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空撮 ~飛ばなきゃ撮れない世界~

空撮の理由

私が今年取り組んでいる作品が「都市の記憶」というタイトルで「77年前の東京大空襲で焦土と化した東京、今の風景から平和を考える」というコンセプトです。
このシリーズは基本的に高所からの撮影をしています。東京スカイツリー、東京タワー、森ビル、渋谷スカイなどです。但しこのような建物からのみでは作品のバリエーションが少なく表現の幅が狭くなるので空撮を計画していました。

海外の大きな美術館での個展や写真集を作ることを考えたら少なくとも50点、できれば100点くらいは必要です。しかもあまり似たようなものを並べることはできないので様々な展開が必要なのです。このようにひとつのコンセプトに基づいた50点以上の作品を作り上げられる力が求められます。

フライト計画

ある日突然「明日飛べるよ」との連絡が入りました。天候と飛行機の空き、私のスケジュールがなかなか合わずに、2か月ほど待った末やっと飛べることになりました。

撮影準備をして朝9時からのフライトのために空港へ向かいます。
その後、パイロットとの打ち合わせを行いました。既に希望航路を伝えてありましたので、都内上空の飛行許可も取ってあるとのことで、さっそく機内へ。

ドローン

パイロットの方曰く「最近は空撮する人は珍しい」とのことです。どうやら空撮の仕事はドローンが主流になっているようです。私もドローンの撮影を検討しましたが、都内での撮影許可の取得が難しいことから断念しています。

私はドローンの人口密集地域での飛行に関して東京航空局の許可を得ておりフライトできるのですが、一番の問題は地権者の許可です。高度300mくらいまでの空間も土地の所有権の範囲になります。ドローンが飛ばせる最高高度は150mですので地権者の許可が必要になります。但し、その許可取得は実質的に困難な作業となるため諦めています。

揺れる!

「今日は風向きがころころ変わるので揺れますよ」というパイロットからの注意がありました。「たぶん酔わないと思います」というやりとりをしてテイクオフ! 久しぶりのセスナフライトです。15分くらいで都内へ入りました。

A3サイズくらいの窓を開けてそこから撮影します。レンズのフードは風の影響を大きく受けるのと、脱落の可能性があるので付けません。予想通り機体は激しく揺れています。

当初はシャッター速度1/1000秒くらいに設定していたのですが、1/1600秒、ISO 800 、絞りF8にしてブレを抑えます。構図もままならないため連射、連射です。「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」作戦です。結果、1000枚ほど撮影しました。フィルム時代の空撮カメラマンは大変だったのだろうなあ、と感心することしきりでした。

実際は激しく揺れています。セスナは30年前にロッキー山脈で飛んで以来です。

面白いぞ、これは!

墨田区から丸の内、皇居、六本木、新宿をそれぞれ旋回しながら、撮影し帰路に付きます。そして無事茨木の飛行場にタッチダウン。う~ん、スリル満点!東京上空の空撮は楽しいです。

ちょっと経費はかかりますが、自分視点でのオリジナルショットがたくさん撮れたので、空振りの多い撮影旅行に行くよりいいかなと思います。

高度1000~1500フィートを飛びます。

鉄は熱いうちに

「昨日飛んだよ!」ということをSNSで発信したら、知り合いの海外のキュレーターから「その写真を送ってくれ、展示作品に追加したい」と連絡が入りました。彼はこの作品自体はまだ見ていないので気が早過ぎです(笑) 私から「仕上がるまで2日待って」とお願いして、後日約束通りデータを納品できました。

「鉄は熱いうちに打て」という言葉がある通り、相手の方が盛り上がってくれたときはなるべく早く対応することが大切です。人間ですから時間が経ち過ぎると熱が冷めてしまうことも考えられるからです。

実はこれができないアーティストが意外に多い。でもなぜか言い訳はすぐ出る。それはダメです。皆、毎日大変なのは同じです。ファインアートフォトの世界は突然にお願いされたことでも二つ返事で了解し、約束通りのことがちゃんとできる、又はプラスαのことが提案できる人が信頼関係を得て成功すると思います。普段の仕事と何ら変わらない世界なのです。

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