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四季と酒コラム:新型コロナの影響でいつもは高い食材が安い説

お世話になっている京都の八百屋さんが言った。

「今年は飲食店が軒並み休業してるから値が落ちてるわ。筍、安いで。普段はこんなんなかなか家庭まで回ってけーへんと思う」。

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と、家まで配達してもらった筍は、ずっしりと重くて茹で甲斐のある立派なものだった。

京都は筍の特産地だ。市内・近隣に良質な筍が取れるエリアが複数あり、春になれば多くの飲食店で、天ぷらや若竹煮やら「旬のメニュー」として提供される。もちろんスーパーにも筍は並ぶが、上等なものから飲食店や百貨店が買っていくので、普段手軽に買える筍は小ぶりだったりすることが多い。

しかし今年は飲食店・百貨店の需要がガタ落ちしている。京都新聞でもニュースになっていた。

確かに今年はスーパーに売っている筍が安い。パンパンに太くてでっかいやつがものすごく安い値段で売られている。体感だが、3割〜4割くらい安いものも珍しくない。

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件の八百屋さんから買った京都市北部、大原産の筍。左の大きなもので700円。残りのふたつは「昨日入ってきたやつやから1本200円でいいよ」だった。うそだろ。

市販品とは別物!まだ間に合うから筍を茹でよう

普段から自炊はしても、筍をまるまま買ってきてアク抜きはしないな〜という人もいるだろう。

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筍の穂先1/5ほどを切り落として、切り込みを入れ、生ぬか(もしくは米のとぎ汁)で1時間半〜2時間ほど煮る。煮たら冷めるまで鍋のなかで放置しておく。

やることは単純だが火にかけっぱなしになるため、ぶっちゃけ面倒だから。

ただ、せっかく時間があるゴールデンウィーク。まだ間に合うので、筍が売っていたらぜひ挑戦してほしい。

市販の水煮じゃなく、自分でアク抜きした筍はもう、本当に本当においしい。釧路に住む友人に送ったら、あのグルメ大国・北海道の民をもってして「世の中にはこんなに美味しいものがあるのか」という評価をもらった。

(東北から北はいわゆる「根曲竹」で、京都でとれる筍とは別物なんだよね)

まるまる1本茹でた筍は、部位によって食感が違う。硬い根元の方はみじん切りにしてカレーにしたり、すりおろして肉団子にしたり。

真ん中の部分はオールマイティで、炒め物・煮物なんでもござれ。

先っぽの柔らかい部分は、同じく旬のわかめと出汁でさっと煮るとか、シンプルな食べ方がいい。

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これは焦げ目がつくまで焼いた穂先をシンプルにオイル漬けにしたもの。そのまま出せば上等なおつまみになるし、春キャベツと合わせてペペロンチーノにしたらおいしかった。

また、いちから茹でた者だけが食べられる、珍味的な「筍の姫皮」。穂先のさらに先、皮がまだ硬くなる前の薄い皮の部分だ。

繊細な部位だから、市販品にはほぼ入っていない。シートみたいに薄いのに筍の甘味が詰まっていてめちゃくちゃおいしい。

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茹で上がった深夜、レンチンしたご飯に甘酢を混ぜて即席でお寿司をつくってしまった。ああ背徳。

ぼちぼちシーズンが終わるので見かけたらぜひ挑戦を。あ、でも京都は終わるけど土地が北になるともう少し後まであるかも。とにかく家ごはんクオリティが爆上がりします。

京都の例として筍をあげたが、みなさんの地域にも「普段は手に入りにくいが今年は安い食材」があるはずだ。おいしいものを安く食べたいなら、お店の人に尋ねてみてほしい。

魚介類もいいものが手に入りやすい

当然ながら魚介類も。普段はスーパーに売っていないものが流れてきたり、飲食店の人が買っていく魚介類が入手できたりする機会が多いと思う。

少し前に、漁業会社や漁協に関わる鈴木允(すずきまこと)さんが、スーパーで売っている刺身用のカツオについて書かれたnoteが話題になっていた。

私がよく行く近所のスーパーは、飲食店の人たちが仕入れに来ることも多く、季節のさまざまな魚が売られている。

「飲食店が休業している影響で、魚が安いってありますか?」と店員さんに聞くと「うちはそうでもないですけどね〜」という返事だったが、ひとまずこのホタルイカをご覧ください。

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398円なので激安というわけではないのだけど、でかい……!

1パック198円の激安ホタルイカも買って、大きさを比べてみた。198円のほうは、いろんなお店で見かける大きさだ。右が398円のやつ、左が198円のやつ。

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全然違う!!!

左が198円のホタルイカは「うんうん、食べなれてる味やね!」という感想だったが、398円の方は段違いだった。噛めば腹から大量の甘いワタがジャバッと出てきて、身も柔らかいし味も濃い。

「コレは……ええ店のやつやん……」と思わずニヤニヤ。こういうパンパンのホタルイカは、朝早いうちに仕入れに来たお店の人が買って行ってたんだろうなあ。

1匹で味わえる多幸感がハイレベルなので、398円でも良コスパ。閉店間際ならお安くなっててよりラッキーだ。質のいい食べ物ってこんなに味が違うんだ……と驚きだった。

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また、普段は見慣れた魚の切り身ばっかり買っているという人も、丸魚を買ってみるとか、食べなれない旬の魚を挑戦してみてはいかがでしょうか。

これは徳島産のアマゴ。3匹で580円だった。

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塩をすり込んでヌメリをとり、ワタを取り出したらホイル焼きにする。

味付けはレモンと、桜の塩漬け。新京野菜の「京ラフラン」をたっぷり加えてオリーブオイルをひと回し。ホイルでしっかり包んでグリルで20分。

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あーもうこんなんおいしいやつ〜〜〜〜。

淡白なアマゴの身にレモンの酸味と桜の香りが移って非常に美味でした。手間がかかるぶん丸魚はやっぱりおいしい。仕事が立て込むと、簡単な切り身や缶詰を使いがちだけど……。

できることが限られるから、せめて家で食べる

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先日は京都の高級食材 、琵琶湖の湖魚「本モロコ」が。本モロコが「近所のスーパー」で買える日があるんだな……。しかも子持ちで半額。

おそらくは全国いろんなところで、本来ならお店で使われていた食材が行き場所を無くし、廃棄されているのだろう。廃棄といえば事務的だが、それらはすべて誰かが育てたり獲ったりした生き物であり、命そのものだ。

廃棄されるのを救ってあげられて、そのうえ普段よりおいしいものが食べられるのだから調理のしがいもある。今年は叩き売りされている筍を見るたび「行くとこないならウチ、くるか……?」と連れて帰りまくった。

お店が休業していても、季節は待ってくれない。この状況下で一般市民ができることは限られる。だからこそ、家でおいしい旬の食材をたくさん食べましょう。

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