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言葉にできないことは、花で言え。2/3

 ふとその時少し先に同じ制服を着た少女がわたしを見つめているのに気付いた。細長い手足をした少女で今の時代には珍しくおかっぱのような髪型をして私を見つめている、制帽なのか白い鍔の大きな夏用の帽子をかぶってる、体形のわりに小さな顔をしていて、杏子の様のような大きな目をしている、中学生だろうか小学生だろうか思案していると彼女が微笑みながら、坂の途中で私がものを落としたという、そういって彼女は、その細くて長い指で、坂の登り口当たりの木を指さした、

 その時私は友人へのささやかな見舞いの品の小さな紙袋を一つ提げていただけで、その袋からは物は落ちそうにない、また普段からものを持たない性格で、今日もそれ以外は財布と携帯ぐらいしか持ってはない、そのどれもポケットに入っている、けれど彼女は私がそれを落とすところをこの場所から見ていたといい、何か黒い大きなものではっきりとはわからないけど、たぶん道路と歩道の植栽に落ちたんだろうという、礼を言いつつ彼女に再度確かめようとすると、彼女は微笑みながら、何も言わずに駆け足で坂を下りていく、私は目で彼女を追いかけようとしたけれどいつの間にか坂を下りる児童生徒たちの群れに紛れて分別がつかなくなってしまった。


何か落としたといわれればたとえそれがなんであろうと確かめざるを得ないのが心情である、彼女が指さしたあたりまで戻ろうととも思ったが、落とした確信も持てずまた、この暑さで再びこの坂を上るのが億劫でそのままこの坂を上りきることにした、登り切って病院の前まで来ると、古い大きな門柱と鋼製の門扉が夏の日を浴びて冷厳として立っていた。板野は思っていた以上に元気でリハビリ以外は全く無聊を囲っていた、けれどもさすがに病人を前にして長居もできす辞そうと思っていた時にふと先ほどの不思議な少女のはなしを向けてみた、するとそれまでのやや惰気そうな顔から突然生気紀を得たような顔になり、真顔で私をきっと見つめてこう話し始めた、

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少し前の作品です、ご感想をお聞かせいただければ幸甚です。

はじめは、2つに分けようと思っていましたが、意外に長かったので

3分割にしました。すみません、次回で終わりです。

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