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「遠くへたどり着く方法」①_Googleが採用しているOKR(2024/6/3 #60)

以前「のり漁師ピアニスト」の話を書いています。困難な目標(ピアノのプロも敬遠する難曲を演奏できるようになる)を掲げ、達成し人生変わっちゃった人の話です。

この「困難な目標」を達成するための手法として「OKR」というものを導入する組織が増えてきているそうで、今回それについて学んでみたのと、手法よりも大事なことがあるのではと感じたので、そんなことを書いてみます。


OKRという手法と、それまでの手法の違い

今回学ぶにあたり参考にした書籍は『Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR』という本。

OKRとは目標(Objectives)と主要な結果(Key Results)の頭文字を取ったもの。「目標」はイメージできますが、主要な結果は耳慣れないかもしれません。「目標達成の手前でクリアすべき条件」といった感じでしょうか。

本書では「挑戦的な目標」を立て、目標達成のために必要な「主要な結果」を数個設定し、それに集中する(それ以外のことはやらない)ことによって「ムーンショット」(困難であるが実現すれば大きなインパクトが期待される野心的な目標)も実現することができるとしています。

これまでの目標管理(Management by Objectives、MBOと略されるそうです)は①「何を達成するか」のみを規定し、そのために必要な条件などは意識されていなかったこと、②業績評価と連動してきた結果「小さな目標」を設定しがちといった課題があり、OKRはそれらの点でMBOとは異なるそうです。

OKRらしき世の中の事例

主要な結果(Key Result)は測定可能なものに設定すべし!とされてます。

以前取り上げた「のり漁師の徳永さん」であれば、Object=「ラ・カンパネラを演奏する」であり、Key Result=「〇か月先までに、第〇小節までの鍵盤をYoutube見て、叩けるようになっている」(そしてそれに集中するために、それまでの余暇時間でやっていたパチンコをやめる)という感じかもしれません。
これであれば到達したかどうかを判定できるわけです(実際ご本人がそうしてたかはわかりませんが・・・)。

メジャーリーガーの大谷翔平選手が「マンダラチャート」というツールで、中央に「ドラフト1位8球団競合」という目標を設定し、その周囲に、そのために必要な条件(体づくり、コントロール、人間性、運など)を記載していたことは有名ですが、これもOKR的な考え方と言えそうです。

出典:https://digital-jinzai.mhlw.go.jp/useful/34741/

私個人であれば、以前「ジブン株式会社の設立趣意書」を書いており、これの①~③がObjectだとして、④がKey Resultという感じかもしれません。

①「豊かな自然環境を子ども・孫の代まで維持する」ことと「豊かな暮らし(衣食住に困らない、文化的な営みができている)」を両立させる。
本業での活動・会社外での活動・投資、寄付などを通じ、これに貢献する。


②家族それぞれが自己実現できるような家庭運営に取り組む。

③現在の本業、くらしの活動拠点である都市に住みつつ、旅行などを通じ自然環境や、地域の文化に触れあう。 

④ ①~③を実現していくために日々「学び」「一緒に活動していく人とのコミュニケーション」「ユーモア」を大事にしていく

ジブン株式会社経営の趣意書より抜粋

④が測定可能になっていないのでKey Resultの要件を満たしていないのですが、例えば「学びのためにnoteを2024年末までに〇記事書き上げる」といった形にすると、測定可能になりますね(設立趣意書もブラッシュアップしないとですね・・・)

本書ではOKRを使用した海外企業・NPOの事例を取り上げ、OKRの中身を解説しています。多くの人が知っているサービスであれば、グーグルクロームやYoutubeが大きく成長するプロセスも紹介されています。

OKRを使う上で大事だと思ったこと

OKRっぽい事例(私のはともかく)を取り上げてみましたが、これを組織に適用していくうえで重要なことがあると感じています。

それはメンバーが駆動されるような、ワクワクするObjectを立てられるかどうかということです。

「挑戦的」のところを「2025年までに売上〇〇億円達成」「財務指標の□□が△%になっている」とか、事業の結果としてもたらされる数字のみで語ってしまうのが日本の組織では起こりそうな気がしています。

もちろん企業であれば、事業の数字目標は重要です。
ただ「その数字が達成されたとき、世の中はどうなっているのか?」ということが提示されていないと、メンバーは挑戦的な目標を遂行するモチベーションがわかず、日々の給与・生活の安定のために粛々と過ごしてしまうのではないでしょうか。

本書の内容で、私が最も印象的だったのは以下の一節です。

イノベーションは組織の中心より、端っこから生まれることが多い。最も価値のあるOKRは、たいてい役員フロア以外から出てくる。アンディ・グローブはこう語っている。「最前線にいる人々は、目の前に迫った変化にいち早く接する。営業担当は経営陣よりも早く、顧客ニーズの変化に気づく。」

出典:Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR

「最前線にいる人々は、目の前に迫った変化にいち早く接する」というのは、営業現場にいるとよく感じるところです。
そういったメンバーを駆動させるのに「自分たちは社会にどういった変化をもたらすのか?」といったことを示す必要があると思います。

ワクワクするObjectを設定するのに何ができるか?

ではどうすると良いか?
山口周さんの著作『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』では経営における「アート」「クラフト」「サイエンス」のバランスが論じられています。

「アート」は、組織の創造性を後押しし、社会の展望を直感し、ステークホルダーをワクワクさせるビジョンを生み出します。「サイエンス」は、体系的な分析や評価を通じて、「アート」が生み出した予想やビジョンに、現実的な裏付けを与えます。そして「クラフト」は、地に足のついた経験や知識を元に、「アート」が生み出したビジョンを現実化するための実行力を生み出していきます。

出典:『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』

ワクワクするビジョンには「アート」、「美意識」、「言語化できないもの」を取り込んでいくことが重要です。

今回読んだOKRの本も、外国企業の事例が多く、まさに「アート」を学んでいる人たちが多いと推察されますから、OKRと相性が良いのかもしれません。

とはいえ、「ワクワクするObjectを立てられない」といって動かなければ、遠くに行くのはおろか、現在地から動くこともできません。
ということで先ずは、現在の自分にとって少しでもワクワクするObjectを立て、そのためのKey Resultを設定して取り組むことが大事です。

そのうえで、Objectが変だなと思ったら見直し軌道修正していく、そんな感じの使い方が良いと思います。

***

ということで今回は「遠くへたどり着く方法①」としてOKRについて書いてみました。
私としては聴き慣れない用語でしたが、皆さんいかがでしょうか。何かご参考になれば幸いです。
②についてはまた別の書籍を題材に書こうと思います。ではまた。




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