つり橋






私はここのつり橋の管理を任されている。


しかし、殆どここを通る人はいない。


だから 木が朽ちてようが ロープが所々切れかかってようが 気にしなかった。



趣味のバードウォッチングをしたり、お腹が空けば持ってきたサンドイッチを食べた。


眠くなったら昼寝して、本を読んだ。



そんな事を繰り返していたら、ある日 つり橋を渡る人が現われた。


その人は、全く恐がる様子もなく どんどん渡って来る。


私はその様子をただじっと見つめていた。



つり橋を渡りきるとその人は私に話しかけて来た。


最初は対応がぎこちなかったが、徐々に打ち解け始め 時間が経つのも忘れて話に夢中になっていた。


好きな本の話や好きな音楽の話、戦争の話や世の中の話、仕事の話や恋愛の話


合間にお湯を沸かし、紅茶を飲んだ。沢山話したから喉が乾いた。


色んな話をした。初めて会った人だというのに。



帰る時間になると、その人はまたつり橋を渡って行った。


渡りきるのを見送ると、手を振りわたしも帰路についた。




それからというもの ぽっ とその人は現れるようになった。


私は渡る時に危なくないように、つり橋を直して毎日点検するようになった。



約束をしているわけではないから、もちろん来ない日だってある。



そんな時は 連絡先も知らない、約束もできない友達とも呼べるのか分からない不確かな関係という現実を知る。


それでも私は、毎日つり橋を点検する。


明日に望みを繋げれるように。




あの人は明日はきっと来る。















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