土地を相続したときどうしたらいいの?「相続土地国庫帰属制度」が2023年4月よりスタートしています。
土地を相続したものの「遠くに住んでいて利用する予定なし」「周りに迷惑がかからないようにきちんと管理するのは大変…」。そのような理由で相続した土地を手放したいニーズは多いです。都市部に住んでいるとイメージ付きにくいですが、不要な土地は「タダでも」もらいたくないもの。
特に、両親が田舎に住んでおり子供が都市部に働きに出てきている場合など、気になる方も非常に多いのでは。2023年3月までに民法では、一部の財産を放棄し、必要な財産のみを相続するということは認められていないため、不要な土地のみを放棄するということはできませんでした。
1.土地を相続したときどうしたらいいの?
相続した財産に「土地」が含まれていた場合の取扱いには、主に次のような方法が考えられます。
(1)自分で活用
相続によって取得した土地は、基本的には自分で住む、誰かに貸す、売却するなど自分で活用することが考えられます。
(2)相続放棄
相続した土地によっては、活用もできず売却もできない場合があります。その土地の管理費用や固定資産税の負担を考慮して「相続放棄」という選択も考えられます。相続放棄は、相続の開始があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申し立てて、被相続人の権利や義務を一切受け継がないことにする手続です。これによって不要な土地の相続を行わないことも可能ですが、相続放棄は、不要な土地だけでなく、預貯金や株式など全ての資産の相続権も失うことになるので注意が必要です。
2.相続土地国庫帰属制法とは?
2021年4月に成立した法律です。相続等によって土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けて、その土地の所有権を手放して、国庫に帰属させることができる制度です。簡単に言うと「相続した不要な土地の所有権を国に返すことができる制度」です。
この制度の開始時期ですが、法律の中に「交付(2021年4月28日)から2年以内の政令で定める日から施行」と記載がありまして、実際には、2023年4月27日から施行されています。
3.相続土地国庫帰属制度の概要
法務省が2023年4月版ということでパンフレットを出していますので、添付します。全74ページですが、以下で入口部分を簡単にまとめました。
3-1,申請ができるのは誰?
相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限ります)によりその土地の所有権を取得した人に限られます。つまり、売買なので自ら積極的に取得した土地については、この制度の対象外です。
3-2.申請できる土地は?
ざっくりいいますと「抵当権等の設定や争いがなく、建物もない更地」となります。つまり通常の管理や維持に必要以上の費用や労力がかかる面倒な土地はお断り!という訳です。
具体的に、以下の10項目いずれに該当していないことが要件になります。
➀建物がある土地
②担保権、または使用および収益を目的とする権利が設定されている土地
③通路など他人によって使用されている土地
④土壌汚染対策法に規定する特定有害物質で汚染されている土地
⑤境界が明らかでない土地、その他所有権の存否、帰属や範囲に争いがある土地
⑥崖のある土地など、通常の管理にあたり過分の費用、または労力を要する土地
⑦工作物や樹木、車両などが地上にある土地
⑧除去が必要なものが地下にある土地
⑨隣接する土地の所有者などと争訟しなければ使えない土地
⑩その他、管理や処分にあたり過分の費用、または労力がかかる土地
その他、審査手数料などの費用はどれくらいかや、手続きの具体的な流れ等々は、添付の法務省のパンフレットを、ぜひご参照ください。
4.もう一つの「所有者不明土地」の予防策
この相続土地国庫帰属制度は、相続の際に登記がされないまま土地が放置される「所有者不明土地」の予防策としての趣旨があります。そしてもう一つの予防策があります。
そう「相続登記の義務化」です。こちらも2021年4月に相続登記が義務化されることが決定しましたが、当初から決定した日から3年以内に義務化予定とありました。そして2024年4月1日から義務化されたということです。
そして、義務化された後のルールは、相続から3年以内に相続登記(所有権の移転の登記)を申請しなければならないとし、このルールに違反すると10万円以下の過料に科されるとされています。また義務化の対象者には、義務化が始まる前に相続開始した人で、未だ相続登記を済ませていない人も対象なので要注意!になります。
これまで説明してきました「相続土地国庫帰属制度」と「相続登記の義務化」ですが、マンガでも読めますのでご紹介します。
このnoteが、読者の皆さんの「最新の法制度に触れていただく最初のきっかけ」になれば嬉しいです・・・主に司法書士さんの守備範囲でしたが。
<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>
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