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SNS開示請求簡略化の裏で起きているある変化


昨今、インターネット上の誹謗中傷名誉毀損が社会的な問題となっている。SNS等の書き込みに対して発信者情報開示請求をする仕組みも簡略化。誹謗中傷への対策を強化するプロバイダー責任制限法の改正も検討されている。

 11日放送の「ワイドナショー」(フジテレビ系)で元アイドルで実業家の川崎希が誹謗中傷に困り、開示請求を行ったエピソードを披露した。芸能活動にも影響が出るほどの誹謗中傷で、開示請求の結果、書き込んだ人物が見知らぬ主婦だったことが分かったという。お金はかかったが損害賠償を求めなかったこともあり、「損なんですよね」と語っていた。

 また、ネットではあるVチューバーが開示請求を行ったケースが話題となっている。裁判所の公式サイトで最近になってあるVチューバーが行った開示請求が一例としてアップされたのだ。この裁判例によると、ネット掲示板「5ちゃんねる」の書き込みに対してVチューバーは開示請求をしたものの、裁判所に退けられていた。

 簡略化されたことで誹謗中傷を止めやすくなっているのならいいことだ。しかし、問題も起きているという。開示請求を行っている最中という50代メーカー会社員は「SNSで脅迫的な投稿をされたので開示請求を行おうと思い、弁護士に相談したところ、開示請求が殺到していて裁判所が困惑しているから、そこまで切実な状況ではないならやめるよう言われました。1人で100件以上の開示請求を行っている人がいるというのです」と明かした。

 このままだと反動があるかもしれない。「開示請求が殺到し続けるようだと今後は開示請求の制度が見直される恐れもあるといいます」(同)。何事もやりすぎはよくない。

https://news.livedoor.com/article/detail/25901839/

一人百件って相当だ。

悩んだ末に弁護士に相談して申請するケースが殆どだと思うが、中には「いくら金を積んでもいいから、お前だけはとっちめてやる!」と怒髪天を衝く状態になって、SNSや配信サイトのコメントをブロックする延長の感覚で申し立てている人も居るのだろう。

「気軽に開示請求できる」(手続きが簡素化された)=「名誉毀損のハードルが下がった」と勘違いした人が弁護士を通さずに開示請求するケースが増えたせいもあるのかも、と思っている。

本人訴訟を乱訴して、そのうち一件でも示談金を受けられれば「非課税スパチャなのでお得」という情報をどこかの書き込みでみたが、手間や時間を考えると鵜呑みにしないほうがいい。

それに高圧的なインフルエンサーに多くみられるが、開示請求を脅し文句のように使ってしまうと、トラブルに巻き込まれたくないごく普通のファンからの印象の悪化に繋がりかねない。

人はストレスが蓄積したときにネガティブな感情を書き出すことでストレスを飽和させようと「筆記開示法」というコントロール術を用いるようになるそうだが、内容を見せられた側としてはいい気はしない。

ファンが推しの「お気持ち」を知りたくないのと同じである。

炎上商法をしたからといって、どんな批判でも許されるということにはならないが、結局多くのフォロワーを失い、示談金以上に未来の損失を被るケースがあるので、このあたりは人気商売をする上では慎重な判断が必要になる。

もっともトラブルの多くはそのセルフコントロールがままならない状況にあるから、問題になるわけだが。

小学生の「訴えてやる!」をリアルでしちゃう第三者


そもそも開示の判断は本人がすることが前提である。

中には貴方の悪口ここで言われてますよ、と義憤に駆られてわざわざエクセルに纏めて推しに報告する「正義感溢れる傍迷惑な厄介ファン」もいる。

その人は邪なネットの風紀を矯風する気なのだろうが、はた迷惑以外の何物でも無い。

一介のファンが隠れているモノをわざわざ引っ張り出して、推しに粛正を懇願するなど論外である。

ちなみにホロライブに関してはサポーターのガイドラインがある。

一時期熱狂的なファンが通報フォームのURLをスパムのように案件先やコラボ相手のコメントにも所構わず送りつけるのがブームになって、日常の業務に支障をきたすようになったせいもあるのだろう。

ガイドラインには「すき」もあれば「きらい」もあります、と多様な価値観を尊重するようわざわざ表記している。(ただ今にして思えば、運営による男女コラボ路線の猛烈な批判に対する予防線だったのでは…と思っている)

特に社会経験の無い未成年などは「推しに認知して欲しい」「この感動を伝えたい」「推しに幸せになって欲しい」という想いの強さがゆえに、ブレーキが外れやすい。

黒歴史で済んでくれればいいのだが「推しに不都合な印象を与えたやつは許さない」と一線を越えた書き込みをしたファンが逆に開示されたケースもあるので、くれぐれものめり込みすぎないように注意が必要である。

棄却されたケース

自分は法律関係に詳しくないので詳細は各自調べて欲しいが、裁判所から棄却されるケースはだいたい「個人の心情に関して、いちいち目くじらたててそんなことで申し立てするな」のパターンが多い気がする。

「事実無根で社会通念上常軌を逸脱しているもの」に関して明らかな場合に限定して通報するのがいいだろう。

「チキン冷めちゃった」では開示請求は(たぶん)通らない。


詐欺や悪用するケースも

先のニュースにあるようにこのまま乱訴が頻発するようだと、制度自体が崩壊する可能性もある。

何も知らない個人Vtuber(活動者)に対して「この書き込みもいけます」と親身に相談に乗ってくれたものの、のらりくらりと長期間放置されたままで何十人もの依頼人から「開示サブスク」をせしめる弁護士もいると聞く。

また、匿名で訳の分からない絡みをして怒らせて暴言を引き出した後、実名を明かして、第三者が弁護士事務所を名乗って訴えるぞ、とDMで虚偽告訴で脅して示談金をせしめようとするという詐欺もあるらしい。

こういうアカウントはアクセスを増やして注目されるために、叩かれやすいプロフィール(例えば港区女子やオタク叩きなど)を使い、あえて頓珍漢で挑発的な言動をSNS等で繰り返している。

よくよく観察すれば分かるのだが、頭にきていると正常な判断は難しい。
心当たりのある人は外部サイトの誘因やアフィリエイトと併用しているパターンが多いので、今一度冷静になって判断して欲しいものだ。

もっとも、このようなトラブルはSNSから離れるのが一番である。

「デジタルデトックス」は今年のテーマになるかもしれない。



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