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もう一つのペナントレース!球春を2倍楽しむ方法【文春野球コラム】#とは#わたしのイチオシ

野球が大好きなライターの山田です。
プロ野球が開幕して、毎日のペナントレースの結果に一喜一憂するこの時期、実は昼間にも熱いペナントレースが開催されていることをご存じでしょうか。
それが「文春野球コラム」です。

野球好きの個性豊かな書き手が、自らの愛するチームについてコラムを執筆。プロ野球の対戦カードに連動する形で毎日11時にアップされ、その対戦チームについて書かれた2本のコラムいずれかに読者が投票することで勝敗をつけていく名物企画です。書き手は本職のライターだけにとどまらず、大学教授、芸人、主婦、元プロ野球選手など実に多種多様。書かれるコラムは、野球の結果やチームへの愛はもちろん、プロ野球雑学であったり、特定の選手への熱すぎる思いや、私生活や仕事と野球を絡めたものだったりと、それぞれの書き手の個性や職種が色濃く表れており毎日読んでいても飽きることがありません。そして、時折ハッとさせられるくらいの“深い”コラムや、思わず泣いてしまいそうなくらい感動するコラムに出会うことができます。

私が、文春野球コラムに惹かれるのは、なによりすべての書き手にプロ野球への強い愛を感じることができるからです。決められたフォーマットがなく、内容も自由な「コラム」という切り口を媒体にすることで、スポーツ紙や専門誌にはない“主観”や“個人的な思い入れ”や“愛着”にあふれた私的な内容が満載で、「みんな本当にプロ野球が大好きなんだな」と強烈に思わせてくれます。
「我がチームが…」「この選手の話を聞いてよ!」「あの頃は…」というプロ野球への熱すぎる思いがこぼれるコラムの数々。そこには、幼少期から当たり前のようにプロ野球が身近にあり、選手たちが本気で戦う姿に勇気や希望を与えてもらい、感動させられてきた私の人生に強くリンクするところがあるのです。

私は、ホークスの大ファンですが、この文春野球コラムではベイスターズを担当するフリーライターの西澤さんのファンです。プロ野球ではホークスに勝ってほしいですが、文春野球コラムではベイスターズに勝ってほしい!私は、プロ野球、そして文春野球コラムという2つのペナントレースが生活にあることで、この球春の時期を人の2倍満喫することができているのです。

今回は、文春野球コラムが好きすぎる私が「あー、プロ野球のある人生って最高だな!」と思わせてもらった至極のコラムを紹介していきます。

ヤクルトのセットアッパー、ハフを愛し、ハフに愛された青年の、ハフ愛の行方

筆者が、「応燕ドルフ」と名乗る青年とヤクルトの助っ人外国人ハフとの交流を描いた怪作。野球ファンなら思わずクスッとさせられる“こぼれ話”に深くフォーカスを当てた、文春野球コラムらしさの詰まった作品となっています。
有名選手には「追っかけ」のような熱烈なファンがいるはずです。しかし助っ人で尚且つ中継ぎ投手という“玄人好み要素満載”のハフを熱烈に応援して、毎試合後に「出まち」をしたり、シーズン前の沖縄キャンプにまでハフを追っかける個性的な青年。ハフ自体もやがて、異国の地で、強く自分を応援してくれる不思議な青年に心を開いていきます。
外国人選手は、怪我をしたり成績が伴わなかったりすれば解雇されてしまいます。ハフとの別れはいつ来るかわからない…。そんな切なさを含んでコラムは終わりますが、ハフはこのコラムの数か月後に契約解除されてしまいました。
私は、ハフ解雇の報を聞いてすぐに「応燕ドルフ」のことが頭をよぎり、彼のTwitterを見にいきました。そこにはハフへの愛ゆえに達観しているかのようなツイートがされており、ヤクルトファンって“粋”だなと思わされました。

ベイスターズ「2位」が決まったのに、どうしてモヤモヤするのだろう

個人的に文春野球コラムの中で一番好きな作品です。2019年のペナントレース終盤にジャイアンツとの白熱した優勝争いを繰り広げたベイスターズ。優勝への一筋の望みをかけた試合を現地で観戦した筆者のコラムです。自身の観戦記、息子の野球部での経験、そして梶谷選手への思い入れ、視点を変えながら野球のもつ“儚さ”、勝負の“無常さ”、そしてやりきれない“悔しさ”を描き切った、どこか哀愁すらも漂う名作
野球と涙という組み合わせはどうしてこんなにも私たちの胸を打つのでしょうか…
ゲームセットの瞬間の悔しさよりも、その前にみせた梶谷選手の好プレーに、過去のシーンをプレイバックして思い出してしまう、筆者の深いベイスターズ愛が垣間見えるところも好きです。

カープとデートと樽募金〜お爺ちゃんとお婆ちゃんの物語

文春野球コラムで一番目頭が熱くなった作品です。もう、この作品は深くは説明をしないので、とりあえず読んでみてほしいです。

プロ野球が生活の希望であり、復興の象徴だったそんな時代。プロ野球の積み重ねてきた歴史と、プロ野球を支えてきたファンの紡いできた“思い”が強く感じられます。

父とナゴヤ球場と背番号0 神野純一の記憶

名古屋生まれ、名古屋育ちの私。やはり普通に生活をしていて入ってくる野球情報の量は圧倒的にドラゴンズが多いです。まずタイトルの“神野純一”という名前に強烈な懐かしさを覚えました。物心ついた時のドラゴンズの代打の切り札。他の地方の人には聞きなじみはないかもしれない「神野」という名前は当時、“54”という背番号と共に東海地方の小学生の大多数が知っていたはずです。
コラムは、少年時代に神野選手の活躍を目撃した筆者と父親の思い出から始まります。そして、神野選手の背負った「0」と「54」という2つの背番号と、父親の節目を重ね合わせて綴られていきます。親とのプロ野球の思い出、そして今その思い出は自分の子供へとつながれていく。プロ野球と共に過ぎていく、人生という時の流れ。
同年代かつ同郷の筆者の描く文章は、自分と重なるところも多く、私も父親とキャッチボールをしたり、バッティングセンターに連れて行ってもらった日々を強烈に思い出しました。プロ野球の歴史は、多くの人々の人生そのものなのだと考えさせられる作品。なにより神野選手の名前が、名古屋出身の私にとってはピンポイントで“あの頃”の記憶を呼び起こすワードとなり、このコラムのことを深く印象付けています。

野次と金本と私〜神宮球場で金本知憲に怒られたあの日のこと

野球ファンにとってプロ野球選手は雲の上の存在。そこには越えられない壁があります。街でたまたま出会って言葉を交わしたとしても、それは激励の言葉くらいです。とはいえ、好きなチームを応援している際には、その強すぎる愛から、ついつい“恨みつらみ”が野次として口から出てしまうもの。このコラムは、「聞かれているはずがない」と筆者が観戦時に不意に叫んだ野次から、思わぬ展開が生まれたストーリーです。グランド上の手の届かないプロ野球選手という存在の、普段とは違う“人間臭さ”を感じさせてくれる作品となっています。
雲の上であるプロ野球選手も実は、一人の生身の人間であり、悔しさや嬉しさといった喜怒哀楽を持っているのだということを。また、フィクションや作り物ではなく、生身の人間同士が全力で取り組むからこそ、プロ野球は“筋書きのないドラマ”と呼ばれ、多くの人々が熱中させられるのではないでしょうか。

以上5つが私の大好きな文春野球コラムです。どれもあらすじ程度の紹介となっていますが、本編ではより、書き手の個性にあふれた生き生きとしたコラムを楽しむことができますので、ぜひ読んでみてください。そして野球ファン、野球オタクのもつ熱量を感じてほしいです。

そして、「この人のコラムおもしろいなー!」とコラムペナントレースにおける贔屓球団を見つけることができれば、私のようにプロ野球というコンテンツを2倍楽しむことができるはずです。さてさて、今年はどんな文章による熱い戦いが繰り広げられるのか、願わくば野球ではホークスが、コラムではベイスターズがアベック優勝を飾ってくれることを期待しています。

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