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この春からゲーム制作の本格化を決めました!

いたばしの地域ボードゲーム会の松本です。
少し前から「虐待サバイバーBANK」のイノケンさんと一緒に「やってみようか〜」と話し合ってきた虐待防止をテーマとしたボードゲーム開発。今回、ある程度のイメージを固めたことで、2024年夏頃のイベント実施に向けて、この春から本格的に取り組んでいくことを決めました!

前回の記事はこちら。

今回もノービジュアルなので、もはや恒例のぱくたそAI画像で味気ないテキストにビジュアルを補強していきます!

今回のゲーム制作の前提

児童虐待、高齢者虐待といろいろありますが、いずれも「虐待」とは起こってしまった悲しい結果をさす言葉であって、その原因に由来しません。なので、虐待の原因はなんだろうって観点だと、さまざまな要因を見いだせるし、なおかつ、さまざまな観点から対処していく必要があります。

そういう意味では、今回のゲームで僕らが提供しようとしている「怒りのコントロール」という学びは、虐待につながる原因の1つに向けたもので、虐待防止のすべてをカバーできる取り組みではありません。

あくまで等身大に実行できる、小さな活動に過ぎませんが、わずかでも虐待防止に貢献できることを願って、学びのボードゲームを制作していきます。

どのような効果を目指しているか

今回のゲーム制作で僕らが何を目指すのか。これまでの議論を確認してみます。すでにたくさんの方が虐待防止の活動をしていますが、まだまだ課題はたくさん。虐待を根絶するのはすごく難しいことのようです。

そこへ僕らはどうアプローチするのか。これまで話し合ってたどり着いた回答は「すべての人が虐待の加害者になりえる」と自覚することでした。すべての人が「自分もやってしまうかもしれない」と自覚し、防止に努めることが大切なのではないか。そう考えました。

そこで今回の制作では、ゲーム体験を通じて「人生のいたるところに人の心を暴走させるトリガーが存在する」「誰しもが虐待加害者になってしまう危険はある」と感じもらうことを目指します。

また「怒り」の感情コントロールに役立つ知識として、近年注目を集める「アンガーマネジメント」の要素を部分的に取り入れます。

つまり、ゲームを遊ぶことで、虐待問題をジブンゴトの一つとして感じてもらうとともに、不完全ながら「アンガーマネジメント」に対する知識と関心も高めてもらうことで「難しい問題だけど、努力できることはある」と確認してもらうことまでをセットに表現します。


学びのゲームとしての重要アクティビティ

虐待防止に対する関心を高め、学びを得るボードゲームとして、今回もっとも重視しているアクティビティは、プレイヤー自身が過去を振り返って、自分の体験について語ってもらうことです。

具体的には、自分が誰かに対して虐待にも捉えうる、あるいは虐待に発展する危険性もあったという暴言や暴力の体験(ヒヤリ体験)を話してもらいます。

なぜ、ヒヤリ体験を語ることが大切なのか? それは今、体験を話す機会があまりにも少ないと考えたからです。僕らの社会では「虐待」という話題そのものが、重く、怖いものであり、そう気軽に話し合えないタブー感が存在しています

いや、タブーじゃなくて身近にないから話題に出ないだけでは、と考える人がいるかもしれません。たしかに人命が失われるほど苛烈な虐待は、まれでしょう。しかし自分より立場の弱いものに暴言を吐く人を見たことはありませんか? 深刻な虐待は少ないとしても、その手前にある小さな暴言や暴力は、どこにでも日常的に存在しているはずです。

ところが虐待のタブー感が強いために、たとえば「聞き分けない子どもを叩いてしまった」と反省を語るにも勇気が必要です。そうした状況は、加害行為の隠蔽を助長するうえ、他人から助けを受けるチャンスを減らします。
情報共有の難しさが「人は誰でも虐待加害者になりうる」というテーマを語る上でも大きな障壁になっているのです。

虐待を起こしてしまう人々の多くは、決して「冷酷な怪物」ではありません。弱い心を持つ、私たちの日常とつながっています。そのことを直視することこそが、今回の取り組みの根幹といえます。

とはいえ、ゲームを開始して突然に「あなたのヒヤリ体験を話して」と振っても、なかなか話づらいことが予想できます。自己開示が難しいという点に加えて、単純になにも思い出せないって場合もありそうです。

そこで、今回のゲームでは、プレイヤーたちはゲームの中心人物ではなく、主人公を支える第三者(友人)となってもらい、社会人「あるある」な理不尽イベントに苦しむ主人公を見ながら、自身の経験を振り返り、想像力を広げてもらいます。そして意外な結末を迎える物語を見届けて、最後にプレイヤー自身の「ヒヤリ体験」を話し、共有する流れを考えています。

現在のゲームイメージ

ここまでの議論を踏まえ、ゲームのイメージ像をどう考えたか。現状の草案についてまとめます。実は、すでにある程度の検討を重ねて、ゲームダイナミクス、メカニクス、コンポーネントを定めつつありますが、細かいことはまだまだ変化するかもしれないので、ざっくりまとめます。

ボードゲームの基本設定

本作は「ユウ(性別がどちらでも成立する名前の人物)」という若者を主人公とした物語を進める形を検討しています。

大手メーカーにつとめ、30代半ばで初めて新商品の開発チーフに任命されたユウは、その責任とプレッシャー、数々の理不尽な困難にもまれて、家庭と仕事の間に押し潰れそうになりながら、必死で前進していきます。

困難が生じるたびに、ユウにはFP(フラストレーション・ポイント)が蓄積され、これが許容量を超えてしまうと、家族に虐待行為を及ぼす「ギャクタイクーン」となってしまいます。

ゲームプレイヤーたちはユウの友人となって、フラストレーションで周囲や家庭に当たり散らすようになってしまうユウへ、ときにその苦しみへ共感を示し、ときに「アンガーマネジメント」の知識でアドバイスを出しながら、FPを抑制し、物語を前に進めていきます。

物語の最後には、数々の苦難を超えてプロジェクトが成功させたユウが、自分の行いを恥じ、家族に謝罪します。静かな沈黙のあと、ゆっくりと口を開いた家族の答えとは……ゲームの経過に応じてエンディングが変化します。

ギャクタイクーンというキャラクター

虐待を文字った「ギャクタイクーン」というキャラクター像は、今回のテーマに対し、ポップで軽薄な印象を与えるかもしれません。でも、その軽さこそが虐待サバイバーであるイノケンさんが大切にしたいポイントです。

今現在もどこかで発生しているであろう、ひどい虐待行為は決して笑うことができません。しかし、虐待の話題全てを、あまりにセンシティブで恐ろしいものとして扱うと、人は目を背けてしまいたくなります。それでは課題を皆で取り扱うことができません。

今回のゲームでは、ユウが暴走したときに生まれる「ギャクタイクーン」に、人間の弱さと怖さ、悲しさと滑稽さ、深刻さとバカバカしさを込めて、表現したいと思っています。

これからのスケジュール

今回の「虐待サバイバーBANK」と「いたばしの地域ボードゲーム会」の協働計画では、いったん2024年夏頃にゲームとゲームを使ったイベント等を実施することを目標とし、およそ1年半をかけて制作を進めようと思います。

まずは3〜4月でウェブサイトや情報発信の基盤を用意し、ゲーム制作を進めつつ、随時、情報発信していきます。一人でも多くのみなさんに関心をもっていただけると嬉しいです。

どうぞよろしくお願いします!

板橋区内に、レーザーカッターや3Dプリンターを使って何かを作ったり届けたりしています。また、そうした道具を使える人を増やしたいという思いで、講座などもちょいちょい開催しています。サポートいただけた場合は、こうした機材費や会場費などに利用させていただきます。