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二重振り子

ガーン

ガキーン

金属の衝突し合う音が聞こえた。解体工事でも始まったのかもしれない。きっと巨大な建物だろう、とても大きな音だったから。

ガーン

ガキーン

音はゆっくりと間をとりながら続いている。
鉄骨が触れ合うような軽い金属音ではなかった。
もっと太く、重々しい何かが、ぶつかり合う音のようで

ガーン

ガキーン

わたしは、音を確かめるために外へ出た。
少し気が急いて、裸足につっかけで。
通りに出てみたけれど、大きな建物も工事も見当たらない。
少し低い位置に太陽が光っている。
もうすぐ娘たちが帰ってくる時間だ。

その時またあの大きな音が

ガーン

ガキーン

わたしは見逃さなかった。
その音の方、山の近くの雲の後ろに
大きなレンズ型の建造物を。

ガーン

ガキーン

それは巨大な二重振り子だった。
大きな雲が隠していたから、そうだと気づくまでに時間がかかった。
巨大なレンズ型の振り子が二つ、ジェットコースターのレールのような巨大な鉄骨に固定されており、それが不規則な動きをしている。ゆっくりと動く巨大な振り子が、周りの雲に当たって音を出していた。

ガーン

ガキーン

振り子が当たると、周りの雲は移動する。はじかれて、ゆっくりと。
わたしはその時、全ての雲は何かしらの建造物を隠すためのものであることを悟った。そこに浮いてる小さな雲だって、その後ろに巨大な浮遊物を隠し持っているに違いない。

ガーン

ガキーン

身体に音の振動が伝わってくる。
わたしは娘たちを迎えにいくことにした。
裸足につっかけのまま車を出した。



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