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怖い絵を描きたい。

ずいぶん秋めいてきて半袖で過ごしてたのに、急に寒くなって長袖を引っ張りだしました。
季節の変わり目や急な雨の日は、頭痛が起きるから、自分も動物なんだなと改めて感じます。

芸術の秋とは関係なく美術館によく足を運びます。
先日は森アーツセンターで開催中の「おいしい浮世絵展」、森美術館で開催中の「STARS」展に行ってきました。

おかげさまで自分の友人の多くは、芸事に携わる人が多く、この日もしょっちゅう遊んでいる、特に用がなくても飲みに行ったりできるような、親しい役者の友人(男性、Aさんとしますね)と観に行く約束をしていました。

彼からはオススメの映画や舞台、俳優さん、歴史的背景や技術的な部分を教えてもらったり、彼は役者でありながら絵を描くのも好きで、一緒に美術館に行ってくれるし、自分の講釈も聞いてくれます。何よりお互いの好き嫌いの尺度で話し合える貴重な友人です。

この日は彼の友人の役者さん(女性、Bさんとしますね)が、美術や浮世絵に興味があって、一緒にどうですかという話になり、3人で観に行きました。

美術館自体ワイワイ観ることは少ないですが、せっかく友人と見るなら、あーだこーだ、これなんだ?これすごい!とか言いながら観て回りたかったのですが、コロナの影響もあって、検温、マスク着用、アルコール消毒、更には会話を控えるよう案内が出ていました。

最初に「おいしい浮世絵展」を見に行きました。初めて会う方とも同行するのに、挨拶もほどほどに静か〜に鑑賞します。展示は素敵でしたが、声を出すに出せず、気を遣いながら鑑賞したのが本音でした。

次に「STARS展」を観ました。
日本のレジェンドアーティスト達の作品が並ぶ、アートの導入にも再確認にもなる展示です。
初めましてのBさんは村上隆さんの事を知っていて興味を持ってくれていました。展示室始めに村上さんの作品が見えた時、村上さんこそ説明不可避なコンセプチュアルアートだと思っている自分は、作品を前にして熱弁してしまいました。

スーパーフラットの概念の説明なんて、カラフルで可愛いお花の絵を描く人と思ってた人にはなんのこっちゃでしょうが、素直に話を聞いてくれるBさん。ありがたい。こうしてアートに更に興味を持ってくれたら、アート好きとしてはとても嬉しいです。

村上さんの次はリー・ウーファンさん。「もの派」の作品なんて関心なかったら絶対ハテナだらけでしょう、何なら説明したってハテナでしょう。それでも素直に聞いてくれるBさん。ありがたい。知らないスポーツ見せてそのルール説明してるような気分です。

ですがスポーツだって、映画だって、アートだって、人が人の社会の中で作っているものだから、必ず理解として届く部分はあると思っています。

その後に草間彌生さん、宮島達男さんの作品が続き、満を持して奈良美智さんの作品です。

変わらずグッと来ます。流石っす。ってなります。

自分は20歳の時、絵ってなんだ、絵描きってなんだと思春期的不安に駆られ、自分以外の全ての絵というものを舐め腐って見ていて、そもそも自分が何が好きで、何が嫌いか、何で好き嫌いと思うのか、何に琴線を揺さぶられたかもわからなくなっていた時、

美術というものに触れてなきゃいけないと体裁を保つために、たまたま訪れた美術館で見た、奈良さんの作品を見た時、立ちすくんでしまいました。

何でかはやっぱり分からないんです。でも自分が理想とする絵とか絵描きの在り方がここにあるんだろうなと感じれたのは今でもラッキーだったと思っています。それ以来好きな作家さんも増えたし、様々な作品を理解するきっかけになりました。単純にファンです。

奈良さんの絵を観に、横浜、青森、愛知にも行きました。観るたびに得も言えぬ気持ちになります。
はあ、原美術館がなくなるのは悲しいな。

でも思えば人と観たことは少なかったかもしれません。

そこでBさんが冷静に言いました。

「怖いですよね。」

驚きの表現でした。

自分の中では安らぎと共感と羨望が入り混じる気持ちになる作品群。彼女には「怖い」んです。
直接的におどろおどろしい描写はありません。
でも「怖い」んです。
ホラー的な、恐怖の怖いでないことは分かります。
中野京子さんの言う怖い絵とも違います。

じゃあ何で怖いんだろう。

そう考えた時に納得しました。
「理解」できないんです。今までの作品は説明ができました。頭の中でロジックを組み立てれます。
でも奈良さんの作品は説明ができないんです。時代背景やプロフィール的なことが説明できても、その魅力というのが説明できないんです。

人が人の社会の中で作っているもののはずなのに、理解ができない。

それは気づかない内に、目を伏せていたり、耳を塞いでいたり、口を結んでしまった人の、日常、常識の中では浮かび上がらない感情すら、奈良さんの絵には内包されてるからだと思えてなりませんでした。

初めて会った人に素敵な感想をもらいました。
人と作品を共有する醍醐味かもしれません。
作品を介して作者を、友人を、自分をまた理解し合います。

自分は最近、「早く訳わかんない域に行きたい」と言っていたけど、

早く「怖い」絵が描けるようになりたいと思いました。

人ってまだまだ人にも未知で、
怖い部分もあると思います。
色んな問題が渦巻いてるこの社会でも、

だけど智的で美しい人がいるって、
自分は信じて絵を描いていけたらいいなと思えています。

カッコ付けすぎか笑

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