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世の中は 面白い本で 満ちている ~2021年4月に読んだ本から

読んだ本を忘れないため、毎月、読んだ本の中から 印象に残った本 を 記事にしていく4回目。(1月から始めたこの内容の記事、4回目ということは、もう今年も 3分の1を過ぎてしまったのね。)

4月に読んだ本の中から、印象に残った本。 今月は6冊。

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1「ただいま神様当番」青山美智子

ある朝、目を覚ますと腕に大きな「神様当番」という文字が! さらに 突然現れたおじいさん。自分のことを「神様」だという。
OL、男子高校生、小学生など、「神様当番」となった5人のお話。

5人それぞれが持っていた 悩みや不安。神様の登場をきっかけに、自分を見つめ直し、前向きに歩きだす様子は心地よい。ほんわかと 元気になれるストーリー。

最後の電気会社の社長の話で、しょっちゅう 会社のトイレを借りに来るおばあさんが出てきた。そのおばあさんは、家のトイレの電球が 切れているのに、それを直せなくて あちこちのトイレを借り歩いていたのだ。 

「交換しづらい所の電球が 切れた」「戸のたてつけが 悪い」など、ちょっとしたことでは、業者をよびにくい。不便なまま 暮らし続けるなんてことは よくある我が家。
実に 身につまされる場面だった。


2「生き物の死にざま」稲垣栄洋

昔、参加した「園芸」の講座。
深く印象に残っているのは、「植物は 子孫を残すために 生きている」ということ。「たくさん花を咲かせるために、花柄をつむ」理由が 納得できた講座だった。

この本には、セミ、ハサミムシ、マンボウ、クラゲなど様々な生き物の「死にざま」についてが、書かれている。これらの生き物も「子孫を残す」一点のために生きている。

「壮絶」と 言いたくなるような、死に方・子孫の残し方がたくさん。
読みながら何度も 「ふえ~~」「へ~」「ほ~」と声が出てしまった。

サケ 
産卵して 力尽きて死んでしまう 親サケ。でもその死骸すら、生まれてくる子どもたちに 役に立っているという。死骸は分解され 有機物に。その有機物を餌に プランクトンが発生。サケの子どもたちは、それを餌にする。

ベニクラゲ 
なんと、寿命がない何度でも若返り、生涯をやり直す。でもウミガメに食べられたらそこで死ぬ。

シロアリ
女王アリは 巣の引っ越しの時、用なしと思われたら 連れて行ってもらえない。女王アリは、卵を産むのに特化した体なので、歩けないのだ。

全く、世の中は 知らないことに満ちている。


3「伝説のエンドーくん」まはら三桃

市立緑山中学佼には、校内のあちこちに伝説のヒーロー「エンドーくん」にまつわる 落書き がある。
「エンドーくん」とは、何者? 6人の教師を主人公にする連作短編集。

子どものころ、大人は悩まないと思っていた。
でも、自分が大人になると、それは大きな間違いだということを思い知った。人間、いくつになっても悩む。

このお話の教師たちも、悩み、迷い、落ち込む。そしてまた顔をあげ、一歩進み出す。そのちょっとしたきっかけになるのが、「エンドーくん」の落書きだ。

「エンドーくん」は、「花子さん」のように、ただのうわさだと思って読み進めていったのだが、・・・・思わぬ「エンドーくん」の正体だった。

文庫版には、単行本にプラスしてその後のエンドーくんの話が載っているとのこと。読みたい。

この本は図書館で「児童書」の棚におかれていた本。でも、「一般書」の棚にあっても、違和感はない本だと思う。


4「消えてなくなっても」椰月美智子

ストレス性の病をかかえた「あおの」は、山の中で「キシダ治療院」を営む岸田節子のところで暮らすことになる。不思議な力がある節子は、妖怪も幽霊も見えるという。そこには一つ年上の「つきの」も暮らしていた。一緒に暮らすうちに、あおのの体調もよくなる。だが・・・

椰月美智子さんの作品は、「しずかな日々」 「純喫茶パオーン」に続く3作目。優しい空気感のお話を書く作家さんという印象。

ネットから離れ、テレビもほとんど見ず、よく寝る。深呼吸。広い家と広い庭。無心に草取りをする。
規則正しい生活を送りながら、ゆっくりと あおのが 回復していく。
「深呼吸」の記述のところでは、思わず私も深呼吸。ふーーー。

歩けなかったおばあちゃんが、歩けるようになったり、悪いものがついていた女性を救ったり、すごいパワーの節子さん。私もみてもらいたい。

この本は、帯に「まさかのラスト!」と書かれていたので、そのつもりで読んだ。

でも、本当に「まさか」だった。

私の中では、「2段階」での「まさか」だった。1つ目の「まさか」は、そこまで驚かなかったが、2つ目の「まさか」は、「ぅわ~ うそでしょ~~~」と声が出てしまった。


5「ハグとナガラ」原田マハ

「旅に出よう。」
人生最悪の時に届いた 学生時代の親友ナガラからのメール。それ以来、季節ごとに旅に出るハグとナガラ。三十代から始まったその旅は四十代、五十代と続いていく。

女二人、おもしろおかしく旅をする話だと思って 読み始めた。でも、そんな「旅行記」ではなかった。

さすが原田マハさん。心にささる場面がたくさん。特に、お母さんの話のところでは、身につまされることばかり。みんないろいろなことかかえながら、生きているんだよね。


6「死にたがりの君に贈る物語」綾崎隼


「ミマサカリオリは 心不全で 息を引き取りました」

突然、本人のSNSに 家族の代筆で 書き込まれた 死亡報告。人気小説家の訃報は、たちまち拡散された。

山中の 廃校に ミマサカのファンの 7人の男女が集まった。
未完の小説「Swallowtail Waltz」をなぞり、廃校で生活することで、作品の結末を探ろうとしたのだ。しかし、そこで事件がおこる。7人は一人減り二人へり、そして・・・。


ふだん読まない「青春ミステリ」というジャンル、知らない作者、表紙の絵。 ポプラブッククラブ の 配本じゃなかったら、私は、たぶん手にも取らなかった本だと思う。

正直、こんなに面白いとは思わなかった。
「え?」「どうして?」「なぜ?」と読むのを中断することができなかった。

結末も私には予想できなかった。
ずっと夢中になって読み、ほぼエンディングという段階、残り2ページで「ふー」と息をはいたら、その最後の2ページ「あとがき」で涙が出た。

全く世の中は、おもしろい本で満ちている。

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お気に入りの作家さんの 新しい作品を読むのは楽しい。「今度は、どんなお話なんだろう」と 期待でわくわくする。その作家さんがつくる世界にひたり、「やっぱりいいなあ」としみじみできる。

でも、名前すら聞いたことがなかった作家さんの作品で、心揺さぶられるというのも、これまた楽しい経験だ。
「新しい素敵な作家さんを 知ることができた」と 嬉しくなる。

今回、綾崎隼さんの作品がまさにそうだった。
ジャンルや、先入観にとらわれず、いろいろな本を読んでみようと思わせてくれた作品だった。
(こうして読みたい本は増えていく。)


読んでいただき ありがとうございました。