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音楽は鳴りやまない

チェンマイの夜は涼しくて、バッパーの外にある庭に木製のイスとかテーブルがあって、そこでは旅人がそれぞれ酒飲んだり、たばこを吸ったりして気楽にやっていた。
僕とドイツの青年とでゆっくり話していると、同じテーブルに座ってたばこを吸っていたフレンチのオラとも話が弾んだ。
なんでも彼女は明日ミュージックフェスティバルに行きたいんだってことだった。
「おいおいそれ、俺も行くやつだよ」って伝えると、話が早くて、「じゃ一緒に行こうよ」ってなった。

そのフェスの名は「シャンバラフェスティバル」日本やタイで活躍しているミュージシャンが毎日出演して、音楽を奏でるお祭り。
ピースでイージーな感じが好きだったなぁ。

みんなそれぞれの旅があるんだ。
会場に入ると早速サニーとげんじろう君と、フローに再会した。

会場は広くてさ、野原に大きなステージがあって、その周りに音響設備とステージから遠くのテントや木なんかに何本か線が伸びていてそれにピースなレインボーカラーの旗が揺れてんだよ。

夕方、一日目はあっという間に過ぎて、再会と出会いがいくつもあった。

空が暮れてく。
僕はここにいたのかぁ。
あのミュージシャン達は今頃どこで何してんだろな。

宴が始まるのは時間の問題で、僕たちは晩御飯を一緒に食べながらビールをあけてた。
大好きだったタイのチャングって言う瓶ビール。

夜中も誰かが楽器を持ち出して演奏しだして、それに合わせて歌声が聞こえてきて、また誰かが躍りだしていた。

音楽が鳴りだすのは夕暮れと共にだから昼間は時間だけがあった。

僕等はバイクをサンケツして洞窟まで向かった。
オラが行きたいと言っていたチェンダオケイブに到着。

いざ洞窟の中へ、光は岩に吸い込まれて奥が見えない。
一歩、また一歩と進むうちに静けさに包まれてく。

帰りも「ヒッチハイク」をした。
道で偶然バイクを運転していたジョンが俺達を拾ってくれて、祭りがおこなわれている近くに川が流れてるんだけど、そこでは自然の温泉が出ててさ、自由に入れるからってそこまで送ってくれたんだ。

鳥の親子も川で水浴びしている。
子供もアニマルのすぐ近くで遊んでいる。
俺、小さい頃こんな環境ちょっと憧れていたかもって思うことあるよ。

ノーヘルでゆっくり風なでて俺達はチェンダオを体いっぱいに感じていた。

夜が来てステージには明かりが灯る。

俺達のバンドが出演して『シャガールの夜空に』とか演奏したらめっちゃ盛り上がるだろうなって思った。

ステージの明かりが落ち着くと、離れたところにある食堂にミュージシャンが集まって音楽が始まる。

本当にヘポパな場所にいたんだなぁとつくづく思う。

たまに焚火をして旅人と語り合う夜もあった。
バンコクで一緒に旅したアンドレアとの再会もあった。
そうだ、あいつもここに流れてきたんだ。

陽が昇って、陽が落ちて。
僕は何度、温泉に入りに行っただろうか。
川で簡単に頭を洗った日もあった、飲み明かした夜もあった。
新しい出会いと、再会、そして別れ。
この一週間だけでも濃密な日々を送っていたんだ。
海外を何年も旅するなんて、いかれていて最高じゃんか。
「たま」の知久さんがステージで歌っていた。

最終日、げんじろう君と、フローと、フローの友達のジョンがステージに立って演奏をしている。
そうそう僕はこれを見に来たの。

歌の余韻と、街の中。
フェスティバルはもう夢の中。

夜行バスの窓を通り抜けてくヘッドライト。

僕は歩きださなくちゃいけない。

あんな夜にはいつになったらまた会えるんだ。
バンコク最後の夜。

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