見出し画像

サラリーマンになってから見えてきた飲食業という世界

さてパティシエからサラリーマンになり

自分のフィールドを飲食店から会社へと移すことになった

その中で大なり小なり驚くことがあったので

今日はその時の記憶を掘り起こしながら書いてみたいと思う

まずは労働時間

ケーキ屋時代は朝6時過ぎから20時に店が閉まるまでずっと働き詰めだった

そして休みは週1日だったのに対し

サラリーマン生活では朝9時から夜18時までの週休2日制

年間を通しての労働時間は半分以下だ

会社で働き始めてからの数日は

「こんなに早く仕事を上がっていいのか・・・・」

と拍子抜けするような感覚もあった

そして給料

月給やボーナス等も含めるとその差は

ざっくり2倍

つまり半分以下の労働時間で稼ぎが2倍になったのだ

世の中にこんな世界があるものなのかと驚愕だった

そしてこのカラクリは何故に起こるものなのだろうということを探るのが

その後の僕の関心の一つになるのだが

とりあえずその点についてはまた別の機会で述べたいと思う

まあこんな感じで給料と労働時間の違いに驚いたとともに

僕が一番びっくりしたのは職場の風土、すなわち文化であった

例えばパティシエ時代、メモを取るのが禁止だった

教えたことなどは体に叩き込め!

技は目で見て盗め!

いちいちメモなど取るな!

そういった雰囲気の中で

そんなに要領よく覚えられないタイプの僕は相当苦労した

結局一度では覚えられず何度も怒られたっけな

一方、会社では「メモはむしろ取ったほうが良いよ」と優しく教えてもらい

わからないことがあれば何でも聞ける

そんな良好な雰囲気の中で僕も伸び伸びと仕事を覚えることができた

また、教育への姿勢ひとつを例にとっても

ケーキ屋時代は、例えば誰かが仕事を覚えられなければ

「覚えられないやつが悪い」という雰囲気であったが

会社では「教える側にも責任があるよね」という風土があり

突き放されたような教育を受けることは無かった

よくレストラン等で修行する若者にフォーカスをあてたドキュメンタリー番組を目にするが

大したレクチャーも無しにいきなりやらせ、失敗をしたら怒号が飛び交うような

そういった厨房の光景を目の当たりにするたびに胸が痛くなる

「もっと優しい口調で教えてあげればいいのに・・・」

「指示が全然的確ではないな・・・」

「口だけじゃなく実際に動作を見せてあげればいいのに・・・」

そんな感想を抱くのは、飲食の世界だけではなく

会社でしっかりとした「人を育てる文化」というものを経験できたからだと思う

誰かに物事を教えるのはそんなに難しいことじゃない

もちろん技術的な込み入った内容など言葉で伝えることが難しいものはあるだろう

でも僕が今言っているのはその前段階

教える姿勢の話

教えようとする姿勢ならだれでも持てるだろう

なぜならそれは技術ではなく意識の問題だから

それなのに、なぜその「教える姿勢」をおざなりにするのだろう?

いろんな意見があると思う

「自分が厳しく育て上げられたから後輩も厳しい環境で育つべき」

という自身の時代背景を持ち込むものもあれば

「実は仕事の内容自体はさほど難しいモノでは無いので、後輩に教えてしまうと簡単に覚えられてしまい自分の立場が危うくなる」

といったちっぽけなプライドから発生するものもあるだろう

またこの問題をビジネス的な観点で見てみると皮肉な現実も見えてくる

一般的に、会社の中でしっかりとした教育を提供すれば社員が育ち、その会社の力というのは増していく

そして法人規模のビジネスというのは中々参入障壁がたかく、力をつけた社員がその会社から独立してライバル企業を立ち上げるという可能性は低い

しかし、飲食業というのは比較的参入障壁が低いという観点から、育て上げた弟子たちはいずれ独立し自分の店を持つ可能性がたかい

例えば寿司屋を引き合いに出すが、仮に毎年一人ずつ独立する弟子を世の中に排出した場合、10年で10店のライバル店舗を増やすことになる

そしてもし他の店も同様の比率で弟子を排出し続けた場合、雨後の筍のように寿司屋が乱立しやがて激しい競争の中に巻き込まれるだろう

しかし現実に街中の寿司屋の数が毎年増えていくということは無く、ある程度の均衡を保ったまま推移している

これはつまり厳しい環境を自ら作り出すことによって、生き残る人数を減らし、寿司屋の数をある一定数に保っていると言える

幸か不幸か飲食業の独自の文化が、生存競争を緩やかなものにしているという現実がある

しかしその競争原理はあまり健全とは言えないだろう

本来であれば、その参入障壁の低さ故に店舗数が増え、その中でお客様から愛される店は続き、そうでない店は廃れていくのが健全な競争といえる

その中で当然店側は生き残るためにお店の力を上げる必要が生まれ、従業員へより良い教育というものも施されるようになると思う

そうなれば少なくとも環境的には良い土壌が生まれ、人も定着し、飲食業へのイメージアップにも繋がるだろう

それに伴い社会的な地位も向上すると思う

そうなればあとは給料だけ

給料に関しては飲食業ならではの構造により給与が低くなりやすい構造にある

まあこの点に関しては別の機会に触れたいと思う

そんな感じで今日は飲食業の外の世界で働き始めてから見えてきた飲食業と会社の違いについて思うままに書き連ねてみた

本当はね、こうした環境に適応できずにドロップアウトしてしまった人たちがもう一度飲食業で復活するにはどうしたらよいのか?という内容まで踏み込みたいのだけれど

それは今後の自分の人生で証明していきたいとおもうから

今日はここまで

飲食店の労働環境が改善されるのはもっともっと先のことになりそうだけど

いつか「こんなやり方があるよ」というのを絶対に世の中に提示したいと思う

だからそれまで頑張ろう

ほなまた!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?