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アートなコミュニティ

「何事も始めるよりも続ける方が難しい。個人的な新年の抱負でさえ1年通すのは難しいのに、ましてや出自や関心ごともマチマチなコミュニティ運営なんてどうしよう。。。」

こんにちは、こんばんは。
ここ最近はエストニアの貧困状況から始まり、「団地」にフォーカスしてその近代史を追ってきました。ロシア語話者とエストニア人との確執も"そういうことだったのかー"と歴史を紐解くことで両者の理解に、個人的には3歩くらい近づいた実感を持つようになりました。

今回は「団地」から少し派生し「コミュニティ」について理解を深めたいと思い"The Art of Community: Seven Principles for Belonging(コミュニティの技巧:"つながり"を生む7つのしくみ)"、こちらと一緒に歩みを進めたいと思っております。なお、訳はすべて筆者による意訳となっております。Principleって「原則」という意味ですが、タイトルの「Art」がここでは「技術・技巧」という意味合いですので「しくみ」と呼ぶ方が、一貫性とか相性がいいかなって、という具合です。

早速見ていきたいですが、本文3部-メインが10章の構成の内、今回は思い切って9割カットし、最後の10章だけ注目したいと思っております。と言うのも、1-9章は「まぁ、よく知られているかなぁ」って。中田敦彦先生もびっくり、超スーパーウルトラハイパーエクストリームにまとめますと

"コミュニティとは共通の価値観を持つ個人の集まりであって、理念を掲げ、行動規範(本文ではIdentityと呼ばれているもの)があって(1章)、他のコミュニティや公共性との境界線があり(2章)、"新入生歓迎会"のような始まりの儀式があり(3章)、日ごろの活動やイベントがあって(4章)、"部室やグラウンド"のような活動場所があり(5章)、そのコミュニティのこれまでとこれからを象るストーリーを持ち(6章)、そのストーリーを象徴するシンボルを掲げ(7章)、頑張った人が報われるような内部の競争のようなものを用意することがコミュニティ運営の秘訣(8章)。でも、カルト集団のようにならないように(9章)"

です(笑)。ものすごくコンパクトになってしまいましたが、1つ1つは部活動なり会社なりを想像していただけると「特に"しくみ"と呼ぶほどではなく、当たり前と言えば当たり前。。。あーでも、それが"しくみ"かー」って納得いただけるのではないでしょうか。

しかし!これでコミュニティ運営がうまくいくのであれば誰も何も悩まないわけです。"しくみ"だけでうまくいくのであれば、コピペで済みます。でも、そうはならない。上のまとめには何かが決定的に欠けている。

それが「人間関係」!特に8章。リーダーや部長、あるいはスタメン・レギュラーを置くことは目的達成のために非常に大切。大切だけど、それが人間関係のいざこざに繋がる。。。最近ではフラットな社内関係を謳う企業もありますが、それでも一定の規模を越えると途端に破綻する、ということもよく聞きます。

この本は「コミュニティ」についての本であり「人間関係」についての本ではないので、そこまで明快な解答が書かれているわけではないのですが、それでも10章の内容は示唆に富んでいると思われますので、前置きが長くなりましたが、それでは幕を上げたいと思います。なお、本文の引用個所は""で囲まれたところです。

3種類の成功の形

なぜ"しくみ"あるいは教科書通りではうまくいかないのか。それはやっぱり人がその都度変わるからだと思います。自分たちのコミュニティは隣のコミュニティとは構成メンバーが違いますし、時系列でみても、去年とは違うだろうし、なんなら今日は主要メンバーの誰誰さんがいません、なんてこともよく起こります。ですから、人を観ることはとても重要な事であり、特にこの本では「その人が何に成功を求めているのか(≒コミュニティに所属する/し続ける理由)」を把握することが大事で、その「"成功例"」として3つ挙げています。

"Relative Success" (「比較優位」な成功)

"誰かと比べて自分の方が優れている"、あるいは、"自分が誰よりも優れている"というものです。急にグサリと、自分なんかは胸に手を当てて反省しなければならないのですが、本では"別に悪いことではない"と述べられています。それを読んで「ですよねー!」とそそくさ反省するふりさえ止めそうになりましたが、続いて"本当に悪いのは、誰かの成功を阻害することで自分が優位に立とうとすること"とあり、ひじ鉄を食らいました。。。今風に言うと「マウント」というやつですね。

もちろん、「そんな嫌なやつにはなるまい、仮に批判するときは事実をもとに代案ないし自分の意見も付け加えるように」心掛けていますが、それでも、ずっと探していた、友人や近しい人の成功を心から喜ぶ良いやつには程遠い自分がいます。

"周りの誰かの成功が他の誰かにとって脅威と映る。実際にそんなことはなくとも"と本は述べます。"この志向は誰かと協力することに関心がない、か、自分にとってより得がない限り協力しないという人に多い"らしいです。"近視眼的にしか物事を捉えてなく、長い目で見ると盤石な地盤、信頼関係などを築くことができない"という指摘は毎朝読みたいくらいです。

Personal Maximizing Success(私的成功の最大化)

"特に周りの誰かが成功しようと、そんなことは関係なく、過去の自分を越えることにこだわり、その目的であれば、他者との協力も惜しまない"。まさに「職人道」と呼べそうな生き様です。ONE PIECEで言うと、新世界のシャボンティ諸島で大将黄猿たちに負ける前までの麦わら一味と言ったところでしょうか。ミホークを越えるためミホークに頭を下げるゾロを見て、ミホークも"野心に勝るものを見つけたようだな"とのセリフを口にしています。

職人道」とも言える上記の生き方は確かにかっこよく、日本人との相性が良さそうにも思えるのですが、麦わらの一味が面したように弱点があります。本でも述べています。それは、まさに「外海を知らなくなる」恐れがあることです。シャボンティ諸島上陸時に最強に思えた麦わらの一味も、結局は前半の海の、しかも7本ある航路の1つをくぐってきたに過ぎなかったわけです。職人芸が花開いた江戸時代も黒船来航、圧倒的軍事力を前に「えらいこっちゃー」となりますし、日本独自でユーザが求めるものよりも、使われないハイクオリティの製品は「ガラパゴス製品」なんて揶揄されたこともありました。「それではいけない、人生が暮れる」とプライドを捨て、ゾロは世界最強の剣士に頭を下げたのでした。

"協力関係も、自分に恩恵がないと思えれば、たちどころに解消される"と本は指摘します。協力関係とは言っても、常に順風満帆とはいきません。むしろ、"思うように進まなかったり、先行きが不透明になったりする"のが普通でしょう。その大半を占める普通、目に見える状況だけで「我に利益なし」と判断するのは結局は"自分勝手"に過ぎないんだそうです。

Community Maximizing Success (ONE TEAM(2019年流行語大賞))

日本語意訳であるはずが「ONE TEAM」なら英語のままじゃないか!、ってツッコみが来そうですけど、いいですよね?ご存知日本史上初のベスト8進出を果たし、世界からも賞賛の嵐が鳴りやまなかった2019年ラグビーワールドカップ日本代表チームの理念です。「色んな民族背景、体の大きさ、経済状況があるが、それでも、目標に向かって、それこそ一丸になって戦う」。ぼくは、理念である「ONE TEAM」、日本語にして一丸こそ、日本国旗そのものが意味するものなんじゃないかってこの頃思います。完璧な円が存在するのではなくて、色んな人が合わさって一つの円になるような感じです。

そういえばイチロー選手も記者会見では決まって"まずはチームが勝つこと"と毎回おっしゃっていました。歴代世界最高峰に上り詰めた男が、です。

もうおわかりですね?この一丸という理念がコミュニティを惹きつけるのです。とは言え、理念は個人的成功概念である前者の2つを否定するものではありません。むしろ、内包するし、内包できるものでしょう。そのためには、メンバーの声をよく聞き、よく説明する、また、信頼を得るための透明性を確保することが重要だと信じます。この第3の成功の形のみがコミュニティをコミュニティ足らしめるものです。「私的成功の最大化」だけでいいなら、今の時代、ネットで世界最先端の情報に触れ頑張れば独学できるし、個人の時間を売買できるサービスを使ってプロに専属になってもらうことも以前より敷居が下がりました。「私的成功の最大化」だけを目指すおれ様がいたら、上記を説明して、「どうぞ、ご勝手に」と敷居を跨がせなくてもいいような気がします。24時間営業の見直し等もそんな風潮の表れなような気がしません?

おわりに(感銘を受けた、ある消防隊員の理念と行動規範)

最終第10章で第1章に戻るという構成でした。やっぱり理念と行動規範(Identity)は大事ですね。でも実際は崇高な理念にしようとすると空回りしてしまうと思うので、まずは初心を大事にし、行動する中で何度も変えていけばいいのではないでしょうか。

そうは言っても私なんかは、どうせならかっこいいものにしたいというサガ(それこそ比較優位...)が消えず。。。最後に、本文第1章にあった、ある消防隊員の理念と行動規範を紹介し、終えたいと思います。

"理念。
一つ。人命救助に細心の注意を払い、いかなるリスクを取ることも厭わない。
一つ。今この瞬間の生に感謝し、謳歌する。
一つ。訓練の目的は、誰かにとっての人生最悪の日を救うことにある。
一つ。状況判断に努め、想定し、準備せよ。

行動規範。
私は、藁にもすがる、その思いに飛び込む藁である。たとえどんな状況でもひるまず飛び出る藁である。それで誰かを救えるなら、私の人生も悪くない。でも、藁だと一緒に溺れちゃうので、トレーニングして、ライフセーバーでありたい。"

流石に意訳しすぎたのでオリジナルも。

"Values
Being hypervigilant about saving lives, including a willingness to take high risks.
Embracing life in the present.
Training for years for the single worst day of someone's life.
Deep understanding about a place and circumstances to be ready for emergencies ("pre-fire planning").

Identity
Who I am: I'm the fixer on the worst days. I'm the assurance in terrible circumstances. 
How I should act: I show up no matter how bad or uncontrollable the situation. I exude confidence and control no matter what surprises show up. 
What I believe: I believe life is fragile. I believe our lives can change in a moment, and I believe risking my life is worth saving someone else. "

コーヒーをご馳走してください! ありがとうございます!