見出し画像

【まいぶっく30】本の幸せ~つづきの図書館

お話を読み終え、本を閉じる。

「この後、主人公はどうなったのかなあ」
「続編が出ないかなあ。」

などと思うことはよくある。

しかし、この「つづきの図書館」。「つづき」は「つづき」でも、

本の登場人物が、「その本を読んでいた 子どもたちのつづき」が気になる 

という物語。

はだかの王様が、

「おおかみと七ひきのこやぎ」の オオカミが、

「うりこひめ」のあまのじゃくが、

自分の本を読んでくれていた子どもたちの「つづき」が気になって、本の中から出てきてしまうのだ。

司書の桃さんの前に、突然現れた「はだかの王様」。
「昔、本を借りてくれた青田早苗ちゃんが、どうなったか知りたい。それがわかれば、きっと絵本の中に戻れる」と言うのだ。

驚きながらも、しぶしぶ青田早苗ちゃん捜しを始める桃さん。
一人暮らしだった桃さんは、王様といっしょに暮らすようにもなる。

しかし、ことはそう簡単にはいかない。

そうこうしているうち、王様は 青田早苗ちゃんが昔入院していた病院 にあらわれ、おおあばれ。

やっと青田早苗ちゃんが見つかって、早苗ちゃんの「つづき」がわかる。



めでたしめでたし・・・・


とはならず、王様は絵本には戻れない。

戻れないどころか、今度は、オオカミが目の前に・・・。


奇想天外で、どたばたありの 笑っちゃう話かと思って読んでいたら、そうじゃなかった。
最後に涙している私。


やられた・・・・・。

そういえば、伏線は最初から張られていた

主人公の桃さんは、離婚歴ありの40代という設定だった。
章ごとに桃さんが書いていた、近況を知らせる手紙も不思議だった。いったい誰宛て? なぜ出せないの?

人見知りで、自分のからにとじこもっていた桃さん。
しかし、絵本から出てきた人たちとの暮らしは、桃さんを変えていった。

「だれかの役にたつことができる と 思えるようになった。」
「だれかを好きになると、毎日がたのしい ということにも 気がつきました。」

その変化の様子は、手紙の内容が、どんどん変っていったことにもあらわれている。

もちろん、こどもたちも楽しめる本だが、大人が読むと また大人なりの読み方ができる一冊と思う。


王様が言っていた。

「一人の人間に 一生愛されて、その人間のそばにおいてもらえる本もあるじゃろ。そんな本は 幸せじゃ。」

逆に言うと、「一生そばにおいておきたい本」に 出会えた人間も 幸せだね。
 

つづきの図書館
 
柏葉幸子 作
 2010年 講談社



読んでいただき ありがとうございました。