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キンモクセイに会いたくて

道外へ出かけた時の楽しみの一つ。それは、北海道で見たことのない花・植物との出会いだ。

1月。え?冬なのに、木に実がなっている・・あ!みかんだあ!

旅館の中庭に、地面からたくさんの緑の棒?木? もしかしてこれが、「竹やぶ?」。(こういうところで、かぐや姫は生まれたんだ・・と、やけに納得する。)

奈良県を訪れたときには、道ばたの畑に見たことのない作物が・・・長ひょろいハートのような形の葉を持った作物・・・ああ、これがサトイモかぁ!
 
そんな私だが、今だ、見ることが  かなっていない植物が2つある。
それは、ヒガンバナとキンモクセイだ。
 

1 ヒガンバナ

ヒガンバナを見てみたいと思ったのは、たぶん小学校の低学年のころではなかったろうか。
雑誌か絵本かも覚えていないのだが、とにかく何かの本にヒガンバナを使った遊び(工作?)が載っていた。

茎をさいて、数珠じゅず状にして、かんむりか花かごか(記憶があやふや)を作るその遊びが とても心に残り、私もやってみたい、どこかに ヒガンバナが咲いていないかなあ と 思ったものだ。

そして、おそらく小4の教科書にのっていた「ごんぎつね」。ごんが、兵十の母親のお葬式に気づく場面で出てくる「ひがん花」。

今、「ごんぎつね」を読み返すと、ひがん花が出てくるのは、ほんの一瞬だった。しかし、私の中では「ごんぎつね」=「ヒガンバナが出てくる話」としっかり記憶されていた。

ヒガンバナには毒があり、虫よけ・動物よけに田んぼの周りに植えられるとか、別名が曼珠沙華というとか、あまり縁起がよくない花と言われることもあるとか知ったのは、もう かなり大人になってからだ。

そして昨年読んだこの本。

宮部みゆきさんの 三島屋変調百物語シリーズの一巻目。
17歳のおちかが、「変わり百物語」を聞く話。

その1話目の題名が、まさに「曼珠沙華」

おちかが身を寄せる三島屋の裏庭には どういうわけか、ひと群れの曼珠沙華が 根をおろし花を咲かせた。毒もあり 忌み嫌われることもあるこの花を三島屋の主人伊兵衛は「彼岸花は むしろふさわしい」と そのままにさせた。

ところがある日、その曼珠沙華を見た来客が突然、血の気が引き、今にも倒れそうになった。
「私は あの花が怖いのです。怖くて怖くてたまりません」と、言ったその客が語った 過去の出来事とは・・・

なかなか ぞくぞくするお話でもあり、私の中で、さらにヒガンバナが強く印象づけられた話でもあった。


今回、この文章を書くのに、ちょっとヒガンバナのことを調べてみようと思って この本を借りてきた。

全国各地、ものすごくたくさんの別名がある。
花が咲くときは 葉っぱがなくて、花が終わってから葉っぱがでる。
球根は毒にも薬にもなる。

など、知らないことがいっぱいあった。

ますます 実物を見てみたくなった。


2 キンモクセイ

秋に花をつけるその樹木は、その季節になると、遠くからでもその香りが ただよってくるという。

また、この香りは、家庭用の様々な芳香剤として使われているとのこと。そういえば、「キンモクセイの香り」と書いた商品が売られているのは見たことがあるし、たぶん嗅いだことはあると思うのだが、ピンとこない。

北海道にも、あま~い香りを出す ニセアカシア (別名ハリエンジュ マメ科)という木がある。花が咲く6月ころ、我が家の周りにもいい香りがただよってくる。どこにその木があるか わからないのだけど、どこからともなく ただようその甘い香りに、ああ、もうそんな季節になったのだなあと思う。

で、キンモクセイだ。
いいなあ 実物の樹木を見て、その香りを体験してみたい。
 
この季節、noteでもたくさんの方が金木犀にかかわる記事を書かれていて、ますますその気持ちは高まってくる。

その中で sakuraさんの「金木犀の咲く頃に」という記事。 

 
金木犀の変種だと言われる「銀木犀」が出てくるお話「星の花が降る頃に」も 紹介されている。
中学生のころの悩みや心の動きが、ていねいに描かれているお話で、こういうお話に、教科書で出会えるのは、なんてすてきなのかと思ってしまった。
そして、金木犀だけでなく、「銀木犀」にも出会いたくなった。

 

北海道にキンモクセイは自生しないと思っていたが、題名にひかれて手に取ったこの本の舞台は北海道。

北海道の 中高一貫校の女子校を舞台にしたお話。
 
東京出身の宮田は、家庭の事情でこの中学部に入学するが、頭が良くプライドも高い宮田にとって受け入れがたい進路だった。
地元出身の奥沢は、優秀な上、人目をひきつける美少女だった。しかし彼女にも 人に言えない秘密があった。
お話は、この二人を中心に、中・高と一番多感である時期の 心のゆれや葛藤が えがかれている。 


題名に「金木犀」とあるからには、金木犀が生えていると思うのだが、舞台はどこだろう。道南のほうなのかなあ・・などと思いながら読み進めた本だった。

「北海道には 自生しない木なんじゃないの。寒いから」
「人の手で植えたから咲いてるんじゃない? 記念植樹したんだって入学式で、言ってたよ。」

やはり「植樹された木」という設定だった。

「キンモクセイって寒さに弱くて 普通は 南東北より北では 育たないものなんですよ。人の手で植えたにしても、よく元気だなと。一種の奇跡ですね。」
「奇跡だなんて 言い過ぎじゃないですか?」
「全然 言い過ぎではないでしよ。奇跡っていうのは、ああいうのを 指すんです。人が思うよりもずっと この世で 奇跡は起きている。

「人が思うよりもずっと この世で奇跡は起きている。」
なんだか、力をもらえたフレーズだった。
 

キンモクセイに会いたいと思いが通じたのか、先日この記事を見つけた。なるほど、札幌でもキンモクセイに出会えるところがあるんだ。

行きたいところが またひとつ増えた。



読んでいただき ありがとうございました。