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これからの「新時代のヒットコンテンツ」に必要な“キー”について考えてみた

先日参加した「『メモの魔力』発売2周年記念オンラインイベント」では、前田裕二さん(SHOWROOM代表取締役社長)と箕輪厚介さん(幻冬舎編集者)のお二方によるトークショーが行われました。今回はそれを通して感じたことを綴りたいと思います。2019年に1番売れたビジネス書である『メモの魔力』ですが、今年2020年も年間ベストセラーに入るなど、その勢いは留まることを知りません。時代の移り変わりが激しく、出版不況の現代において人々に長く愛され売れ続けているビジネス書である同著は本当にあっぱれです。

コロナ禍における「おうち時間」の増加によって、人々の“可処分時間”は格段に増えました。それに伴って各業界、特にエンタメ業界はビジネスモデルの転換が急務となり、テレビでは懐かしの過去ドラマを地上波で再放送したり、アーティストはオンラインライブを加速させたりと、各所でさまざまな創意工夫のコンテンツ展開がなされています。本や雑誌についてもしかりで、おうち時間で読書に勤しむ機会が増えた方も少なくないと思います。しかし、不要不急の外出を控えることがスタンダードな今、リアル書店に足を運ぶことも減っているのではないでしょうか。本や雑誌自体はAmazonはじめインターネットで購入できますので、自分が欲しいと思ったコンテンツは簡単に入手することができますが、リアル書店ならではの“偶然の出会い”の機会が失われていることは重大な機会損失だと思っています。書店に足を運ぶと、「面陳」「差し」「平積み」といった、そこに並べられている本を何気なく目にすることで「お、これおもしろそう!」や「これは勉強になりそう!」といったように、そこへ足を運ぶまでは思ってもいなかった本との出会いがあります。そして、その良書との出会いによって、自分にとって新たな血や肉となる「知識」や「発想」を吸収することができるのです。

コロナ前からそうではありますが、今の時代、本は「PR」が非常に重要です。どの業界、どの商品・サービスでも同じですが、「良いモノを作れば売れる」といった時代ではないため、世の中に需要のある良いモノを作るのはマストで、その先のステップである“良いモノをいかに多くの人に深く刺すか”が大切なのです。そのためにはテレビをはじめマスメディアで紹介してもらう、SNSで細やかに情報発信したり双方向のコミュニケーションをとる、オンラインオフライン問わず、イベントで認知度アップや魅力の訴求に注力するといったことが重要です。その点で、前田さんの『メモの魔力』は本自体のオシャレな装丁や書いてある内容の価値・魅力はもちろん、PR戦略が秀逸だと感じます。

コロナ禍になる前まで、前田さんは“足を使った地方講演”を大切にしていました。『メモの魔力』という魂を込めた本をただ書店で販売して売れるのを待つのではなく、自らTwitterでメモ魔塾生をはじめ、生活者に対して情報発信をおこなったり、テレビや雑誌に出演して生の言葉でPRしたりはもちろん、地方へ出向いて講演をすることで、熱量の高いPR活動をおこなっていたのです。先日のトークショーで前田さんが語っていた「当時高校生だった子が、今大学生になってSNSで『メモの魔力』をPRしてくれている」というエピソードは心に刺さりました。泥臭くリアルな現場で生の言葉で自分の想いをコツコツ伝えてきたからこそ、それを聞いた一人一人にしっかりと想いが伝播していたのだなあと。これからの時代は広く知らしめることに加えて、「一人に深く刺さる情報発信」がより重要になってくると考えています。前田さんのおっしゃっているコンテンツを流行らせるうえで大切な方法である「“身近”と“偶像”」の体現であり、「時間を使って“身近”にさせたうえで爆発的に刺さる場を作る」ことで人々の心に刺さるコンテンツが生まれるのではないでしょうか。

前田さんが考える“新しい音楽番組”

これからのコンテンツづくりにおいて前田さんは「TVで音楽番組を作りたい」とおっしゃっていました。それも、ただの音楽番組ではなくOA内容の70~80%はドキュメンタリー(「アナザースカイ」(NTV)のような)だというからワクワクします。普通、新しいアーティストが音楽番組に出演して楽曲を披露すると、それを観た後に視聴者がそのアーテイストを調べて、生い立ちや経歴を知ることとなるのが多いと思いますが、前田さんはその番組の前段部分に力を入れ、そのアーティストの生い立ちや、楽曲が生まれるまでの背景に時間を割くというのです。そしてたっぷりと「ストーリー」部分を視聴者にインプットしたうえで最後に実際に歌唱パートとなる。これは、視聴者が同じ楽曲を聴くにしても感じ方に大きな差が生まれて大変面白いと思います。「ミュージックステーション」(EX)のような息の長い音楽番組が少なくなった昨今において、ぜひとも前田さんの構想する次世代型音楽番組が実現することを心から願っています。

「ストーリー性」で人々の心に“深く刺す”

2020年は未曽有のコロナ禍で、私たちの仕事や生活は大きく様変わりしました。今までの「当たり前」が崩壊し、各々が新しいビジネスモデルや生き方にシフトする努力を日々続けています。そんな中、売れ続けるビジネス書『メモの魔力』をきっかけに、私が感じたこれからの新時代のヒットコンテンツのキーは「ストーリー性」だと考えています。エンタメにおいて人々はその作品や人物の「背景」や「生き様」といったストーリーに共感を得ることで心が揺さぶられて応援したいと思います。単にできあがったコンテンツを発信するだけでなく、そのコンテンツが生まれるに至ったストーリーや、作り手の「想い」や「熱量」をしっかりとPRしていくことで、人々の心の琴線に触れることができ、他にはない唯一無二の価値を届けることができるのではないでしょうか。

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