見出し画像

女の恋は上書き保存、男の恋は名前を付けて保存  44

  西銀座の駐車場に車を止めると、約束の時間まで少し時間があったので、少し有楽町を散歩して、待ち合わせの場所へ向かった。
 前に友人たちと、よく待ち合わせに使った、カフェが丸の内にあったのでそこを指定しておいた、ちょうど昼過ぎで、込み合っていて、店内ではなくて、外にあるバルコニーの席に案内された、静かではない場所の方が、寧ろ理佐には好都合だった、周りでは若い会社員達が、楽しそうに語らっている。秋の日差しが、案外眩しくて、鞄からサングラスを取ってかける。すると、横にいる若い会社員達が、一斉に、理佐を見る。
 

手持ち無沙汰でも、由香のようにスマホを触る習慣のない理佐にはこんな時、時間をつぶすすべがあまりない、いつもなら、本でも読んで過ごすのだが、生憎今日は持参してなかった。ふと思いついて、あの中学生たちへのテストを作ってみることにした、前に彼女たち作った、テストがすごくわかりやすいと、彼女たちに評判で、また作ってほしいと言われたことを思い出した。タブレットを鞄から取り出すと、前回のものをもとに、少し作り出す。
暫くして、パソコンに影ができたと思って、顔を上げると、そこに優弥が立っていた。
 

彼は、こんにちは、すみません、お待たせして 今日はありがとうございます、とあいさつすると、背負ってきたリュックを下して腰掛ける、白いシャツが、日に反射して少し眩しい、あの時着ていた同じシャツかなと理佐は、彼の服装が気になった。
理佐も、サングラスを外すと、こんにちはと返す、優弥の顔をみて、少し痩せたかなと思った。

葉山へ行って以来、こうして二人でゆっくり話すのは、初めてだった。
優弥の表情も態度も以前と全く変わらなかった、あの海岸での出来事がまるで、なかったかのようだ、彼は彼なりに、理佐へ気を使っているのかもしれないと、理佐には思えた。けれども彼の日焼けした腕を見るたびに、あの心地よかった海風と彼の抱瞼、そしてあの澄んだ青色を思い出す。


理佐は、この人ごみで、私がよくわかったわねと、優弥に聞くと、彼は少し笑って
 「遠くからでも、凄く目立ってましよ、サングラスして、凄くきれいな人がいるなぁと思ったら、理佐さんでした・・・・・・・あれっ? 髪?切ったんですね・・・・・・」
 理佐は、礼を言うと、女の人が髪切った事に気づいたら、すぐにそれをいうのよと冗談めかして、優弥に話す、何故ですかと、聞く優弥へ、女性はね、そんな変化を異性に気づいてもらうのが、一番嬉しいものなのよ、とおどけたように優弥へ話すと、彼は
 「なるほど、勉強になります」と笑って返す。

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


今宵も、最後までお読みいただきありがとうございました。


感想などもお待ちしています・・・・・・


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?