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百貨店のメイン顧客が若者に?60歳以上の来店客は未だ戻らず、例年の6割程度 ~百貨店の取るべきコロナ禍で変化する行動様式への対応策とは?~

今年6月11日に公開した記事では、スマホ位置情報データ(※1)を使用して、緊急事態宣言後の百貨店における消費者の購買行動を分析しました。
その結果、若年層と高齢者では来店回復の戻りに1.5倍以上の差が生じていることが分かり、リベンジ消費というコロナ禍の消費行動と併せて百貨店は若年層のニーズを取り入れた施策へ移行するべきであると結論づけました。

今回の記事は、以前の続編として、当時の分析及び示唆の現時点での有効性を検証した上で、再度今後の百貨店が取るべき施策を考えます。

サマリー

① 高齢者の来店回復は未だ限定的である一方、若年層は昨年度と比較して9割程度も回復している
② 顧客一人当たり単価は昨年度よりも増加傾向にあり、リベンジ消費が行われている可能性がある

上記調査結果より、以前の分析結果は現時点でも有効であり、今後も一定期間はこの傾向が続くことが予想されます。よって、百貨店における若年層の取り込みと、新しい消費行動への適応は以前にもまして急務になっています

今後の百貨店の対応では、コロナ禍でも好調な他企業の取組も参考にし、百貨店の強みであるきめ細やかな顧客対応による快適な購買体験を、テクノロジーを活用しながらオンライン上にも実現することが必要です。

メイン顧客であった高齢者の戻りは依然遅い

位置情報データから高島屋大阪店の来店者属性・人数を分析すると、①60歳以上と20代・30代では、来店回復率に20%以上の差があること、②60歳以上と20代・30代の来店者数がほぼ同数になっていること、が分かります

図2

※6・7月の高島屋大阪店への来店客を2019年と2020年で比較

新型コロナの影響が続く現在、総来店者数のうち、従来のメイン顧客であった60歳以上の割合が減少する一方で、比較的若い世代の割合が拡大傾向にあると考えられます。この傾向を踏まえて、店舗においても若い世代の消費を取り込む施策を展開する必要があります

来店者一人当たりの単価は上昇傾向

前回の記事で紹介した「リベンジ消費」の傾向は、8月時点においても継続し、拡大している様子が見られます。
リベンジ消費の傾向は、①単価の高い商品が売れる、②一人当たりの購買数が増える、ということから確認できます

単価の高い商品が売れている様子は、9月1日に公表された8月度の高島屋の店頭売上速報を始め、前回記事公開以後でも各地で見られています。

“8月度の店頭売上は、免税売上の大幅な減少に加え、引き続き外出を控える傾向や猛暑などの影響により前年実績を下回りました。一方、自宅での時間をより快適に過ごすためのアイテムや、ラグジュアリーブランドなどに動きが見られました” 出所|高島屋2020年8月度店頭売上速報(9/1)
高額商材では、高級時計やラグジュアリーブランドにおいて、いわゆる「リベンジ消費」も見られた。”出所|流通ニュース(7/11)
“商品別では、ファッション商材の販売が、セールの前倒しや悪天候、新型コロナ感染拡大による生産量低下、在庫不足などで苦戦した。テレワークの広がったことで、スーツ、ジャケット、パンプスなどビジネス関連の商品も振るわなかった。一方で、生活必需品である食料品や衛生用品に加え、上質・高付加価値需要は底堅く、ラグジュアリーブランドや時計、宝飾品などの高額品は健闘した。”出所| Yahoo!ニュース(8/21)

また、高島屋が公表している月次営業情報を使うと、5月から7月にかけて昨年よりも顧客一人当たりの単価が上昇していることが確認できます

具体的には、対2019年同月比の売上高を同来店客で割ることによって、2019年と比較した場合の顧客単価の増減を推定し、対2019年比で100%を超えている部分は昨年から顧客単価が上がっていると判断できます。

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※高島屋月次営業情報のうち、高島屋大阪店の数値から作成

5月以降、顧客一人当たりの単価が上昇しており、その中でも百貨店においては高額商品が売れている傾向にあることが分かります。
コロナ禍においては、来店する顧客が少ないものの、購買意欲は高まっており、適切な購買体験の提供が実現できれば、更なる単価上昇も期待できます

コロナ禍でも好調な他業種を参考に百貨店の強みを活かす

食料品や生活必需品を除いても、コロナ禍でも好調な小売業の企業は存在します。
これら企業が好調を維持できている理由の一つに、コロナ禍でも影響を受けない、または新しい購買行動に対応できる、オンライン上での顧客接点を保有していることが挙げられます。

具体的には、ホームセンター最大手のカインズでは、来店前の店舗内商品検索や取り置き機能を自社アプリ上に実装しています。
この機能によって、「商品は実際に見て購入したいが、新型コロナの感染リスクを避けるために店舗の滞在時間は短くしたい」という新型コロナの影響下の消費者ニーズを満たすことができています。

売り場面積が広く多数の商品を取り扱う百貨店でも、上記のような取組は顧客を取り込むための有用なサービスとなる可能性があります。

従来百貨店は「快適な購買体験の提供」を強みとしてきました。しかしこれからは、顧客の行動様式がコロナ禍で変化している現状を踏まえると、リアルとバーチャルを組み合わせて強みを価値として顧客に提供するかを、考えるべきときが来ていると言えます。

最後に

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注釈

※1使用データについて:今回の分析には、KDDIがauスマートフォンユーザーの許諾を得て取得した位置および属性情報を利用しています。データは誰のものかわからない形式に加工され、国勢調査などをもとに拡大推計処理を実施したものです。


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