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【まいぶっく19】食べ物の記憶~あっちゃん あがつく

小学校にあがる前のことだった
母の料理の本をながめていた私は、ある見たことのない料理に目がとまった。

お こ の み や き


「おこのみ」
って 何だろう?

「ねえ これ作って」と 母に頼む私。

返ってきた答えは

「それ、おいしくないよ」

「・・・・・・・」

こうして私と「お好み焼き」の出会いの道は、閉ざされてしまったのだった。


* * *

私が「お好み焼き」と出会うのは、それから10年以上もたって、札幌に暮らし始めたときだった。

初めて、お好み焼き屋に入る。ドキドキ。
カウンター席の前には、鉄板が広がる。

頼んだのは「豚玉」。

お子さんを背負ったお店の方が、小さなお椀で、材料をしゃかしゃか かきまぜ、私の目の前の鉄板に広げる。
かたずをのんで見守る私。

ひっくり返す。

両面焼きあがったと思えるそのとき、店の方は、お好み焼きに、ソース と マヨネーズ と かつお節をかけたのだった。

えええ ソース と マヨネーズ !!!
そんな組み合わせあるの!!!

おそるおそる お好み焼きを 口に運ぶ私。

「お、お、おいしい!!」

ソースとマヨネーズの組み合わせ 最高!
お好み焼きは おいしいものだったのだ


* * *

さて この本、
「あっちゃん あがつく アイスクリーム」
から始まり
「いっちゃん いがつく いちごじゃむ」
と いうように、あいうえお順に
「○ちゃん ○がつく 食べ物の名前」と 続いていく絵本。

「あいうえお・・・わ」で 終わらず、「がぎぐげご・・・ぱぴぷぺぽ」も入っている。(「ん」もある)

声に出したときのリズムがいい。
(子どもなら 暗記してしまうだろう)
知らず知らずのうちに、自分勝手なメロディーまでつけて歌ってしまう。

チョコレートがいっぱいあったり、手巻き寿司が踊っていたり、ページをめくるたびに笑顔になれる絵本。
それぞれのページの登場人物・・・もとい、登場「食べ物」たちの会話もきこえてくるようだ。
どのページから見始めても その楽しさに変わりがない。

「おっちゃん おがつく おこのみやき おいしい」 
などのように、好きな食べ物を使って、自分で文章を作ることもできるだろう。

小さなお子さんが、この本を手に取り
「あっちゃんあがつく・・・いっちゃんいがつく・・・・」
と 声に出して読んでいるのを見かけたことがある。
おそらく、ひらがなをまだ完全には読めないようだ。よく聞くと、どうも自分で絵に合わせて文章をつくっている。
 (こんな楽しみ方もできるのね。)と、にこにこしながらその場を離れた私だった。 


「おこのみやき」を、食べてみたかったあのころの私が、この本を読んでいたら、食べたいものがたくさんあって、母に、
「これ つくって」「これ 食べてみたい」と 次々にリクエストしたであろう。

ちなみに、今、母は お好み焼きが大好き。
あの時、「おいしくないよ」と 言ったのは、実は食べたことがなく、さらに作るのが面倒だったからだそうだ。


あっちゃんあがつく
 さいとうしのぶ作
 みね よう 原案
 リーブル 2001年


読んでいただき ありがとうございました。