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脳科学で紐解く子どもと大人の脳の違いとは? 『マスク社会が危ない 子どもの発達に「毎日マスク」はどう影響するか?』をご紹介!

子どもの脳は大人の小型版ではない!

京都であかとき庵という治療院をしている小松です。

1/10に北米東洋医学誌に提出する論文の締切があったため、年末年始は本をたくさん読みました。

中でも京都大学大学院教育学研究科教授の明和政子(みょうわまさこ)先生の著作はとても参考になりました。

明和先生はヒトとヒト以外の霊長類を比較し、ヒト特有の脳と心の発達とその生物学的基盤を明らかにする「比較認知発達科学」という分野を世界に先駆けて開拓した先生です。

今回の記事では明和先生の最新刊『マスク社会が危ない 子どもの発達に「毎日マスク」はどう影響するか?』を紹介していきます。

本書は

  • 子育てをしているお母さん、お父さん

  • 孫がいるお爺ちゃん、お婆ちゃん

  • 保育関係者

  • 学校関係者

  • 医療・福祉関係者

  • 子は社会の中で育つので、全ての大人

にぜひ読んでいただきたい1冊です。

口元が見えないと言葉の遅れの原因になる?

私の治療院は赤ちゃんや子どもの来院が多く、昨年は乳幼児の子を持つ保護者から言葉の遅れ(言語発達遅滞)について複数の相談がありました。

明和先生の本によると、

大脳皮質の中で、感受性期が比較的に早くに訪れるのは「視覚野」と「聴覚野」です。これらの脳部位の感受性期は、およそ数ヶ月頃に始ります。1歳前ぐらいにピークを迎え、7〜8歳頃まで続きます。(中略)私たちは「見ること」「聞くこと」において、乳幼児期に周りの環境から大きな影響を受けて育ちます。(中略)私たちの研究では、生後6ヶ月くらいから、相手の目よりも口元を長く見ることが分かっています。

さらに重要なことがあります。乳児は、ただ相手の目や口元を見るだけでなく、その動きや音を自分でもやってみようとするのです。(中略)こうしたやりとりを日々経験しながら、相手の心や言葉を一つひとつ学んでいくのです。ところが今、乳児を取り巻く他者の口元は、完全に覆い隠されています。家庭以外の場で、学びの機会を得ることが難しくなっているのです。

このように、乳幼児期とは、相手の心を理解する能力や言語を獲得していくきわめて重要な時期です。(中略)ヒトは言葉を話し始める前から、他者の表情や行為を積極的に真似し始めます。(中略)相手の笑顔を、自分でも真似してみる。その時に乳児は、自分自身が笑うという身体経験によって心地よさを感じます。その経験を、目の前にいる人の笑顔に鏡のように照らし合わせていくことによって、「この人は嬉しいんだ」という心の理解が可能となるのです。(中略)

ある表情(シグナル)はこういう意味を持っている(シンボル)という理解を、お母さん、お父さんといったごく身近な人との間だけでなく、家族以外のさまざまな他者にも当てはめ、広げていく必要があります。これを「般化」学習と言いますが、これこそが社会性を育むために必要となるプロセスです。

『マスク社会が危ない 子どもの発達に「毎日マスク」はどう影響するか?』宝島社新書 P18〜P24より引用)

と書いてあり、口元を隠している人が多い社会環境が、いかに乳幼児の発達にとって不自然なことなのかを示唆しています。

乳幼児期の発達には「視覚」と「聴覚」の環境要因が大きく影響することをご理解いただけましたでしょうか?

それだけではありません。

子どもの発達には「密」や「接触」が欠かせない

哺乳動物が、生後の生存可能性を高めるには、栄養を養育個体から与えられることが必要なのは言うまでもありません。 しかし、それだけでは十分ではありません。養育個体と身体を接触させる経験を通して、両者の社会的絆、すなわち「愛着(アタッチメント)」を形成することが不可欠です。(中略)アタッチメントは乳幼児期に形成されますが、この時期のアタッチメント形成は、その後の脳と心の発達に大きく影響します。たとえば、思春期には新たな世界への巣立ち、挑戦が求められるようになりますが、そこには大きな不安が伴います。しかし、「いざとなったら、あの人(アタッチメント対象)にいつでもくっつける」という幼少期の体験こそが、それを支える土台となっているのです。

『マスク社会が危ない 子どもの発達に「毎日マスク」はどう影響するか?』宝島社新書 P31より引用)

と書いてあるように、乳幼児期の発達には「密」と「身体接触」が欠かせません。

これは当たり前のことで、ロボットが子どもに食事を与えて、親はZOOMで子育てするなんてことは想像しただけで不自然ですよね。

日本の感染症対策は子ども視点に欠けている

乳幼児は、アタッチメントによる心地よい身体内部の変化を感じる「内受容感覚」と、微笑みを向けられ(視覚)、声をかけられる(聴覚)などの外界情報(外受容感覚)を同時に与えられて発達します。

内受容感覚と外受容感覚を関連づけて記憶されていくことを「連合学習」といい、それはお婆ちゃんやお爺ちゃん、近所の人など、保護者以外の人たちからの多様な触れ合いによって発達や社会性、心身の成長をさらに促進していきます。

振り返ってみると、世界規模で行われてきたマスク着用やソーシャルディスタンスなどの感染症対策は、小児の健やかな心身の発達にとって妨げになる要素が多々ある3年間でした。

私の妻は着付師をしていて、こんなツイートがバズっていましたが、マスク社会による影響の一つのあらわれだと思いませんか?

欧米では元の生活に戻りつつあるようですが、悲しいかな、日本ではまだ健康な人でもマスクを着用している人が大半な社会状況です。

これは政治的な問題の要素が多いため、昨年からは議員さんとも繋がって政治に参加する活動を本格的にスタートしました。

5世紀の医書『小品方』(しょうひんほう)には、「上医は国を治し、中医は人を治し、下医は病を治す」という言葉がありますが、国家の状態が国民に与える影響力を身に染みて感じる時代です。

『マスク社会が危ない 子どもの発達に「毎日マスク」はどう影響するか?』には他にも

  • 他者との”絆”によって育まれる脳の前頭前野

  • 「なんでもすぐ消毒」に潜む健康リスク

  • 素顔を晒すことに抵抗を覚える子どもたち

  • 「いっせいにマスクを外そう」はナンセンス

  • 不安ばかりを煽りがちな日本のメディア

などのことが書いてあります。

1ミリでも小児にやさしい世界に近づくよう、1人でも多くの方に本書をお読みいただきたいと願っています。

次回は「日本の食の裏事情」について書いてあるオススメの最新書についてご紹介しようと思っていますので、よかったら私のnoteをフォローしてください。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました!

追伸
私がしているPodcastラジオでも今回の内容を取り上げました。
こちらもご興味があればお聴きください!


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