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分かった気になれる!メタモデル?ミルトンモデル?図解NLP入門

 今回は「NLP」をテーマに記事にしてみました。苦手なあの人とうまくコミュニケーションをとってみたいとおもいませんか?NLPとは頭と言葉の使い方に関係してきます。
 NLPとは一体どのようなものでしょうか?NLPとはNeuro(ニューロ:神経)Linguistic(リンギステック:言語)Programing(プログラミング)の頭文字を重ねたもので、言語学と心理学を効果的に組み合わせた実践手法です。1970年代にアメリカでリチャード・バンドラーとジョン・グリンダ―によって開発されました。その後、バンドラーとグリンダ―をはじめとする数多くのNLPの研究者がNLPを発展。現在ではセラピーだけではなく、ビジネス・教育・スポーツ・芸術とあらゆる可能で実践可能な能力開発体系となっています。
 で、本屋でNLPの書籍を探すと、それは多くの種類のNLP関係本が販売されています。NLPって非常な広い範囲を網羅した何らかの体系ということは分かりますが、結局「NLPって何?」と感じた方もいるのでは?私は言語学や心理学の専門家でも何者でもないですが、ざっくりとNLPを説明し、タイトルにありますように「分かった気になれる!」をゴールに記事にしてみました。


1.正体不明のNLP。まずは登場背景を探ってみましょう!

 ちょっと話は反れますが、私の専門は経営系。昔の話になりますが、経営系の学術論文を執筆するのに、ある研究生と教授との印象的なやりとりをご紹介します。その研究生は毎日非常に膨大なビジネス書を読み込み、教授に論文指導をお願いしますが、教授は目次だけ見て全く研究生の相手をしません。こんな日が続きましたが、ある日、ついに研究生が「なぜ論文指導をしないのですか?」と聞き、返ってきた教授の答えは次の内容でした。
 
「あなたは膨大なビジネス書を読み、現代の多くの大企業社長の素晴らしい言葉をまとめている。でもこれら社長の言葉は既に古典経営学のバーナードやサイモン等の理論のあてはめ・焼き増しに過ぎないのですよ。あなたはこの焼き増しだけを追って、バーナードさえにも全く触れていなかった。まずは古典経営学を勉強しなさい。論文指導はこれからです。」
 
 ではNLPの場合はどうでしょうか?1970年代にアメリカでNLPを開発したリチャード・バンドラーとジョン・グリンダ―の理論を追うのでしょうか?
いいえ。NLPはリチャード・バンドラーとジョン・グリンダ―が、主にその当時傑出していると言われていた3人のセラピストを徹底的に研究することで開発されました。その後、バンドラーとグリンダ―をはじめとする数多くのNLPの研究者がNLPを発展。現在ではセラピーだけではなく、ビジネス・教育・スポーツ・芸術とあらゆる可能で実践可能な能力開発体系となっています。
 よって、研究対象となった3人のセラピストから整理した方が良さそうです。3人のセラピストとは、催眠療法のミルトン・エリクソン、ゲシュタルト療法のフレデリック・パールズ、家族療法のヴァージニア・サティアの3人のことを指します。
 もう5名の登場人物が出てきて、頭ゴチャゴチャ・・・になったと思います。(私の場合、とても頭ゴチャゴチャになりました!)この点、数多くあるNLPの書籍の中で、山崎啓史著『マンガでやさしくわかるNLPコミュニケーション』27ページ目で事実関係をまとめた分りやすい図解がありました。あと人物名が多く出てくるので、イメージがつきやすいようにWikipediaから写真もお借りしました。

図①:山崎啓史著『前掲書』27ページの図解をベースに、Wikipediaから写真もお借りしました。

 ここまでで、未だ「NLPとは何か?」は分かりませんが、登場人物は掴めてきたのではないでしょうか。特に3人のセラピストである、催眠療法のミルトン・エリクソン、ゲシュタルト療法のフレデリック・パールズ、家族療法のヴァージニア・サティアは重要ですので、この記事の後半の方で「似顔絵」付きでご紹介します。写真も良いですが、さらに(クセのある!?)似顔絵で示されると、より頭に定着するのではと考えます。
  前置きが長くなりましたが、いよいよNLPの中身に入っていきましょう。3人のセラピストの言葉の使い方のエッセンスを日常に使えるように「ミスコミュニケーションを防ぐ方法」など、コミュニケーションにおいて誰もがつまずく課題を解決する糸口をご紹介していきます。

2.コミュニケーションの仕組みとは?

 改めてコミュニケーションとは何でしょうか?組織内のトラブルの90%以上はミスコミュニケーションによって起こるといわれています。そこで、自分の「思い」がどのように言葉となり、また発した言葉がどのように受け取られるか、そのプロセスを下図②でご紹介します。
 
 話し手Aの立場でいいますと、自分の体験を言葉に翻訳して、受け手Bに伝えています。体験が言葉に翻訳されるプロセスで「省略・歪曲・一般化」が起きます。
省略:体験という現実から、体験を表す記号である言葉に翻訳されるプロセスで大部分の情報が洩れること。
歪曲:ものごとをありのままに見るのではなく、個人的な価値観などが作り出すフィルターを通して、自分なりの見方で捉えること。
一般化:あるものごとが一切の例外を認められず同じ意味を持つこと。
 受け手Bの立場でいいますと、話し手Aが話した言葉を過去の体験につなげて理解しています。空白を「過去の経験=記憶」で埋めているイメージになります。

図②:話し手の言葉を受け手が理解するプロセス

 ゆえに人は言葉を体験に基づいて発しています。つまり、言葉の受け取り方に違いがあるのは当然のことです。相手の言葉を受け取る過程で生じるミスコミュニケーションを防ぐ必要がありそうです。つまり「相手が伝えたかった内容」と「自分が受け取った理解」があっているか確かめることが必要になります。ポイントは、オウム返しするのではなく、「自分の言葉」で表現し、自分の頭の中にある「イメージの質感」を伝える必要があります。
 例えば下図③の通り、話し手が「夏休みを満喫しました」と言われると、受け手の中で「夏といえば山!」と連想し「山登りを楽しんだのですか?」と、受け手の「自分の言葉」で表現して「イメージの質感」を伝えることになります。そうすることで、話し手にとって早い段階で認識の違いに気づけ、「いいえ。海水浴を楽しみました」とコミュニケーションが成り立つわけです。

図③:相手の言葉を受け取る過程で生じるミスコミュニケーションを防ぐ方法

3.メタモデルで聞く!

 NLPには「メタモデル」という手法があります。これは簡単に言うと「特定の質問により思い込みを崩す手法」で、NLPで最初に開発された手法です。
 メタモデルの開発は、1970年代当時極めて実践的な心理療法だと知られていたゲシュタルト療法のフレデリック・パールズと、家族療法のヴァージニア・サティアの2人の言葉の使い方に着目することから始まりました。2人は別々の心理療法を使っていましたが、言葉の使い方に共通点が多くありました。彼らはストレスを抱えて苦しんでいるクライアントに特定の質問をし、それにクライアントが答えていくうちに次第に問題が解決されていったのです。

図④:ゲシュタルト療法のフレデリック・パールズと、家族療法のヴァージニア・サティア

 ところで上図④のフレデリック・パールズ。既に出てきた図①の「帽子とメガネの写真」と比べ、ずいぶん老いていますよね。これはヴァージニア・サティアや、後で登場するミルトン・エリクソンと時代感を整合するために、あえて晩年の似顔絵にアレンジさせていただきました。

 図②でも説明してきました「省略・歪曲・一般化」。メタモデルは省略・歪曲・一般化された情報を元に戻すことに根本的な考え方があります。

図⑤:メタモデルは省略・歪曲・一般化された情報を元に戻すことに根本的な考え方があります。

 なおメタモデルは質問が英語の言語学的に分類した12パターンから構成されています。「省略・歪曲・一般化」の性質を理解するのが重要と考え、12パターンの詳細は割愛しました。もし12パターンを深く追及される場合は、市販のNLPの教科書に詳細説明されていますので、コチラをご参照ください。
 
・省略:抽象的な言葉が無いかチェックします。
 →①不特定名刺、②不特定動詞、③比較、④判断、⑤名詞化
・歪曲:偏った思い込みが無いかチェックします。
 →⑥X=Yになる表現、⑦前提、⑧因果、⑨憶測
・一般化:世界をシンプルに見ようとする意識が作り出す思い込みが無いかチェックします。
 →⑩可能性を表す特定の助動詞、⑪必要性を表す特定の助動詞、⑫一切の例外を認めない表現

4.ミルトンモデルで話す!

 メタモデルはNLPの創始者達(リチャード・バンドラーとジョン・グリンダ―)が開発した最初の手法ですが、彼らは更にミルトン・エリクソンをモデルとした別のモデルも開発しました。これが「ミルトンモデル」です。ミルトン・エリクソンは当時世界で最も傑出した催眠療法家と言われた人物の一人です。催眠とは直接無意識(潜在意識)に働きかけ変化を作り出す方法です。

図⑥:催眠療法のミルトン・エリクソン。ミルトンモデルは「逆メタモデル」ともいわれています。

 ちょっと難しい話になってきたので、初期のNLPの2つのモデルを対比する形でご紹介します。
・メタモデル: あいまいな表現を正確な表現に戻す(省略・歪曲・一般化の是正)質問を行う。
・ミルトンモデル: わざとあいまいな言葉を使って(省略・歪曲・一般化を利用して)、クライアントの中に問題解決に役立つ記憶を引き出し治療する(逆メタモデル方式)など、メタモデルと対極となる手法も含まれる。

 例えば、私の体験例で説明しますと、プレゼンをする際、ほとんどの聴講者は身構えています。プレゼンの内容が初見で、場合によって周りは知らない人だらけだからです。過剰な意識優位の状態では中々私の話も伝わりません。そこで小難しい内容を「見ていて楽しいイラスト」を交え、リラックスした身体感覚を感じてもらうようにしています。私の描くイラストは至ってシンプル。9割は○△□の組合せから成り立っています。そこに省略・歪曲・一般化を利用しています。このイラストを聴講者は、省略・歪曲・一般化された表現を埋めるために記憶を思い出す作業を行い、しかも楽しい内容にすることでコミュニケーションを取る相手が前向きな気持ちを感じてもらうようにしています。

図⑦:ミルトンモデルは受け手の潜在意識にダイレクトに働きかける手法です。

5.よりスムーズにコミュニケーションを取る方法・・・ラポールとは?

 最後に、よりスムーズにコミュニケーションを取るために「一番」必要なものを紹介します。それは「ラポール」とよばれ「信頼関係」のことをいいます。ページングもリーディングもラポールを築くためのものです。
 改めて人間は「安全・安心」を求めています。心理的に、または空間的に近いと感じる人や環境に「安心感」を感じ、「安心感」を感じると心を啓き、言葉を受け入れやすくなります。ページングは心地よい関係を築くのに有効といわれています。

 ページングとは「相手に合わせる」ことです。つまり、ゆっくり話す人にはゆっくりと、早く話す人には早く、大きな声の人には大きく・・・話し方のスピードやリズム、そして「価値観」や「関心ごと」「ペース(話すスピード・呼吸)」なども合わせます。そうやってページングができると「親近感」がわきますが、「息が合う」なんて言葉がまさにそうですよね。
 そしてページングが進み、深いラポールが生まれるとリーディングができるようになります。リーディングとはこちらのペースに対して、相手も合わせてくれることです。深いラポールができあがっていれば、「君が言うなら安心だ」になるという訳です。

図⑧:スムーズにコミュニケーションを取る方法「ページング」「ラポール」「リーディング」。

 以上、NLPの基本から、メタモデルやミルトンモデルをざっくり説明してきました。最初にも述べましたように、NLPの守備範囲はとても広いです。この記事をきっかけに他の市販書籍を読み進めるきっかけになれば嬉しいです。

※参考図書
山崎啓支『マンガでやさしくわかるNLPコミュニケーション』日本能率マネジメントセンター、2022年5月

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>

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