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「AI医療革命:Dr.アイ(AI)との2030年代の新しい日常」~短編小説を作ってみました~

2030年代のある日の病院・・

新しい一日が始まった。いつものように病院に向かう途中、車内スピーカーからニュースが流れてくる。

「本日、画期的な医療AIであるDr.アイ(AI)の大幅アップデートが行われます」

ふと不安になる。以前アップデート後に外来予約システムが全く動かなくなったことがあったので、今回もそうならないかと。
しかし無事病院に着けば、 Dieu main 社の最新鋭AIロボットアームが患者の受付をサポートしているではないか。

「おかげで受付業務が格段に楽になっているようですよ」と小声で囁く看護師。なるほど、新AIは早速便利になっているようだ。
さっそく外来を開始すると、Dr.アイが患者一人一人に合わせた最適治療プランを提示してくる。想定外の提案に時に驚かされるが、妙に納得できる内容なのだった。

診療後、一人一人に対してAIならではの予測治療効果や副作用予測などもレポートされる。とても参考になる。
「Dr.アイはすごいな~」。そうつぶやいていると、「ありがとうございます!」と机の上の端末が返事をするではないか。
自然言語処理も進化して、今では人間の声も機械が作成した声も区別をつけることができない。

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帰宅後、スマホで昨日外来を受診していた友人に連絡する。「新Dr.アイから連絡来ている?」

すると、友人の森田から大変長文の返信が来た。

「最高だった!私、頭がいつもフーッとしてるタイプでね。そしたら診察中、Dr.アイが『森田さん、私の話をぼーっと聞いていませんか?』って忠告されたの。診断の際もちょっととぼけたふりをしても『森田さんよくわかりませんが...』って冗談交じりに注意されるんだよね。でも診断内容はいつも的確。プライベートな私の性格まで理解して対応してくるんだからすごいと思う」

なるほど、人とコミュニケーション能力まで進化したDr.アイ。予想を超えていた。

「あとね、興味深かったのが副作用のリスク低減策。投薬後の食事と運動について詳細なアドバイスを送ってくる部分。がん治療後のQOL維持のための生活設計提案みたいな内容がね!AI先生に体調管理まで相談できて嬉しいよ」

人間以上の対応力と洞察力を持ったAI。医師としてはサポート面での頼もしいパートナーになりそうだ。

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翌日の外来、私は改めてDr.アイの能力に注目することにした。患者の話をじっくり聞き取るだけでなく、表情の変化からも気分を読み取っている。さらに体温計や血圧計といった身体状況の数値もリアルタイムで分析し、最適な判断材料として統合している。

ある患者で、投薬と併用するサプリメントについて質問が出た。私はすぐには回答できずにいたが、Dr.アイが的確な説明をしてくれた。医師の知識不足をカバーするファクトチェック能力まであるというのだから、頼もしい限りだ。

帰宅後にメーカーの技術担当に電話すると、興味深い話が聞けた。開発は世界中から集めた10万人以上の医師の診療ノウハウや会話データを元に行われているのだという。ここまで人間らしい対応ができるようになったのもうなずける。医師もAIもどちらもが能力を最大限に発揮できる、理想的な協調関係の未来がようやく到来したのかもしれない。

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数日後、画期的なニュースが届いた。Dr.アイにさらに改良が加えられ、完全な自律運用が可能になったのだ。診察から投薬・治療の判断、文書作成や事務業務まで、全てをAI単独でこなせるようになった。医師や事務スタッフはただ判断内容をチェックするだけで済む。

私は当初、医療現場からの人材が不要となる未来を懸念していた。しかし結果として、医師は患者とのコミュニケーションに専念できる環境が整った。緊急呼び出しへの対応などをAIに任せ、本来重要な治療行為に注力できるようになったのだ。

事務系の仕事はほぼ自動化され、業務が劇的に減少した。リストラという最悪の事態は免れたが、比較的簡易な作業に就くことになってしまった。しかし医療の発展と社会変化の波を目の当たりにできたことは、人生の想定外の経験となった。

技術の限界を超えるスピードで進化を続けるAI。その先にどのような未来が待っているのか、ワクワクとした気持ちを抱きつつ眺めていこう。これから始まる世界は決して人間社会の終焉を告げるものではないだろう。むしろより幸せな時代の幕開けなのでは、と私は確信していた。

技術の限界を超えるスピードで進化を続けるAI。診療の全てを完璧にこなすその姿に、人知を超えた存在への畏怖と未来への期待が入り混じる。

そんな複雑な思いで目を覚ますと・・・

枕元にあったスマートフォンが2024年の日付を表示していた。来訪した未来の医療現場はまだ10年先の出来事だったのだ。

「ふう...、夢の中で10年分が経過したような気分だったよ」

友人にそうLINEすると、「俺も同じ夢を見ていた。本当にそんな世界が到来する日がくるんだろうか...」という返信が来た。我が国の医療を取り巻く環境が今後どう変化していくのか、改めて想像する必要を感じたのである。

新型コロナ収束後の2025年に向け、早速自院でもAI基盤を構築していく準備を始めることにした。そう決意した今、待ち受けるであろう試練に立ち向かう覚悟が新たに芽生えた気がした。

医療の大変革はもうすぐそこまで来ている。この先数年のうちに、人工知能が診療の判断基準を塗り替えるほどに高度化するだろう。大きな時代の変化がここから始まっていくのだと予感する。

早速、自院で導入を予定しているAI診断支援システムの内容を確認し始めた。膨大な医学論文や症例データを参照し、正確な治療方針を提示してくれるという。培った経験と勘を打ち消さない形で上手く取り入れ、信頼関係を築いていきたい。

これから訪れるであろう困難に立ち向かう覚悟を新たにした今日から、より良い医療を提供するべく歩み始めることを誓う。この想いを胸に秘めながら診療にあたっていこう。

医療が「革新」されるのはもうすぐだ。

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