マガジンのカバー画像

詩たち

211
運営しているクリエイター

#創作

詩「礫」

詩「礫」

20240917

ホームから見えたものが
鳥の礫死体だったのか 木の屑だったのか
コンビニのおにぎりの残骸だったのか
考えながら 電車を待っている

彼は目を閉じる 想像してみる
鳥が木の屑を咥えてコンビニに出かける
おにぎりを探すが好きな味がない
駅の反対のコンビニに向かう途中 電車に轢かれる

鳥は彼を見て(今日の予定が面倒だ)と思う
木の屑は彼を見て(良い服を着てやがる)と思う
コンビニは

もっとみる
詩「切り札のジュン」👁️17

詩「切り札のジュン」👁️17

20240916

「想像よりも到着が早かったようですね
 一つ目の秘密は どうでしたか?」男は防護服を着ていた
「ああ 正直驚いているよ
 今までの人生は無意味だ」彼はモニターを見たまま言った

男が部屋の中に入っても 機械は何もしなかった
人間だとわからないように防護服を着ているようだ
この部屋の秘密を知っている人間 彼は興味を持った
誰であろうと 自分より物を知っている人間に話を聞きたかった

もっとみる
詩「あほたれ」

詩「あほたれ」

20240915

あっそっすかって 右へ 右へ
傾けば左 促すピエロ
耳鼻科行けよ 聞こえてねえのか
この音 この声 この叫びがよ

あっそっすかって 痺れ 痺れ
蚊が刺したの 引っ掻く右手
しみったれたスーツ投げ捨て
この道 この顔 この瓦礫など

あっそっすか 良かったっすね
偉い 偉い 良く頑張りました
あっそっすか 凄いっすね
相槌だけ上手くなれば良いんだろ?

あっそっすか うざったい

もっとみる
詩「幾つかのクロウ」👁️16

詩「幾つかのクロウ」👁️16

20240914

『生体認証を実行いたしました お帰りなさい クロウ』
遺跡の中から声が聞こえた
彼とジュンは辺りを見回してみたが
誰かが居る気配は無かった

洞窟の中にある小さな遺跡は 彼を確認すると動き始めた
民家ほどの遺跡が崩れ 中から鉄のパネルが四方八方に展開した
大きく開けた空洞を覆い尽くし 大きな鉄の部屋になった
その間 ずっと青白い光が放たれていた

「クロウが来たからこうなったん

もっとみる
詩「ショートケーキ」

詩「ショートケーキ」

20240914

あと千円しかない彼は
娘にケーキを買ってやった
娘は大事に食べた
一口一口 いちクリームいちクリーム

一個が四百八十円くらいだった
まだ五百二十円あった
彼は煙草を買った
半日しか過ぎていないのに 今月の金がなくなった

次の日 娘は泣いた
お腹が空いて暴れた
暴れたら暴れるだけ お腹が空いた
彼はお腹を殴った 少しおとなしくなった

一週間 水だけ飲んだ
煙草はもうなくなっ

もっとみる
詩「思い出のレンゲン」👁️15

詩「思い出のレンゲン」👁️15

20240912

「お前なぁ せっかく出られたのに何で戻って来ちまうんだ
 歓迎するわけがねえだろ 一つ目の男なんてよ
 気味が悪くて仕方ねえ この村ではな
 昔から 一つ目は悪魔だって言い伝えられてるんだ」

彼はそう言われて 黙って立っていた
ジュンは不安そうに 立ち塞がる村人と彼を交互に見た
「しかも妙な小僧連れてよ 誘拐したのか?
 そいつを食うつもりなんだろ? 一つ目」

生まれ育った

もっとみる
詩「囚われのケント」👁️14

詩「囚われのケント」👁️14

20240912

朝 目覚めると外が騒がしかった
ホテルを出て村の様子を見ると 
ドラゴンを繋いだ建物に人だかりが出来ていた
彼はジュンを起こさずに そのまま様子を見に行った

村長が彼を見つけて言った
「ああ! 昨日の若いの 名前はたしか……」
「クロウだ」建物を覗きながら彼は答えた
「そうかそうか クロウさん 大変なことになった」村長は慌てていた

朝 餌やりに入るとウロが苦しんでいたらしい

もっとみる
詩「人斬りのアンジェ」👁️13

詩「人斬りのアンジェ」👁️13

20240911

彼はウロに付けられた苔を取ろうとして
服を着たままホテルのバスルームに閉じ籠っていた
ジュンはベッドに寝そべりながらトランプをいじっていた
タロット占いでもするように並べたり混ぜたりした

着替えにはバラクサ特有の民族衣装をいくつか買ってきた
ジュンとお揃いの帽子も買って来た
お気に入りの服たちはしばらく使えないだろう
苔とにおいをとった後にクリーニングに出すつもりだ

目を閉

もっとみる
詩「物知りのウロ」👁️12

詩「物知りのウロ」👁️12

20240911

バラクサの村長は陽気でご機嫌な老人だった
「良く来た良く来た どうしたんだ?
 そんな暗い顔して! 若いのに!
 そういう時ゃあ うちの藻を食うと良い! 元気になるぞ」

彼は少し押され気味に答えた
「ああ 食って来たよそれ 美味かった
 そんなことよりもほら 約束忘れてねえよな?
 ウロってドラゴンと話して良いんだろ?」

「もちろん! 好きなだけ話していけ!
 そこのちっこ

もっとみる
詩「息抜きのジュン」👁️11

詩「息抜きのジュン」👁️11

20240906

(今頃 リオウはどうしているかな?)
バラサクのホテルの一室でジュンは考えていた
(エミリさんの復讐をするのは良いけど
 無茶して怪我でもしてるのかな?)ドアが開いた

「どうした?」彼は買い物袋をぶら下げていた
部屋にある机に置くと「食料だ」と言った
「どうもしないよ ありがとう」ジュンは上の空だった
「ついでにマフィアの連中に電話をしたんだが ヤバいことになった」

「え?

もっとみる
詩「黒焦げのリオウ」👁️10

詩「黒焦げのリオウ」👁️10

20240906

リオウはジュンに別れを告げた後
迎えの車を待っていた
勢いで飛び出したのは良いが 時間がかかるのはわかっていた
なので レストランの近くにある古びたホテルに泊まった

何もせずに次の一日を過ごした 腹が減ったらレストランに行った
やきもきしながら 迎えの車を待つしかなかった
彼とジュンは今頃バラクサにいるだろう
(一言でも謝っとけば良かったかもな)と 少し後悔していた

二日目

もっとみる
詩「強がりのクロウ」👁️9

詩「強がりのクロウ」👁️9

20240906

「ダメじゃない……リオウ 約束だったでしょ?
 早く金を返してって言ってるの わかる?」
冷たく言い放ったエミリはまだ十代だった
リオウは借りた金を返せずに責められていた

その頃のリオウは まだ火傷を負っていなかった
ギャンブルに溺れて 女に溺れて 酒に溺れて
自暴自棄に過ごしている若者だった
リオウはエミリを見つめると 弱々しく言った

「いや 少し待ってくれよ あと少しな

もっとみる
詩「鈍色のエミリ」👁️8

詩「鈍色のエミリ」👁️8

20240905

エミリの負った傷は想像より深く
入院することになってしまった
流石に部下たちへ言い訳をしなければならなくなり
「短いが海へと旅行に行く」と伝えた

病室で外を眺めた 街がよく見えた
「アイツら大丈夫かな」独り言をそっと吐き出した
「失礼 エミリさんはここに居るかな?」
振り返ると そこには若い男が立っていた

「はい 私ですが?」エミリは答えた
咄嗟に悪い予感がした 男は笑った

もっとみる
詩「行き先のバラクサ」👁️7

詩「行き先のバラクサ」👁️7

20240905

彼は車を走らせていた
リオウは助手席で ジュンは後部座席で眠っていた
ゲンゾウが撃たれた後 外に出たが誰も見つけられなかった
街の近くの病院にエミリを送った時 次に向かう場所を決めた

その途中 教団の信者に見つかり車を止められたが
ジュンを毛布で隠していたことと
エミリがマフィアのボスだと言うことを知ると
面倒ごとを恐れたのか通してくれた

彼とリオウの顔もバレていた可能性も

もっとみる