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想像力が引き起こすあらゆること|アラン「幸福論」(5)

こんにちは📚

お盆休みの方も多いと思います。いかがお過ごしでしょうか?

さて、引き続きアランの「幸福論」について解説していきます。今回は「情念」によりもたらされる弊害と対処について。

情念がもたらす想像力

 タイトルで「想像力」としましたが、ここでは特に「情念(※)」がもたらす想像力を意味します。

※デカルトが、次の6つの感情を包含した言葉として定義しています。
 6つの感情とはすなわち「驚き、愛、憎しみ、欲望、喜び、悲しみ」です。

 さて、人間が日常的に感じる情念は、自分の精神の中で活動します。それがすなわち想像力になります。現実に生じた出来事や人から受領した言葉に対して周辺の事象や概念、自分の持っている観念と「繋ぐ」ことでその出来事や言葉を想像力によって「解釈」、つまり意味づけをしようとします。

 その人なりの「メガネ」を通して出来事に意味づけを行うので、同じ事象に対する受け取りが異なることがよく起こりますよね。

 この想像力を、アランは、次のように表現しています。

想像力というやつはタチが悪い。
やつは恐怖の量を塩梅し、グルメが料理を味わうように、
私たちが恐怖を味わうように させるのだ。
「幸福論」(アラン)

 特に人は「恐怖」を増幅する側に解釈しがちだと言われます。これはベストセラーになったFACTFULLNESSでも「恐怖本能」として紹介されており、人間の防衛本能なのです。

 そして、次のような例でもって、このやっかい者を表現しています。

褒められると、馬鹿にされているとみる。
親切にされると、侮辱されているとみる。
秘密を打ち明けられると、まったく腹黒い謀りごとがあるとみる。
こうした想像力の喚起する病は、つける薬がないのだ。
「幸福論」(アラン)

あるがままに受けとめる

 では、このやっかい者、どうすれば良いのでしょうか。

大袈裟に考えないで、ものごとをあるがままに見てみよう。
実際、幸福であったり不幸であったりする理由は大したことではない。
いっさいは私たちの肉体とその働きにかかっているのだから。
「幸福論」(アラン)

上に示した言葉のように先入観を持たずに物事を受けとめよ、と言っています。
 想像力は、常に頭に潜んでいます。それは人間の人間たる所以であり、否定すべき者ではありませんが、上記の通り人間を生きにくくしていることも事実です。

 特に恐怖心からくる想像力は抑制したほうがむしろ精神的な安定を得ることができます。物事を客観的に、あるがままに受け止めてみることで不幸感を緩和することができる、そのような主張です。

 そして、前回の記事の「不機嫌」という感情を引き起こし、周囲に悪影響を与えるため注意が必要です。また、自分ではなく対峙する相手が想像力豊かな場合は自分に火の粉が降りかかる可能性があります。



 そんな時、相手に、いくらこちらが冷静になって「あるがままに受けてみよう」と言っても聞かないことはよくあります。これに対しては私自身もまだ答えはありませんが、そのような状況を察知して巻き込まれないようにしうるか、相手がそのような不安を起こさないように配慮すること、くらいでしょうか。この幸福論に関心を持ってもらうと良いのですがね。。。


ではまた!

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