アイデアは誰が評価するのか ~ リサーチ・ドリブン・イノベーション発刊にあたっての想い③
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アイデアは誰が評価するのか ~ リサーチ・ドリブン・イノベーション発刊にあたっての想い③

Hirokazu Oda (Dan)

Kindle版の予約も開始し、いよいよ発売まで1ヶ月を切りました!

3本目となる今回の記事では、アイデアの「評価」とイノベーションの関係性について、本の中では触れられていない私の考えを紹介していきたいと思います。

▼ これまでの記事

イノベーションが起きない原因は「評価」にある?

2018年にミミクリデザインで働きはじめてからの3年間、多くのプロジェクトを実施する中で、アイデアを形にすることの難しさを痛感してきました。

ワークショップの場では「良いアイデア」が生まれたのにもかかわらず、その後の過程でアイデアが日の目を見ない結果となってしまったことも少なくありません。

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そもそも「良いアイデア」であったかどうかも、ワークショップの場で合意形成されたに過ぎず、本当に良い物だったかどうかは誰もわかりません。

様々な方法論が広がる今日、アイデアを出すことは、実はそこまで難しくないと考えています。むしろアイデアをどう評価するのかの方が、非常に難しい問題です。これは新規性や実現可能性が重要だ、というような評価軸の話をしているのではありません。

チーム、あるいは組織として、どのようなアイデアを大切にしたいのか、自分たちは何を「良い」とするのか。こうしたアイデアを捉える「まなざし」を耕す必要があると考えています。

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オープンイノベーションの取り組みを例に考えてみましょう。普段関わることがないような様々人々が集い、コラボレーションによって生み出されるアイデアは、これまでにない魅力に溢れたものが生まれることも少なくありません。

しかしながら、オープンイノベーションの取り組みから、画期的なものが社会に生まれたという例は、さほど聞かれません。これはいったい何故なのでしょうか?

最も大きな原因は、アイデアの評価にあると私は考えています。

例えば、審査員がその主幹となる企業の中での意思決定者だった場合を考えてみましょう。その審査員は、オープンイノベーションの中で何をしているのでしょうか?

最後の審査の時にやってきてアイデアを評価しているだけでは、日常と同じまなざしでアイデアを評価することしかできず、結果としていつも通しがちなアイデアばかりを評価しがちです。普段避けがちなアイデアはあまり評価されないでしょう。(そしてその中に魅力的なものが潜んでいるケースは少なくありません)

またゲスト審査員を外部から招いて行うケースも少なくありません。複数のゲスト審査員が様々な角度から評価を行えば、普段は評価があまり伸びないアイデアの魅力にも気がつくことができるでしょう。

しかし、当然ながらイベントの後にはゲスト審査員は社内にはいません。ただジャッジをお願いしているだけでは、アイデアのどこが良かったのかをしっかりと汲み取り、社内で評価し続けることは難しいでしょう。評価の単なる外注は、社内に何も変化をもたらせません。

つまり、社内の中でどのようにアイデアを評価するのか、この部分が変わらなければ、新しいアイデアを評価することはできず、イノベーションは起きないのです。



そもそも良いアイデアとは何か?

アイデアの評価は、絶対的な指標で定められるものではなく、その良し悪しを、コミュニティの中で社会的に合意することによって決まります。つまり何を良いとするかの価値観によって左右されるのです。

Z世代の中で爆発的に広がった「Zenly」というサービスをご存知でしょうか?友達と自分の位置情報をリアルタイムに共有できるというサービスで、2018年ごろから高校生の世代を中心に広がったサービスです。位置情報をシェアするという内容から、批判的な意見も多くみられるサービスです。

大人からしたら、たとえ友人であったとしても、何故そこまでプライバシーなものをオープンにするのかと、疑問に思ってしまうでしょう。利用しているZ世代は、生きてきた社会の状況も違ければ、そもそも何を良しとするかの価値観も違うのです。その良さを理解できないのは、ある種当たり前なのです。

社会の状況、つまりコンテクストが変われば、同時に評価されるものも変わります。社会のコンテクストの中で、人々の価値観は社会的に構成されていくからです。こうした考え方を社会構成主義と言います。

価値観が社会的に構成されるように、アイデアの良し悪しも、常に構成され続け、変化され続けていきます。どのような価値観で、どのようなコンテクストでアイデアを評価しようとしているのか。過去の成功にこだわり、この観点を疎かにしてしまうと、社会の価値観の変化についていけず、気がついた時には新しいアイデアを形にできない企業へと変わってしまうのです。



アイデア出しを始める前に

イノベーションを実現するために最も重要なことは、アイデアの出し方を考える前に、アイデアをとらえる価値観、物事の捉え方の方向性を定めることであると考えています。もっと言えば、この方向性に新しさがあるかどうかが、イノベーションの鍵を握っていると言えます。

新たな「まなざし」から対象を捉えれば、アイデアの形も自然と見えてきますし、新しいアイデアの可能性を評価することもできるのです。社会を変えるイノベーションの多くは、社会の「まなざし」が大きくシフトすることにつながっているのです。

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新著の『リサーチ・ドリブン・イノベーション』は、アイデアをつくる手前の部分、新たな方向性の再探索のためのアプローチとして、そのプロセス全体を編むための方法論としてまとめた書籍です。

価値観に絶対的な答えはなく、多様な価値観が広がる今だからこそ、魅力的な価値観・方向性を企業側から提示していく必要があると私たちは考えています。

この本の中で紹介している「探究的ダブルダイヤモンドモデル」は、アイデアを出す前に、自分たちが目指したいと思える方向性を探究するプロセスがあることを明示したものです。


図1-9のコピー

探究的ダブルダイヤモンドモデル


今日さまざまな企業が、「SDGs」や「CSV」といったキーワードを掲げ、目指す方向性を企業のミッションやビジョンとして定めています。しかしながら、そこに自分たちらしさはあるでしょうか?

変化のスピードが加速し、不確実な状況が日々訪れる今日において、これからのイノベーティブな企業には、自分たちらしい新たな方向性を再探索し続ける力が欠かせません。ぜひその再探索のためのサーチライトとして、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』を活用していただけたらと考えています。



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Hirokazu Oda (Dan)

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Hirokazu Oda (Dan)
株式会社MIMIGURI マネージャー, デザインリサーチャー / 千葉工業大学大学院 博士後期課程修了 博士(工学) / 市立稲毛高校卒 意味を中心に据えたデザインの考え方や方法論について、研究と実践を行なっています。