こじらせ系ヤクルトファンが、大空を高々と舞う燕を夢見る話

乳酸菌といえばシロタ株。ライターの西です。

私が「行きたい場所」というお題で真っ先に思い浮かんだのは、東京都新宿区にある明治神宮球場。プロ野球・東京六大学野球のリーグ戦や、甲子園を目指す高校球児たちの熱戦が繰り広げられる、世代を超えて野球ファンに愛されている聖地です。

「一度は行きたい」と言いつつ、東京ヤクルトスワローズのファンの私にとっては、実は毎年通っている場所。私の地元でもある東京にいた頃はもとより、福岡にいた大学時代も、転職で東京から名古屋に移ってきた現在も、年に一度はライトスタンドでヤクルトの勇姿を見つめてきました。

私が初めて神宮球場を訪れたのは小学校低学年の頃。90年代半ばで、ヤクルトの黄金期とも呼ばれる野村監督時代でした。それまでにも何度もテレビ中継で球場を見てはいましたが、実際にスタンドに足を踏み入れた瞬間目に飛び込んできた球場の想像以上の大きさには驚いたものです。

そして初観戦でテンション上がりっぱなしの私の目の前で、ヤクルトは見事勝利!試合終了とともにファンが“応燕”(ヤクルトファンの応援)の代名詞でもあるビニール傘を開き、ライトスタンドは傘の花で満開に!私もその中の一輪となって一体感を楽しみました。

初観戦で“応燕”の楽しさを知ってから、「ヤクルト沼」に急速にハマり込んでしまった私。そこから、野球の常識がどんどんズレていくことに…。
物心ついた頃から燕の扇の要・古田敦也選手を見ていたことで、
・捕手は中軸を打つもの
・盗塁は半分刺せるもの
・正捕手がケガしなければ優勝できるもの
と思い込みはじめます。

さらにヤクルトというチームを見続けて、
・順位には1位と4位しか存在しない
・新加入の外国人選手は年に一人は好成績を残す
・移籍してきたベテランは活躍する
・球団マスコットは暴れまわる
という固定観念も…。このあたりの感覚は今でも引きずっているので、おそらくヤクルトファンの9割が陥る勘違いではないかと思います。

最近では
・セカンドはトリプルスリーが当たり前
という思い込みまでも…!ヤクルトを見ていると「普通」の基準がどんどん上昇していくような…。インフレっぷりがヤバいです。ジャンプ漫画も真っ青です。

そんなこじらせ系ヤクルトファンの私が、本拠地で日本一の胴上げを見たいと思うようになるのも自然な流れ。一度は生で、燕戦士を率いた指揮官が宙を舞う瞬間に立ち会いたい!つまり普段の神宮球場ではなく、

“ヤクルトが”“日本一になって”“監督が”“胴上げされている”神宮球場。

それが私の「一度は行きたいあの場所」です。

ヤクルトが14年ぶりにリーグ優勝した2015年の日本シリーズでは運良くチケットの抽選に当たり、第5戦を現地観戦していました。しかし試合はソフトバンクが勝利。4勝目を挙げたソフトバンクの優勝が決まり、工藤監督の胴上げを見届けることになったのです。その優勝セレモニーの後には、その年限りで引退が発表されていたヤクルトのユウイチ選手もチームメイトに胴上げされました。

つまりこの日、「“日本一になって”“監督が”“胴上げされている”神宮球場」「“ヤクルトが”“胴上げされている”神宮球場」は見たのです。惜しい、ニアピン。惜しいけど、どちらも大事な要素が欠けていました。我々の界隈ではこれは別物として扱います。当たり前ですよね。「次こそはヤクルトが優勝を決める試合を見てやる」と心に決めた瞬間でした。

今年はコロナウイルスの影響でイレギュラーなことが多発していますが、今日開催を迎えるとあって野球ファンとして「球春ならぬ球夏到来」とワクワクしています。

しばらくは無観客での開催が続くとのことなので、今は神宮球場でヤクルトを“応燕”できる日が待ち遠しいです。これは、「もう一度行きたいあの場所」と言えるかもしれませんね。

大歓声に包まれた神宮の杜で飛燕が天高く躍動する日を思い描く、夢見がちな30代男子の胸の内でした。


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