平野流(ひらのながれ)

エッセイ、コラム、ショート小説などを書いていきます。 他に、読んだ本や観た映画などの感…

平野流(ひらのながれ)

エッセイ、コラム、ショート小説などを書いていきます。 他に、読んだ本や観た映画などの感想も書こうと思います。 好きなものは、猫、甘いもの、料理、自然、などなど。

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最近の記事

「悪い女」

追いかける恋が好きだった。ベッドに寝ている彼の背中越しに、生き様や世界観を見るのが好きだった。彼は売出し中のデザイナー。二人でおしゃれをして夜な夜な派手に遊びを楽しんだ。彼は華やかな世界に身を置き輝いていた。彼の創作の苦悩やプレッシャーをわたしは誰よりもよく知っていた。彼の目線はいつもわたしより遠くの夢を見つめていた。わたしは才能ある彼を愛していた。彼に心を傾け、彼の帰るところでありたいとずっと思っていた。 同棲して三年、わたしは三十歳を過ぎた。与え続け待ち続ける日々に疲れが

    • 猫を棄てる感想文・偶然というあやふやなものと必然というものの上にある存在

      「猫を棄てる、父親について語る時」は、父と、猫を棄てて来たのに、その猫は先回りして家で待っていたというエピソードから始まる。 このエピソードは、寺の息子として生まれた村上春樹氏の父が養子になることも視野に入れてよその寺に預けられたこととリンクしていて、その子供時代の心の傷が作品全体を通しての空気を作っている一つのキーとなっていると感じた。 春樹氏の父、村上千秋氏は、手続き上の手違いで一度目の出征をしてから、生涯に三度出征して、生きて帰ったことにより春樹氏が生まれた。 春樹氏

      • 宵えびす

        大阪では、えべっさんが終わるまで正月気分が抜けない。市内にえびす神社は何社かあるが、やはりメインは今宮戎神社だと思う。9日が宵えびす、10日が本えびす、11日は残り福、と言われる。 夕方4時ごろからチンチン電車でえびす町に向かった。例年に比べて人出が少なく感じるのは、不景気だからなのか、宵えびす的にはまだ時間が早いからなのか。9日の宵えびすは一晩中お参りの人が絶えない。 さっさとお参りを済ませて駅に戻る。だいぶ日が長くなった。5時過ぎたがまだ明るい。コーヒーが飲みたくな

        • 源流に触れる

          2019年11月12月といろんな事があった。正確には何かが起こったのではなく、自分が自分の世界で起こっていることを静かにウォッチングしながら、自分の中で反応し続けていた、というのが正しいかもしれない。 日々のネットから得る情報、社会で起こっている悲惨な事件、完全に壊れている政府や国、それらを眺めたり、毎日の日課のようにれいわ新選組の山本太郎氏の該当記者会見の動画を見る。 ウーマンラッシュアワーの村本さんの独演会に行った。 自分とは何者か?と問われ、自分の言葉で語れ、と言われる

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        • 小説
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        • 日常の風景
          3本

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          名もなき灯火

          忘年会は憂鬱だ。灯子は、つくづくそう思った。 上司のセクハラ発言にも媚びる女子社員、ご機嫌取りの男子社員、もう、うんざりだ。1時間ほど居ただけで義理は果たしたとばかりに、忘年会を後にしてきた。 街にはクリスマスソングが流れ、店はイルミネーションで彩られている。 ショッピングモールの前のベンチに腰掛けて、灯子は深呼吸をした。 少しお酒が入って火照った身体にひんやりした空気が気持ちよく、クリスマスソングと雑踏の声に耳を傾けながら少し目を閉じた。 人の気配を感じて目を開けると、目の

          魔法使いの憂鬱

          マキは朝のコーヒーを飲みながら窓の外を眺めていた。ブロック塀の上を歩いてきた黒猫がマキの方を見て、にゃあ、と鳴いた。 「さあ、仕事が来るね」 マキは誰にともなく声に出した。 スマホが短く振動しメッセージが表示された。 〈相談したいことがあるのでお会いできますか?〉 先週のマキの神秘学講座に参加した山崎からだった。 その日の午後、2人は駅前のカフェで待ち合わせた。山崎は、黒のタートルのシャツに黒の細身のパンツでサングラスをかけていた。 「今日は、わざわざどうも」 「いえ、あなた

          物書き見習中

          読書好きから、書く人になりたいと思って数十年。自分勝手に色々書いてきましたが、思う所あり2018年から本格的に文章講座なるものに通い始めました。雰囲気でやってたことが理論的に解析できたり、心に響く文章がどういう仕組みになっているのかなどをわかるにつれて、どんどん面白みが増してきました。 これから少しずつ賞レースにもチャレンジしていこうと思います。