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20240615 時間をかけて、ゆっくり読む。

文章を読む、ということに関して、たとえば灘中学校でかつて中勘助の『銀の匙』を3年間かけて精読するという授業があったのは割と有名な話かと思う。一冊の本や一本の小説、あるいは戯曲をゆっくりと、そうして何度も繰り返し読むというのは結構楽しいものだと思う。

▼学生の頃、いくつかの戯曲をそのようにしてとにかく読んでみる、という授業があった。演劇のテクストをひたすら時間をかけて読む。小説やエッセイなどと比べて演劇の戯曲というのはとにもかくにもわかりづらい。読んでいて訳が分からなくて読むのをやめてしまった、というようなことも日常茶飯事である。

▼そうはいっても読みやすい戯曲と読みづらい戯曲とがあって、たとえばチェーホフの戯曲もどちらかというと読みづらい分類に入るかと思う。わかりやすい大きな事件もさほど起こらないし、登場人物がやたら多いし、ロシア語の名前(本名と愛称が入り乱れる)が日本人にとっては覚えづらかったりする。

▼「最初の登場人物紹介のページを引きちぎる。それを片手に持ちながら読む!」というのは、チェーホフの戯曲の読み方のコツを聞かれたときのとある演出家の方の言であって、蓋し名言だと思う。実際初見で読み始めようとするときに「まあでもどうにかわかるだろ」と自分を過信して読み進めようとすると、結構な確率で迷子になる。

▼演劇をやっているからといってどんな戯曲でもスラスラ読めるかといったらそんなことはない。まったくそんなことはない。チェーホフでもシェイクスピアでもイプセンでも、あまつさえ井上ひさしさんの作品でも初見だと「ああマジでわっかんねえな……」と呻吟しながら読んでいることの方が多い。

▼そうして個人的に時間をかけて読みまくった戯曲にチェーホフの『桜の園』がある。太宰治の『斜陽』の下敷きになっていたりもする『桜の園』は、身も蓋もない言い方になってしまうけれど、やっぱりおもしろい。時間をかけて読んで、ずっと心の片隅に『桜の園』がある、というのは「教養」というのとはまたちがう栄養として、自分の人生を支えていてくれるような気がする。経済効率なんか度外視して、そうして時間をかけて読むに足りうるのが古典、なのかなぁと思ったりもする。

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戸山公園野外演劇祭参加作品
『若き日の詩人たちの肖像』
2024年 5月17日(金)ー19日(日)
各日18時30分開演(17時45分受付開始・開場)
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於:戸山公園(箱根山地区)陸軍戸山学校軍楽隊 野外演奏場跡
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