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夜の側に立つ

小野寺史宣著「夜の側に立つ」(新潮文庫)読了。
代表作「ひと」や「まち」のイメージとは一味違う、少しダークな感じ。
だけど、特別暗かったり病んだりしているわけではなく、多分誰の中にでもある一面を描いてる。
それは、「ひと」や「まち」に出てくる人達の内面にもきっとあるものなんだと思う。

主人公の了治が高校時代に組んだバンドメンバー5人の18歳から40歳までの人生が、時系列を行ったり来たりしながら了治の視点で語られる。了治の、ちょっと生真面目で冷静に自分を客観視しながら、若干卑屈な感じには親近感を持った。
最初、5人の名前とキャラクターを把握するのに少し苦心したけど、時系列を行ったり来たりする構成には混乱させられることなく、面白く読めた。

40歳の現在、5人の中の中心的存在だった壮介の死から物語は始まり、40歳の現在で物語は終わる。意外な死の真相が最後に語られ、後味がよいのか悪いのかよくわからない(読む人に委ねられた)不思議な結末が自分にとっては新鮮だった。

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