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行政デジタルサービスを整備する上で政府・自治体がやるべきことは何なのか

民間のデジタルサービスが普及し、皆スマホでアクセスする時代になる中、ユーザーエクスペリエンスを考えた場合、行政手続も民間企業が提供するプラットフォーム上で、できた方が便利なのではないか。
例えば中国ではAlipay, WechatPay上で様々な行政サービスが受けられる。国内でもLineが自治体と連携して情報発信や納税の面でサービスを展開し始めている。

また、行政サイトで見栄えの悪いグラフや、PDFでのデータが公開されるくらいなら、元のデータソースだけを公開して、民間企業がそれを可視化した方がもっと見やすく、インサイトの抽出ができるかもしれない。しかもそれがバズれば、勝手に情報は共有されていく。

一方でデータやAPIを公開したからといって、必ずしも誰かがそれに手をつけてくれるかはわからない。企業であれば、その行政サービスを提供することで他のサービスのユーザーが増える、課金できるといったビジネス上のメリットがないとこれに手をつけるインセンティブは低いだろう。また、信用力の低い民間企業が行政のAPIを使って悪意のあるサービスを提供し始めた場合、その責任はどのように取られるべきなのか。

デジタル時代のPrivate Public Partnershipのあり方について、まだ確立していないことが、クイックに利便性の高い行政のデジタルサービスが提供されない原因になっているのではないか。
例えばテックプラットフォーマーのスピードで行政のデジタルサービスが開発できれば、もっと行政の電子化はスピードは上がり、ユーザーエクスペリエンスも高まるはずだ。しかし、既存のルールが紙をベースとしており、ルールを変えるとしてもデジタルサービスを開発しやすくするものになっているか判断する能力が行政側に欠けていることが、多くの問題の根本にあると考える。だからこそ行政側のITリテラシーを高めていくことが非常に重要になる。シビックテック(市民による市民のためのデジタルサービス開発)にとってもこういった行政側のリテラシーの高さがなければ連携ができない。東京都がコロナ対策のサイト構築がクイックに進んだ裏には、東京都が宮坂副知事を中心としたICTのチームが、シビックテックの取組を理解して上手く連携した結果だと言えるだろう。

このように考えていくと、行政がデジタルサービス化を進める上で最低限用意していかなければいけないのは
①データの標準化・API化といった活用しやすい形でのデータ提供環境の整備
②ITサービスの開発に対応した行政手続ルールの見直し
③ケイパビリティを持つ企業、シビックテックとコミュニケーションしながらサービスを開発・運用できるだけの行政内部人材のリテラシー向上
といったことだろう。
また、④企業やシビックテックとコラボレーションする際のビジネスモデルデザインや、責任分界点に関する考え方の整理、⑤行政による適切なプレーヤーに対する呼びかけ、コラボレーションをするための巻き込み力が必要である。
もはや全てを行政の元でデジタル化を進めることは困難であり、Govtechのエコシステムの中で役割分担をしながらサービスを提供していくことが重要だろう。


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