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『映画フィッシュマンズ』が生まれるべくして生まれた理由と裏トーク


公開されてから早くも1年半以上の時間が経った『映画:フィッシュマンズ』ですが、東京藝術大学大学院 オープンシアター 2022『映画:フィッシュマンズ』が開催され行ってきました。すでに配信やBD化もされているタイミングでこのような企画が開催されたかというと『映画:フィッシュマンズ』のメインスタッフはほとんど藝大大学院映像研究科出身だったということで上映&公開講座という形で開かれました。

司会進行:筒井武文(映画専攻教授)
ゲスト:手嶋悠貴(撮影領域・5期修了生)大川景子(編集領域・3期修了生)和田清人(脚本領域・1期修了生)山本大輔(撮影領域・1期修了生)
場所:東京藝術大学 横浜校地 馬車道校舎

会場の藝大大学院映像研究科は上野ではなく横浜にあるのですね!元銀行の重厚な石造りの建物をリノベーションした素敵な校舎でした。

そしてこの会ではこれまでの数多くのインタビューや舞台挨拶では語れらなかった制作のエピソードや印象深い言葉が沢山ありました。これまで『映画:フィッシュマンズ』について自分が書いた記事を裏付けるファクトが多数あり、大変見にくく恐縮ではありますが、自分メモ的に書いたメモをnoteに記載させていただきます。

筒井教授の進行に4名の登壇者が返答するという形式で進行しており、記憶がある限りどなたの発言であったかをカッコ内で記載してみました。途中3パートの未公開映像の上映があり飽きさせないように工夫された演出が施されておりました。

秘蔵映像1:クラウドファウンディングスタート時のトレーラー映像〜後の映画本編で使用されるいろんな映像素材が多数入っていて自分もこのプロジェクトは本気だと思ったものです。サイト上では途中から見れなくなったので久しぶりに見れて嬉しかったです。特にトレーラーの最後に流れる1991年9月の「新宿ステーションスクエア」でのライブ映像があまりにも鮮明だったことを思い出します。

坂井利帆プロデューサー挨拶があって

筒井教授:この映画のメインスタッフの殆どが藝大映画専攻の修了生
登壇者4名の挨拶と自己紹介
学生の時からフィッシュマンズは好きだったけどもうヴォーカルのいないバンドだったのでそれほど深く追いかけなかった(手嶋)
入ったときに手嶋監督がすでに80ページぐらいの分厚い資料が作ってあってこれは本気のプロジェクトだと思った(和田)
私もフィッシュマンズが大好きだった。最初はこのプロジェクトを知らなくて「闘魂ライブが素晴らしかった」と聞いてとても羨ましかった(大川)
自主企画だからスタッフはフィッシュマンズ好きな人を集めた
録音のコウさん、撮影の長瀬さんも「男達の別れライブ」に行っている人たちです(手嶋)
映画の視点を持ちライブを撮っている人が集まったイメージ(和田)
インタビューの場所にこだわった(手嶋)
インタビュー撮影は結果として1年以上かかった 
小嶋さんは最初は出たくないと言っていた(手嶋)
小嶋さんが出なかったら成立しなかったのでは?(筒井)
手嶋監督の説得がすごかった
昔のライブテープを小嶋さんに聞かせてムード作りしていた(和田)
小嶋さんは1時間しかないからと言ったが気にしないで始めた(手嶋)
撮りたい場所 全てが立体的に繋がっている(筒井)
譲氏の素材がある時点でガラッと変わった これで上手く行くと思った(大川)
撮影始めてからどのくらい?
メンバーが信頼してくれて話してくれるようになってきた
撮影しながらまるで佐藤伸治を探しているような感覚(手嶋)
奥多摩ロケの譲氏の感謝の言葉でこの映画が上手くいくと確信した
対話をしているように演出した撮影設計(手嶋)
野外の風景がこの映画のリズムを作っている(筒井)

秘蔵映像2〜佐藤君と小嶋君が持っていた8ミリフィルムを上映
「いかれたBaby」代々木公園や「My Life」下北沢ロケなどMVに使われていたフッテージ、佐藤君が拾った8ミリカメラで撮っていたもの

(左から)和田さん、手嶋監督、大川さん、筒井教授

編集期間が最終的にのべ一年かかった、普通の商業映画ではありえない、本当に恵まれている環境だった(大川)
これだけのものが撮れているんだからフィッシュマンズは全てやらなきゃだねと思った(大川)
坂井Pとママ友が全てのインタビュー素材を文字起こししていた&和田さんがそれを元に構成作ってくれていたので全てチェック出来た
文字だけでは見逃してしまうこと絵で見ると違っていたものがある
最初の初号はインタビューだけで8時間ある(大川)
筒井教授>それ見たい!
インタビューだけで面白い(大川)
中間のナイトクルージングのコラージュは手嶋監督ならではの手法 2人の要素がミックスされる(大川)
和田さん含めた3人が有機的に機能している(筒井)
坂井さんが生粋のファンだから見てもらって大丈夫ということで安心した(大川)
小嶋さんのシーンが素晴らしいのでもう少し話してほしい(筒井)
小嶋さんのトークシーンはいくつかパターンを作った
小嶋さんの曲を使ったりとか茂木さんや譲さんの言葉入れたり(大川)
でも小嶋さんの沈黙の方が一番説得力あった(手嶋)
どのレコーディング風景も楽しそうだと思ったのでちゃんと使おうと思った(大川)
スペシャの番組出演中の佐藤さんは自分にとってインタビューをはぐらかすミュージシャンの原風景になっている(大川)
音楽はあるべき曲が自然にそこに入るが最初の「チャッピードントクライ」が中々決まらなかった(手嶋)
フィッシュマンズの8年間の変化起こりうる変化・変貌・人間関係(手嶋)
手嶋監督がすごい細かい年表を作ってくれて事務所の壁に貼ってあった(大川)
一つのシーンでもいろんな感情のレイヤーが幾つもある(大川)
シーンのメリハリが上手い、二人の感覚が奇跡的に重なっている(筒井)
後半のタイトルを和田さんが考えてくれた漢字2文字でクリアになった〜断絶、出発?(大川)
配給の話、自主配給になった
2020年11月に完成してないけど先に茂木さんに見せた
その時「なんでもっと見せないの?」と茂木さんに言われ遠慮せずに作りたい作る(手嶋)
コロナもあって形になったのはメンバー試写の1週間前
メンバー試写の日は茂木さんはそわそわしてた
小嶋さんが「いい映画を作ってくれてありがとう」とスタンディングオベーションしてくれたのでこれで良かったと安心した
ドキュメンタリーは人の人生を変えてしまう恐ろしさに最後まで注意した(手嶋)
茂木さんのインタビューは最後にもう1回だけ撮って入れた(和田)
いない人にここまで密に会話をしようとしているのはこれまでない体験だった メンバーもみんな佐藤さんを探していた(手嶋)
スタッフもみんな世田谷住んでてフィッシュマンズのワイキキスタジオみたいな追体験(和田)
やりたくてやってるプロジェクト
彼らのように気高く真摯にモノを作りたい(大川)
整音のコウさんもフィッシュマンズが好きだった
手紙の背景音のためにかつて佐藤さんの住んでいた場所に行ってフィールドレコーディングしてた(山本)
ZAKさん大変だったが日活のスタジオでMAしてくれた
MAでまるまる2日間完徹するZAKさんの集中力
やりきる
佐藤伸治の音楽の巨大さ
才能があって
真剣勝負

秘蔵映像3:「なんてったの」の一発撮りMV映像フルバージョン〜映画のオープニングで使われた佐藤が歌い茂木・柏原が後ろでわちゃわちゃしている映像です!可愛かった。

最後の方は言葉だけ書いてあり分かりにくくて申し訳ありません。会の雰囲気は伝わりましたでしょうか。全体的に映画専攻の筒井教授が教え子たちが力を合わせて傑作ドキュメンタリー映画を作り上げたことが本当に嬉しそうで何度も「素晴らしい作品だと思います!」と発言されていました。


フィッシュマンズは、1990年代に活躍した伝説のバンドだが、作詞・作曲を担当したボーカル佐藤伸治の急死で、99年活動停止する。その後、復活したフィッシュマンズが、佐藤の没後20年に行なったライブイベント「闘魂 2019」に合わせて、彼らの活動の総体を追求する『映画:フィッシュマンズ』(2021)の撮影がはじまった。監督が映像研究科映画専攻修了生(在学時は撮影・照明領域)の手嶋悠貴で、編集の大川景子、構成の和田清人、撮影監督の山本大輔をはじめ、初期の映画専攻生が多数スタッフに参加している。映画専攻では、劇映画の分野では未来の日本映画を担う人材を輩出してきたが、ドキュメンタリーの分野でもこのような優れた作品が生み出されたことに感慨が深い。
『映画:フィッシュマンズ』は、紛れもない傑作である。同年に、配信されたピーター・ジャクソン監督の『ザ・ビートルズ:Get Back』と比べても決して見劣りしない。どちらも、バンドの解散に至る経緯を描くという共通点はあるものの、『Get Back』が、マイケル・リンゼイ=ホック監督の『レット・イット・ビー』(1970)で撮影された57時間のラッシュ・フィルムの再編集であるのに対し、『映画:フィッシュマンズ』は過去の映像を掘り起こしているが、中心になるのは、残されたメンバーをはじめとする関係者のインタビューである。現在と過去が対峙する。このインタビューが編集されるや、ある出来事が各々の視点で語り出され、立体的に提示される〜

本講座の紹介メッセージ(文:筒井武文)より


最後に筒井教授から「質問がありましたらこの時間でお答えします」とありましたので思い切って手嶋監督に「映画本編のラスト前にライブハウスの佐藤さんのシーンを入れたのか」という質問をぶつけてみました。以前も書きましたが自分で撮っておいてすっかり忘れていたあのシーンです。

手嶋監督は「ミュージシャンの佐藤伸治をもう1回呼び返したかった、デビュー前の初期映像を使いたくて大川さんに相談した」とのこと。大川さんはあの映像を見つけた時に「この佐藤さんの映像は絶対使ってやろう」と心に決めていたそうです。偶然に撮れた画像とは言えこの言葉はとても嬉しかったです。かつてのレーベルの仲間たちからは「最後になんでお前の声なんだよ!」と非難されましたが・・・。

前後しますがやはり大川さんから「レコーディング映像の楽しい雰囲気は絶対に大事にしよう」と思ったと言う言葉を聞いて、30数年前の駆け出しのプロモーターだった自分を褒めてあげたいと思いました。

フィッシュマンズのドキュメンタリーをいつか作ってもらえたらという思いで取材ディレクターの真似事っぽく撮った動画素材が30数年経って本当に現実のドキュメンタリーになる人生のマジックを見せていただき、この上ない幸せな時間を頂きました。ありがとうございました!

【追記①】
記事中に出てくる「坂井プロデューサーと坂井Pのママ友の協力で全ての映像素材が文字起こしがされていた」という大川さんの発言を聞いてふと思い出したのが初期のフィッシュマンズの頃、いつもライブやイベント現場にいる強力なフィッシュマンズの追いかけ少女たちの集団がいたことを思い出しました。『映画:フィッシュマンズ』の前半でもチラっとノボリを持って映るあの娘たちです。あの中に坂井Pがいたんだな(笑)。

【追記②】
会の終演後、少しだけ手嶋監督とお話する機会があったのですが、その時に別のファンの方が手嶋監督に渡していたのが1994年10月22日渋谷LOFT WAVE前の階段で行われたライブ映像。かつてCDショップのWAVEが渋谷LOFTにあった時、店の前の階段スペースで無理やり開催したときのもの。人が集まりすぎて完全にヤバいライブになってしまい必死に警備をやっていたので演奏はほとんど憶えていません。映像はとても鮮明なものだそうなので自分も見てみたいです。。。

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