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感情の数値化

見えないを見えるに!
可視化する道具はたっくさんあります!
どれを選んだらわからない!
そんなあなたに当社の開発した錠剤をご紹介したい。

社長だかなんだかの偉そうな人が企業マークの前に立ち、ものすごい笑顔でテレビの中で大声をあげる。
ー見えないを見えるように?
ーなにが見えるんだろ。
ーどうせなら彼の気持ちとかだといいなw

こたつの中から這い出て郵便受けを確認に行く。
さすが年末。歳末セールだなんだのDMが大量に来ている。
その中に先程のCMの会社からの白い封筒を見つけた。

『㈱   i  』
アルファベット一文字の『i-アイ-』という会社。
最近上場したとかなんとかで、ノリに乗っているらしい。

《モニター当選》

白い封筒には赤文字で当選と書いてある…。
しかし、なにか応募した記憶はない。
不思議に思いながらこたつに戻り封を開けると
折りたたんだ紙と錠剤が入っていた。紙をひらいてみる。

ーーー
錠剤を飲むと、数時間
見えないものが見えるようになります。(数値化)
注意、モニター品の効果は3分。

「はぁっ?」
思わず声に出た。
どういうことか解らない。
わからないくせに、錠剤を手にとっていた。一粒取り出す。ただの薬。物は試し!好奇心が強く後押しして、目の前に置いてあった湯呑でぐいっと飲み込む。飲み込んだあとにすぐに後悔した。
何を見るのか決めてない!
慌てて、目の前のみかんを見つめる。
ーあ、みかんの糖度でも……
そう思った瞬間に「ピピッ」と体温計のような電子音がした。それと同時に山積みになったみかんの上に数字が見える。「11」と見えるものと「12」と書いてあるものがある。すぐにわかった。糖度が数値化して見えたのだ。
ーじゃ…じゃぁ、次はこたつの温度…「ピピッ」
机の真ん中あたりに「38」四隅のあたりに「31」と見えた。
なるほど、と思っていると3分過ぎてしまっていた。

なかなか面白い。
残りの錠剤は7粒。21分か。何を調べてみよう。。さっきの自分の思考が思い出される。
ー彼の気持ち…。。
きっと彼を目の前にしないとこれは効果がないのだろう。最近何かと理由をつけて会えないと言われてしまう。
冷めてきたのかもしれない。フラれてしまうのかもしれない。彼の気持ち…知りたくないけど、知りたいとも思う。
一粒飲み込み、彼の写真を手に取り、「彼の私への感情」と念じてみた。「ピピッ」ーError。
やはり、実物でなければ駄目なのか。残り6粒。あと一粒実験に使わなければ。感情がどう表示されるかを調べねばならない。10点満点か、100点満点か、それともパーセンテージなのか。
それは、近くに住む妹で実験することにした。
ー妹の私への信頼度。「ピピッ」86。
おそらくMax100だな。なかなかいい点数じゃないか。点だろうがパーセンテージだろうが、そのあたりはどうでもいいか。
よし、とうとう彼に試すときだ!

あえないと言う彼。
仕方ないから会社の前で出待ちする。
柱の影から彼を見つけ、ストーカーのように追いかけた。
後ろでコソッと錠剤を飲んで念じる
ー彼の私への想い「ピピッ」99
ーえ!やだ!99?!
ー99だよ!私、めっちゃ愛されてるじゃん!
彼の隣を歩く同僚の上には「0」と表示されていた。

ルンルンで帰路につく。もうこの薬いらないかも!なんて思ってゴミ箱に投げ入れた。

その日の夜、彼が突然家に来た。
近くによったからだそうだ。
少しだけ緊張した顔をしているような気がする。
プロポーズでもされるのかしら?なんてのんきに思っていたら、お腹が急に熱くなった。
見上げると、彼の顔は嫌いなものを見つめるような、蔑むような顔で歪んでいた。
ー愛する人を見る目じゃ…なぃ…?なんで…?
彼が握りしめるものを私から引き抜く。
生ぬるい液体が流れ滴る。意識が遠のいていく…。
ーあれ…?なんで…?

痛みに耐えられず、何かを掴もうとして倒れた。ゴミ箱が倒れ錠剤と、最初に見た説明書らしきものが飛び出してきた。

ーーーー
錠剤を飲むと、数時間、
見えないものが見えるようになります。(数値化)
注意、モニター品の効果は3分。



人に対して使う場合、負の側が数値化されます。
効果には個人差があります


ー最後まで読めよ。私。



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