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映画『ジュエルペット スウィーツダンスプリンセス』&『おねがいマイメロディ 友&愛』感想

 かねてから観たいと思っていた『おねがいマイメロディ』と『ジュエルペット』の映画版DVDをついに手に入れた。

 過去のnoteでも書かせていただいている通り、個人的に『おねがいマイメロディ』シリーズと『ジュエルペット』シリーズはサンリオの2大傑作アニメシリーズだと思っているので、その2作品がセットになったこの映画版をファンとして放っておくことは粋な江戸っ子の血が許さねえのである。

 映画は2012年8月に2作品同時上映として公開されており、メインは『ジュエルペット』で、『おねがい』は13分程の短編作品となっている。時期的には『ジュエルペット きら☆デコッ!』(第4シーズン)放送中で、テレビの方でも映画に合わせてスウィーツペットのさくらんが登場しカッチカチに固まって錯乱していた。


 まず何と言ってもおいしいのは、別作品ながら冒頭でマイメロディ嬢とルビーの絡みが見れること。同じサンリオ作品による同時上映なのだから全然あり得ることとはいえ、両作品のファンとしてはまさに夢の共演である。大先輩であるメロディ嬢に対してルビーがびみょ~~~~~~~~~~~に気を使っているように見えたのは僕だけだろうか(それが面白かったのだが)。二人が去った後に登場するクロミ様とバクもこの冒頭1シーンだけで個性が伝わる相変わらずの空回り系悪役っぷりが見事だった。


 肝心の本編はまず短編の『おねがいマイメロディ 友&愛』から。

 マリーランドの湖のほとりでバーベキューをしに来たクロミ様とバク。そこにメロディ嬢も現れすぐ隣で豪華な具材を使ったバーベキューを始める。うっかり具材を忘れてきてしまったクロミ様とバクは何とかしてメロディ嬢の具材を奪おうとするが……というお話。歌ちゃんなどの人間キャラクターは未出演で、基本的にはメロディ嬢、クロミ様、バクの3人のみで進行していく。
 クロミノート、ウサミミ仮面(本人は出ない)、マイメロママの格言、メロディマークといった『おねがい』シリーズのおいしいところを13分の中でしっかり入れ込み、割と最近観た僕が言うのも変だがこの名作シリーズの様々なシーンを思い出しては懐かしい気持ちにさせてくれた。

 しかしそれ以上にこの『友&愛』を『おねがいマイメロディ』たらしめているのは、他でもない「わずかに孕んだ狂気」であった。

 ドタバタの楽しいギャグの中にあって、なぜかほんの少しゾッとするような、意図してのものかしてないのか微妙に読み取りづらい隠し味的狂気。この独特の作風こそが名作『おねがいマイメロディ』シリーズの醍醐味の一つなのである。

 そしてその主犯はやはりマイメロディ嬢。彼女の行動がまあまあぶっ飛んでいることだけでなく、それが天然とも計算とも取れるような、その深い瞳から真意が読み取れないところが視聴者にわずかな狂気を感じさせるのだと思う。個人的には笑うせぇるすまんに勝てそうなのはこの子くらいではないかとも思っている。

 そんな賛否両論分かれるタイプのキャラクター像を見せながらも結局可愛いマイメロディ嬢が僕は大好きだし、わずかな狂気も含めて「おねがいマイメロディここにあり」を13分の間に見事に示した『友&愛』は素晴らしかった。



 続いて『ジュエルペット スウィーツダンスプリンセス』。こちらはスウィーツペット達の住むスウィーツランドのプリンセス、マーナ姫のバースデーパーティでダンスを披露するためにスウィーツランドにやってきたルビー達と、いきなり空から降ってきた謎のスウィーツペット「パクくん」との友情を描いたお話。

 映画版らしい壮大なスケールの物語と友達想いのキャラクター達の純粋な心にストレートに感動させられる。終盤、映画館に来ている子供達にルビーが語りかけるシーンは、その状況を想像して和まされたと同時にそういえば自分は36歳のおっさんなのにサンリオ好きって一体何やってんだと危うく目が覚めそうになってしまった(何とか覚めずに済んだ)。

 監督は後に『ジュエルペット ハッピネス』(第5シーズン。現在は『ミュークルドリーミー』も手掛けている)を担当する桜井弘明監督なので、独特の小気味のいいテンポ感で進んでいく。

 キャラクターでいうと、まずルビーはシリアスシーンの印象もありやや真面目な感じ。とはいえドジっ子という面もあり、この手のお子様向けアニメの割と正統派主人公タイプといった雰囲気。あえて言うなら『ジュエルペット サンシャイン』のルビーに近いかも。
 意外と言うか灯台下暗しと言うか、テレビシリーズではほぼ不動のレギュラーであり当然ここでも出番そのものは多いサフィーとガーネットのキャラがあまり立っていなかったなという印象。同じく活躍自体はあまりないラブラ&エンジェラはそこらへんをパカパカ歩いてたまに何かしゃべるだけで個性が立つので。
 我が推しキャラクターであるダイアナは大勢の中の一人に甘んじていたが、ラストの全員でのダンスシーンにちらっと映っていたのがあまりにも可愛すぎて吐いた。
 ちなみにマーナ姫は芦田愛菜ちゃんが声優を務めている(意外とお上手)。

 テレビシリーズのような『おねがい』にも匹敵する破天荒さはここでは見られないが、サンリオアニメらしいストレートな優しさに満ちた心温まる作品で、皆の心が荒みかけている今この時期にこそ観て癒されてほしい。



 トータル的にはテレビシリーズのいいところを短い時間に詰め込んだ『おねがい』と、映画ならではの見せ方で勝負した『ジュエルペット』といった印象。どちらかと言えば気持ちいいくらいに『おねがいマイメロディ』だった『おねがい』に軍配を上げたいが、本当にどちらも素晴らしく、改めてこの2作品は僕の中でも特別な作品であることを実感させてくれた。少なくともストレートに友&愛しているのはジュエルペットの方である。


 何度も言っていることだが、今一度この2大名作シリーズが世の中で再評価される日が来ることを望む。


 延期になってしまっている新しいジュエルペットの映画版、例え赤い月に洗脳されようともいつまででも楽しみに待っております。



気が向いたらお願い致します。サンリオ資金にさせていただきます。