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自分のために、自分の頭で考えよう。

突然ですが、なぜビジネスマンは日経新聞を読むべきか、自分の言葉で説明できますか?


これは私が会社の新入社員によく問いかける質問なのですが、自分の言葉で答えられる人はほとんどいません。「みんな読んでいるから」「研修担当の人事が勧めているから」といった回答が大半です。

自分の言葉で答えられないということは、言い方は厳しいですが「自分の頭で考えていない」ということです。

一方で、自分の頭で考える力に生まれ持った資質はあまり関係ありません。私は毎年新入社員の教育係をやっており、これまで60人以上の新入社員と面談をしました。初めは冒頭のような回答をしていても、対話の中で自分の頭で考える経験を繰り返すうちにそれが習慣された人を何人も見てきました。

自分の頭で考えられるようになると、前例に囚われることなく困難な状況を打破する力がつきます。何より、自分の想いに従って行動できるので明るく楽しく毎日を過ごせます。

せっかく希望の会社に入っても、日々の仕事の中で目が死んでいく人がたくさんいます。私が心から優秀だと思う友人の中にも、会社組織の中でうまく能力を発揮できずに暗い顔になっていく人がいます。

この状況を打開して笑顔で働く人をひとりでも増やしたいという想いから、今回は「自分の頭で考える」ことについて書きます。社内ベンチャーを創業したばかりでまだ実績のない私が言うのも甚だ僭越ですが、それでもOKという方はお付き合いください。

結論から言うと、自分の頭で考えるためには「幅広いインプット」「”why” のフィルター」がポイントになります。以下、順番に説明していきます。

インプットとは、自分の視野の狭さを自覚すること

新入社員の悩みを聞くと、「優柔不断だから決められない」「いいアイデアが浮かばない」など、その人の内面や資質に関する悩みが出てくることがありますが、これは単にインプットが足りていないことが原因の場合が多いです。自分の内側にこもって悩む前に、インプットを増やすことをお勧めします。

インプットの目的の1つは、多様なものの見方を知ることです。例えば、経営学では同じ現象であっても学派/フレームワークごとに違う見方をします。自然科学、数学、哲学など、他の学問に広げればなおさらです。また、何かサービスを作るときも、エンドユーザーの目線だけでなく、中間にかかわる様々な事業者の目線を取り入れる必要があります。

インプットのスタート地点は「いまの自分が理解している世界は狭い」と自覚することです。そして、本や記事を読むにしても、人に会うにしても、幅広い好奇心を持って様々な情報に触れるようにします。一つの視点を知って満足するのではなく、派生した視点や真逆の視点にも触れ、とにかく食わず嫌いしないことです。つまり、より良いインプットには知覚する為の好奇心に対する日々の意識と感度が重要になります。

例えば私の場合、自分の見える世界の狭さを最も実感するのは古典を読むときです。何百年・何千年の時を経て生き残った言葉には、人間の悩みや生き方への本質が詰まっており、自分の思考の未熟さに気付くことができます。過去の偉人達の思索に触れることで、自分がいかに浅はかで、今見えている世界だけで満足しているかをはっきりと知覚することができるのです。

(なお、私は古典1/3、ビジネス書1/3、アート関連の本1/3というバランスで読書を心がけています。アートとビジネスの関係もどこかでお伝えできればと思います)

こうしたインプットを通して一つの物事を様々な角度から捉えることができるようになり、物事の「ほんとうの姿」、つまり本質が見えてきます。この薄っすらと見えてきた本質への探究が、自分の頭で考える思考へのスタート地点です。


「XXするための3つの原則」は思考停止を招く

漫然とインプットをするだけでは不十分です。インプットした後は、重要だと思った部分を必ず振り返るようにします。ちなみに、私の場合は読書ノートにメモを取っています。

このときの最大のポイントは、重要だと思った部分について「なぜそれが重要だと思うのか?」を徹底的に自問することです。「権威のある人が言っているから」というように、自分の外に依存する答えではダメです。自分の頭で考えて重要だと思う部分だけを、その理由と共に蓄積していくのです。

読書をして様々な場所に蛍光ペンを引いたけれど後々頭に残らなかった経験はありませんか? 考えるプロセスがないと自分の中に消化されないので忘れて当たり前です。私の定義では、これはインプットとは言いません。

また「XXするための3つの原則」といった記事には特に注意した方がいいと思います。要約された部分を盲目的にメモしても何のインプットにもならないからです。(もちろん、自分なりに考えた理由を持って記録するならば意味があります)

「なぜそれが重要だと思うのか?」という自問のプロセスを挟むことで、自分の頭で考えて情報のフィルターをかけることになります。これが「”why” のフィルター」です。これにより、情報が自分の中に消化され、真にインプットされたことになります。

(なお、私がこの記事で主張していることも「”why” のフィルター」を通して解釈してもらえたら嬉しいです)


インプットの蓄積と事象が結びつくときに価値が生まれる

「インプット」が「”why” のフィルター」を通して蓄積されてくると、現実世界の事象と結び付くタイミングが訪れます。

私はエアコンメーカーの社員ですが、途上国で故障したまま放置されてしまう粗悪なエアコンを問題視しており「ゾンビエアコン」と呼んでいます。この「ゾンビエアコン」は多くの国に存在しており、いま社内でちょっとした流行ワードになっています。

私が「ゾンビエアコン」に気付いたのは、P&Gやスマートニュースなどで実績を上げたマーケター 西口一希 氏の著書がきっかけです。この本では、一般的な調査ではなくたった一人の顧客 "N1" を徹底的に分析することの重要性が説かれています。

私が関心を寄せるアフリカのエアコンについて "N1" で考えてみると、エアコンのメンテナンスや修理の際の顧客体験に強い不満があり、それに伴う生活の不自由が浮き彫りになりました。さらに、これを起点に粗悪なエアコンを大量に販売するビジネスモデルでは解決が難しい社会課題が見えてきました。(より詳しく知りたい方はこちらのnoteをご覧ください)

私の会社でこれまで途上国に赴任した人たちも、稼働していないエアコンは目に入っていたはずです。でも、それを自分たちが解決すべき課題として認識するためには "N1" のような物の見方が必要だったのだと思います。国のマクロ情報や自社製品だけを見ていても「ゾンビエアコン」を認識するのは難しかったでしょう。

このように、インプットと事象を自分なりに結び付けて新しい発見を得る知性が「自分の頭で考える」ということだと思います。

さらに、この習慣を繰り返していると「インプット」と「”why” のフィルター」も洗練されていきます。「インプット」では、そのときの自分に不足している視点を考えて最良の方法を取捨選択できるようになります。そして、「なぜそれが重要だと思うのか?」の自問を繰り返す中で、自分なりの価値観が成熟し「”why” のフィルター」も鋭くなっていくのです。

このグッドサイクルの中で、物事への本質の理解が深まっていきます。その理解を基にしたアウトプットの成功確率は思考を放棄した人に比べて絶対に高くなると思います。

(アウトプットを人と対話・調和し、実際に進めていくことについても、どこかでお伝えしたいなと思います。これまで私が何度もぶちあたってきた課題です)


最後に、「自分の頭で考える」ことのエッセンスは、私たちが創業したBaridi Baridiの4つのValueにもつながっていることをご紹介します。

Bright and Cheerful ( 明るく、元気よく)
⇒人の思考に依存せず、 自分の想いを持ち、明るく、元気よく取り組める。
Speed matters ( スピードが命、最速で実行する )
⇒良質なインプットの蓄積があれば、素早くアウトプットを出すことができる。
Integrity to people and society ( 人と社会に誠実に)
⇒思考の積み重ねを通じて自分なりの価値観を成熟させることで、周りに流されない誠実さが形成される。
Work as professional ( プロフェッショナルとして働く)
⇒ 自分の頭で考えて本質を探究するのがプロフェッショナルである。

いろいろ書きましたが、何よりも、自分の頭で考えることはとても楽しいです。また自分が人生を生きていく上でとっても大事なものになると私は思っています。このnoteが悩みを感じている人の助けになればとても嬉しいですし、私自身も楽しく笑顔で新しい価値を作っていきたいと思います。


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