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議論の中でつい首を傾げてしまう違和感を生む2つの原因を考える

私は地方でマーケティングやディレクションに関わる仕事をしている。

普段の業務の中で色々と取りまとめたり、そこから得られた示唆をもとに提案したり施策や導線を設計したり、その中で必要となるクリエイティブにも関わっている。

日常的にミーティング(以下MTG)をすることが多いのだが、その中で度々違和感を感じることがある。

それは「不快になる」といった類のものではなく、いわゆる「ズレ」に近いような感覚だ。

このズレによってMTGで聞きたかったチームメンバーの見解が聞けなかったり、本筋とは異なる部分で過剰に反応してしまい、本来進みたかったところまでの進捗が得られなかったりする。

これらズレについてどんな原因があるのか?またどうすれば改善されるのかについて気づいたことをまとめてみようと思う。

ズレの原因となる2つのポイント

MTGや議論の中で「ズレ」に影響するポイントは二つあると思う。

  • 具体と抽象の噛み合わせの悪さ

  • 考える順序とその向き

私はこれらの原因でMTGから得られる回答や指し示す方向性の解像度が大きく左右されると考えている。

これによって議論が終わった後の湯上がり感に大きな違いが出る。

ここを改善するためには仕事に関わるメンバーがお互いに理解しあえる共通言語として考え方やモノの見方の粒度、切り口などにおいて一定の型を持つべきだと考える。

具体と抽象の噛み合わせが悪い

私自身、具体・抽象これらのワードについて以前は全く気にしたこともなかった。

しかし仕事をする中で交わされる議論において、流れに沿っていない、または一瞬、頭の中がバグるような不自然な感覚の質問や意見が行き交うシーンが度々あった。

私はお世辞にも頭の回転が早い方とは言えないので「まぁ自分の頭が周りの人の思考についていけていないだけ」くらいに思っていた。

しかし、細谷功氏の著書「メタ思考トレーニング」や「アナロジー思考」を読んでスッと腹落ちした。


イヤホンを探すAさんとBさんの会話を例に見てみる


Aさん
「最近のワイヤレスイヤホンって今どんなのが主流?どんな機能がついているの?」

Bさん
「ノイズキャンセルやマルチペアリングなんかの機能がついているよ。この辺に展示されている機種がそれに対応しているね」と言いながら10機種程度を指差しながら円を描いて示す。
私も普段これらの機能がついている機種を使っているよ。

Aさん
え?でもBさんが使っているのはAirpods proでしょ?
ここに並んているのはApple製品じゃないよ?

Bさん
🤔


ここでBさんが感じるズレはなんだろうか?

最初の段階でAさんは自分から「ワイヤレスイヤホン製品の一部に共通する機能」という抽象レベルで会話を始めている。

なのにも関わらず、急に話題が具体的レベルへと切り替わっている。

図で描くと下図のようなイメージだろう。

図1 抽象レベルの移り変わり

図1の①の破線のようにAの時点でなんの前触れもなく話題が急に具体レベルに切り替わっている。

唐突に話題の抽象度が変わってしまってはBさんは🤔?となってしまう。

本来であれば②の破線のように会話が進むにつれて徐々に具体方向へ深まっていく方がBさんとのズレ幅は最小限に抑えることができるはずだ。

些細なことかもしれないが明らかに会話として自然な流れにはなっていない。

家族や身内などの日常会話においてはそれほど気にならないかもしれないが、チームや組織の中で目的を持って議論する場合にはズレを産むことにつながってしまう。

考える順序と方向

ではもう一つの原因、「考える順序や方向」について見ていく。

普段、仕事をしていると「目に付きやすい部分」つまり具体レベルから始めてしまうというケースを多く見かける。

例えるなら想定ユーザーやスペック、発売時期も決まっていないのに商品名やパッケージ、ロゴなどが詳細まで決まっているようなケース。または、作るメニューが決まっていないのにとりあえず目の前にある野菜を切り始めてしまうといったケースだ。

これらの共通点は目的や考えるべき内容を設定せずに一方的なアウトプットからスタートしてしまっているところにある。

しかし本来、正しい流れならば図2のようになるだろう。「出かけるときに空を見たら雨が降りそうだったので傘を持って行った」という有名な空、雨、傘のフレームワークのように事実→解釈→行動という流れになるはずだ。

図2 考える順序

しかし前述のようなケースを図にすると下図のようになる。

図3 行動のみのパターン

この状態を空、雨、傘で考えれば、天気には一切関係なく傘を持っていくことだけはすでに決まっている状態と言える。

しかし現実的に考えれば事実と解釈の部分で「雨風が強いから安全のためカッパにしよう」もしくは「台風だから外出は延期しよう」という行動判断になるのではないだろうか。

前述の野菜の例で考えればいきなり切り始めるのではなく、「温かい料理を順序よく提供する」という目的のもと、どんなメニューを?何人に?どんな順番で?といった事実をもとに、食材や残り時間などと照らし合わせて、効率的な順序を考え、行動として調理するという流れになるはずだ。

現場では一見、両者は同じように見えたりするがアウトプットの質としては大きく異なる。

辿り着く答えが大きく変わる

ここまでで書いてきた2つのポイントは辿り着く結果に大きく影響すると考える。

なぜなら、議論を行っていく場合に個々の考える抽象、具体レベルの足並みや思考のベクトルが揃わないと対象の切り分け方や出てくる意見の粒度がバラバラになってしまうからだ。

これは出てくる意見の良し悪しという以前に、話が上下左右へ大きくブレるため不要な話題に必要以上に熱くなってしまったり、今議論すべきことや、出すべき結論が置き去りにされることに繋がってしまう。

さらに、議論する相手との人間関係を壊したくないという心理も相まって得たいと思っていた回答が濁ってしまったり、得られたとしてもその解像度は低くなってしまう。

議論に必要な一定の尺度

ではどのようにすれば違和感を避けることができるのだろうか?

それは仕事を共有するメンバーの中で共通言語として同じ考え方や捉え方の尺度や思考のベクトルを持つことだと考える。

以前、Newspicksの動画「実践マーケティングブートキャンプ」中でも議論が噛み合わない理由として「目的と言語が共通していない」ということが語られていたが正にその通りだと思う。

この部分が揃わなければ、どれだけ気の知れた仲の良いチームであっても、一緒に分析してみよう!考えてみよう!となったとき抽象レベルや切り口を揃えるところに時間がかかりすぎてしまい本質的な部分にたどり着くことができない。

今は書籍はもちろん、アプリや動画など様々なサービスを通じて体系化されメソッドを学ぶことができる。それらを一つの基準としてを用いて足並みを揃えることが一番効率的だろう。

まずはコミュニケーション環境から

仕事をしている中で具体と抽象の噛み合わせの悪かったり、考える順序やその方向にズレがあるケースにお目にかかると「歩幅を合わせて議論すればもっと刺激のある対話になるはずなのになぁ」と少々もったいない気持ちになる。

ほんの少しの意識やコミュニケーション環境の変化、高い視座を持つことで今までとは違った別のレイヤーが見えてくるのではないかと思うからだ。

現在、webメディアや動画を通じて様々な事例を見ることができる。

その中には地方の中小企業で微妙な隙間を捉え、上手に押し拡げることで不確実性の時代と言われている中で一歩先を歩んでいる会社も多い。

これは前述のような議論における食い違いを乗り越えたり、思考手順を統一した上でチーム全員で勝ち筋を模索したマーケティング活動があってこそのことだと思う。

私も地方でマーケティングに取り組む身として、コミュニケーション環境改善の種まきながら「マーケティングへのきっかけ」とクライアントに「小さなワクワク感」を提供できるような支援を目指していきたい。

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