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「リデザイン・ワーク」読書日記

新しい働き方は組織風土を変えるのか?

 「ワーク・シフト」の著者で世界的経営学者のリンダ・グラットンによる新著「リデザイン・ワーク」をあらためて読んだ。
 
 今、MBAスクールの「人材マネジメント」のクラスで、外部環境にあわせ、企業の戦略を作り、その戦略に基づいて「人を動かす仕組み」が人材マネジメント(HRM)であることを学んでいる。
 その中で、どんな戦略よりも「組織風土」こそが強く、他社からは絶対にまねのできないものである、ということもあらためて学んだ。そんな組織風土は、働き方が新しくなろうと、一朝一夕で変わるものではない

 ただ、新しい働き方にシフトするときに、経営層はその組織風土をよい形で維持しながらさらに社員のモチベーションを高まるような組織デザインがどのようにできるのかを考える上で、ヒントがたくさんある本だった。


在宅勤務でかえって広がるジェンダー不平等?

 リモートワークが選択できるようになり、会社としては業務を正しく実行してくれるならあとは自由にしてもらって構わない、という立場になった。家庭と仕事の間でどのように時間を割り振るかは一人一人の社員にゆだねられる。
 しかし、現実には、家庭で(無報酬の)仕事に費やす時間はどうしても女性の方が多くなりがち、と言われる。家族としての意思決定を行うときに、所得の多いほうのニーズを優先させる傾向にあり、男性は比較的計画しやすくて定期的な用事(毎週何曜日の送り・迎え/ゴミ出しなど)を担当することが多い中、女性は突発的で非定型的な用事(子供の突発の病気対応など)によって仕事を中断されることも多い。また、女性は在宅勤務中に仕事を中断される機会が多いだけではなく、頭の中で目に見えない家事(たとえば、子供たちのためのヘルシーな献立を考えたり、特性にあわせた子供たちの友人とのコミュニケーションについて考えをめぐらせたりと気を配ることが多い。
 女性としては、在宅勤務ができるようになっても、このような複雑な問題と折り合いをつけながら、仕事と家庭との間で自分が本当に集中できる時間を確保し、その時その時に集中すべきことを見極めていく必要がある。

会社がどれだけ本気なのか?がわかるとき

 働く時間や場所が自由に選択できるという、新しい働き方が採用されても、会社にとっての”世間体”だけではなく、その働き方が社員一人一人の自立性と創造性を高めることに、真につながっているのか。
 会社は口先だけで進めていないか?本気度は伝わっているか?
 経営層が社員の意見に耳を傾ける気があるのか、それはどのような形で示しているか。誰の声を聴こうとしているのか。

 働き方が新しくなろうとも、経営層が進めようとする、会社のビジョン、戦略がすみずみにまで伝えられているか、というのは別の話であることが理解できた。
 
 今、自分は「人材マネジメント」では人事制度や組織デザインなどについて学んでいるが、人事制度などの「制度」はあくまで道具。「働き方」は手段。仕組みを活用して、企業にとっては、ビジョンや戦略を実現することが目的となる。
 社員の立場から見ると、私たちは今この機会を利用して、仕事、同僚、組織との関係性を根本的に見直しながら、”企業の本気度”を見極める時なのだと感じた。
 

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