女の恋は上書き保存、男の恋は名前を付けて保存 28
「襟足くらいまで、カットして、ショートボムにされた方が、凄く上品で、お客様にはお似合いになると思います。」
髪を、グレーに染めた、由香ぐらいの女の子が、鏡の中でそうアドバイスする。由香が言っていたのと同じことを言っていると思い少し驚く。
大きく三角形にカットされた窓から屈折した陽光が差し込み、ステンレスを多用したこのヘアーサロンでは、周りをみても、働いている人も、お客もみんな由香ぐらいの年齢だろうか、あるいは、もう少し上、姉の紗香くらいだろうか、自分だけが少し違う空間に、いるような気がした。
「ママ、絶対サロン変えた方がいいよ。」
先月、由香は帰宅すると、理佐の髪型を見てそういった、その日はいつものヘアーサロンへ行った日だった。由香は早速、自分が通っているヘアーサロンを紹介すると言って、スマホでその店のウエッブサイトを見せる。
「なんかね、少し老けて見えるのよね、今の髪型・・・・・」
由香は、理佐の髪型をみて、口を尖らせてそういう、彼女には独特の審美眼があるらしい。
「少し短くした方がいいよ、ママは顔が小さいんだしさ、多分その方が絶対に似合うわ。」
理佐はそんな若い人の使うところは自分には合わないわと言って、その時は断ったのだが、先週いつものサロンが、希望する日に予約が取れないとわかり、由香の話を思い出した。
夕方、大学から帰ってきた由香に話すと、嬉しそうにすぐに予約を取ってくれた。気に入らなければまた前のサロンへ戻ればいいじゃん、とこともなげに言いうと、
「絶対、かっこよくなるから・・・・・・。」
由香は、目を大きくして、力説した。
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今日も、最後までお読みいただきありがとうございました。
もう少し、続きます・・・・・
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