私はここのつり橋の管理を任されている。 しかし、殆どここを通る人はいない。 だから 木が朽ちてようが ロープが所々切れかかってようが 気にしなかった。 趣味のバードウォッチングをしたり、お腹が空けば持ってきたサンドイッチを食べた。 眠くなったら昼寝して、本を読んだ。 そんな事を繰り返していたら、ある日 つり橋を渡る人が現われた。 その人は、全く恐がる様子もなく どんどん渡って来る。 私はその様子をただじっと見つめていた。 つり橋を渡りきるとその人は私に話しかけ
昨日 告別式の精進落としの席で、ある男性の耳に付けていたピアスの数がえらいことになっていたので弟に「あの人の耳ヤバくない?」とそっと耳打ちしたら「あぁ、クッキー?」と、弟が勝手にその男性をあだ名で呼び出したのでオレンジジュースを噴きかけた。 そしたら実は心の中でみんな『クッキーがいる』と思っていたらしく、それからはその男性をみんな陰でクッキーと呼ぶようになった。 クッキーは自由人で、お黒飯をおかわりする際 皿の縁に小豆をびっしりと避けながら「豆が少ないところよそって!」と
信号待ちをしていた。 車に射し込む陽のひかりに少し汗ばむ陽気で 窓を開けながら、ぼーっと外の景色を眺めていた すると、白いビニール袋が 風に吹かれて宙に舞い 地面スレスレに落ちてはまた宙に舞い ふわり ふわふわり フワ フワ フワ ふわり 車の間を縫うように 不規則なリズムを刻みながら とても優雅に、舞ったり落ちたりを繰り返していた ハラハラしながらも、その様子に見とれていると 一台の車が、白いビニール袋のわきをスレスレで横切って行った
誰かの感受性に嫉妬するのが僕の癖で 喉を掻きむしりたくなるほどの渇望が、僕を苦しめる 人と比べることでしか自分の価値を計れない自分は 一体どこへ辿り着くんだろう 何のあてもなくフワフワと漂うクラゲみたいに 一喜一憂しては、上がったり下がったり 漂うことしか知らなかったけど、深海はどんなところだろう? 引力のままに沈んでいって ずっとずっと ずーっと そのまたずっと向こうまで ただただ降りていって 静かに海底へと辿り着く 暫く底に耳を当て 音のない音