児童養護施設や里親に子どもを預けているあなたへ

 この記事を開いてくださったあなたは、今どんな気持ちで日々を過ごしているでしょうか。

 初めて子どもを児童養護施設や里親に託すことになって戸惑っている。こういう状況になって、ほかの人の目線や評価が気になっている。自分は「いい親」じゃなかったと心に杭が刺さっている。今まで大変だったから、とにかく今は療養したい。子どもを安全な場所に託せてほっとしている。早くまた子どもと一緒に暮らしたくてたまらない。子どもと共にいたいという愛情と、いい親であれないという苦しみの間で葛藤している。

 きっとさまざまな感情が押し寄せたり混在したりしていることでしょう。だけれど、わたしたちが感じてきた「負い目」のようなものはほんらい不要なものも含まれている、とわたしは考えています。

 はじめまして。わたしは九州の田舎町に子どもと二人で暮らしている者です。今から3~4年前にあなたと同じような体験をしました。そのことについては、下記の記事に書いたので、もしよかったら読んでみてくださいね。

 今わたしは、「あなたの話を聞かせてほしい」と伝えたくて、この文章を書いています。

わたしたちが感じている負い目ははたして必要なものなのか?

 子どもを児童養護施設に預けたわたしには人々からこういう言葉がかけられました。

「子どもを施設に預けておいて、自分は教育の仕事をするなんて、いったいどういうことだ」
「子どもを施設に預けていることを公表しているのだから、広報の業務はしない方がいい。会社のイメージが悪くなるから」
「『子どもが幸せになるためには、まず親が幸せになるべきだ』なんて、詭弁だ」

黒木萌「『最低な母親』という烙印-子どもを施設に託すことは、罪か」

 それを受けてわたしは、所属団体の代表にならないと決めたり、団体のイベントで司会をしないようにしていたりと、人前に出ることを避けていました。子どもと離れてもわたしは親であることに変わりはないのに、それは社会的に受け入れられないと感じていました。でも、はたしてその感情や考え、行動は必要だったのか、と今は疑問に思います。

 振り返って考えてみても、わたしはやっぱり息子を児童養護施設に託すと思います。そうするしかなかったんです。子どもを守るために、必要なことでした。

 今あなたはどういう状況にいるのでしょう。人は一人ひとり違うから、わたしには想像してみることしかできません。決してあなただけの責任ではないのに、もしかしたらわたしと似たような言葉をかけられたり、子どもを施設や里親に預けた自分を自分で責めたりしているのではないでしょうか。

 個別の事情まではわからないけれど、あなたにはあなたなりの子どもを預けざるを得ない事情があったことでしょう。きっと、子どもを、子どもの命を守るために、そうするしかなかったのではないでしょうか。

 わたしたちは選ぶことのできる選択肢をとっただけで、それは他人から責められるべきものではなく、負い目を感じる必要はないのではないでしょうか。つまりわたしたちの感じている負い目は、根拠のない負の烙印、スティグマだと思うのです。

 わたしはそういう周りの人からのスティグマや、あなたが自分自身に対して感じているスティグマをなくしていきたいと考えています。

スティグマをなくすには

 スティグマをなくすにはどうしたらいいのでしょうか。次の記事もぜひ読んでいただきたいのですが、この中に、大事なのは周りの人たちが「当事者の語りに耳を傾けること」という言葉が出てきます。スティグマをなくす、つまりあなたの感じている悲しさや苦しさを軽減するには、当事者であるあなた自身がその経験を語ることが大きな意味をもつのです。

スティグマをなくして、社会をどう変えていきたいか

 あなたやわたしにひどい言動をした人たちの中には、悪気のない人も多いと思うんです。もしかしたら正義感からその言動が出ているのかもしれません。だから、まずは社会の一人ひとりに、なにが差別でスティグマかを知ってもらいたい、気づいてもらいたいとわたしは考えています。その上で、あなたやわたしの身に起きたことを、自分事として考えてもらいたい。「自分も環境が違えば同じ状況になっていたかもしれない」と当事者のことを自分のことのように想像してもらいたい。あなたやわたしもその人たちと同じ人間で、怠けているとか悪い親だというわけではないと理解してもらいたいです。そうすることで、親子へのまなざしが優しい世界が形づくられていくはずです。

あなたのお話を聞かせてほしい

 そのために、あなたのお話を聞かせてほしいんです。どんな体験をして、それにはどのような事情があったのか、そのときあなたはどんな気持ちだったか。つらいことなので、無理はしないでほしいですが、わたしの想いに共感してくださる方がもしいらしたら、気軽に連絡をください。手段は、メールでもSNSでもコメントでもなんでもかまいません。

 もちろん、あなたの同意なしや望まない形でそれを公表することはありませんので、ご安心ください。

 病気などで子どもの養育が困難になることは、だれにでも起きうることです。頼れる人(祖父母など)がいない人が、児童養護施設などに子どもを一時的に預けることは、はたして恥ずかしい、忌むべきことなのでしょうか。当事者がそのことを隠したりその記憶を抹消したりしたいと願うその感情はどこからくるのでしょうか。

 あなたやわたしの体験を隠さないでいい社会をわたしは目指しています。そのための仲間になってくれませんか。

わたしへの連絡先はこちら

メールアドレス:kirakirahikaru38@gmail.com
X(旧Twitter):https://twitter.com/moe_kof

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