1時間だけお母さんに出会った~里帰り日記①~
「ここに並んでますか?」
里帰り中、乗り継ぎ駅の改札口で、そう声をかけられた。
小さくて、すこし訛りのある可愛いおばあちゃん。
「あ、いえ。もし急いでるならどうぞ」
「私ねぇ、〇●(駅名)まで行きたいんだけど、ここで合ってる?」
「私もそっち方面の電車に乗りたいんですけど、ホームが分からなくて」
駅員さんに聞こうと改札口に行ったのだが、意外と人が窓口に殺到していて、私も立ち往生していたところだった。
そんな会話をしていると、もうひとり駅員さんが増えたのを察して、おばあちゃんがいそいそと尋ねに行く。
2番ホームのようだ。
おばあちゃんの帰りを待って、一緒にホームに行く。なぜだか、ずっとそうしていたかのように。
聞けば、親戚のご不幸があって帰省するとのこと。
いつもは旦那さんの車で向かうのだが、現在体調が悪いため、おばあちゃんひとり旅になってしまったようだ。
「千葉からひとりできたんだけど、わかんないよねー」
「乗り継ぎ、面倒くさいですよね」
「特急が空いてないって言われて、もうー困っちゃった!」
自然と話をしながら、電車を待つ。
何度も「これって〇●に行くよね?」と聞かれるが、私も断言できるほど詳しい土地ではない。不安になったところで、アナウンスが「△▼行き」と告げた。(ちなみに、私は△▼で降りる)
「〇●行きじゃないみたいですよ!その前の△▼駅って言ってます」
「えー!!」
「もう1回、駅員さんに聞いてきますね!」
帰省とはいえ、私も慣れない駅だった。いつもは直通の特急に乗るのだけど、この日は時間が合わず2回乗り換えするはめに。
おばあちゃんとは、2回目の乗り換え駅で出会った。
「すみません。さっきのおばあちゃんが〇●に行きたいらしいんですけど、次の電車は行かないんですか?」
「次は△▼までなので、そこでまた待つ感じですね~」
「どのくらい待ちますか?」
「30~40分かな」(調べたら50分でした!)
そのまま告げると、わかりやすいくらいに落胆するおばあちゃん。
そりゃそうだ。私でもげんなりする。
ホームで私たちの会話を聞いていたのか、あるご夫婦が声をかけてきた。
「私たちも〇●まで行くので、一緒に行きましょう」
なんと!!やっぱり旅ってすばらしい!!
「良かったですねー!」
「ほんとだねぇ!ありがとうございます~」
結果、その電車最終の△▼駅までご一緒することに。
ご夫婦は、〇●駅よりさらにその先の温泉に行くとのこと。
声はかけてくださったが、意外とおとなしいご夫婦。着席してから結構質問したのだけど会話が弾まなかったので(文句ではありません!)結局ずっと、おばあちゃんとお話をしていた。
自分の言うことにすぐ笑っちゃう、可愛いおばあちゃん。
ふと、聞いてみた。
「今、おいくつですか?」
「いくつに見えるー?あーっはははは!!」
「出たーその質問!!笑」
聞いたら、私のお母さんと同い年だった。
……お母さんが生きていれば。
「え。そうなんですね!」
なんだか、勝手に泣きそうになる。
「私のお母さんが生きてたら、同い年ですよ!」
って言おうとしたら、本当に涙が出そうになったのでやめた。
もう80歳は超えているのに、まだ現役で仕事をしているおばあちゃん……いや、出会ったばかりのお母さん。年だから半年ごとの契約だけどね、と言っていたけどスゴイこと。
障害があるお子ちゃまたちと接する仕事で「みーんな、可愛いんだよー!」と、嬉しそうに話すお母さん自身が可愛くて仕方なかった。
一緒にプールに入ったり、遠足に行ったり。
短い時間の中でいろんな話をしてくれて、その仕事自体が本当に好きなんだなぁと、全身から伝わってきた。
「私もこうありたい」と、思わずにはいられなかった。
たった、1時間くらい一緒にいただけだけど、絶対忘れられない1時間。
千葉を朝8時に出て、お昼ご飯を食べそびれちゃったお母さん。
若くして結婚したお母さん。
仕事に誇りをもっているお母さん。
千葉に60年いるのに生まれ育った土地の言葉がとれないお母さん。
私に声かけてくれて、ありがとう。
お母さんは大変だったと思うけど、私は乗り換え旅にして良かった。
出会えて嬉しかったです。
最後「お母さん、元気でね」と、手を振り合って別れた。
無事に〇●駅につけたかな。今頃はもう、千葉で元気にセンターに通って、大好きなお子ちゃまたちと笑い合ってるんだろうな。
行きの時点でそんな人に出会えた4年ぶりの里帰りは、短くも濃い里帰りになったので、後日もうひとつnoteします。
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