工芸に出会ったとき、全ての作業が楽しくこれしか無いと思えた。炎に向かって玉を作るのも、その玉をどんなふうに仕立てようかと考えるのも楽しく夢中だった。
仕事の幅が広がるにつれ写真を撮ること、パソコンで加工することも覚えた。ギャラリーの企画展ではなく場所をお借りする個展のために、illustratorでDM原稿を作ることも勉強した。そしてホームページを作ることやSNSの活用など独学で出来ることが増えてくるのも楽しくてしかたなかった。
優雅な作家生活とは程遠いが、泥臭く使える武器は何でも使い、武器を増やし使いこなし、いつの間にか「なりたい自分」に近づいているような気もする。 撮影や編集のテクニック、デザインまだまだ精進が必要だ。

取り扱って下さるお店と購入して下さるお客さまに恵まれ、三十年近い年月をこの仕事だけで生きて来られたのは奇跡のような、幸せなことだと感謝しかない。
私が作る玉や装身具は生活必需品ではないけれど心の糧となれるよう、これがあるから頑張れる、自分へのご褒美だと言って下さるかたへ感謝をこめて、千年先まで捨てられずに残してもらえる玉でありますようにと心を込めて。

ガラス工芸作家 林 裕子

〒930-0151
富山県富山市古沢237-3 富山ガラス個人工房4号棟A
蜻蛉玉丙午/KOGURE Glass Works

◇ウェブサイト
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