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子供から「税って何?」と聞かれたら。

子供から「税って何?」と聞かれたら何と答えますか?

 ”お金は払っていないけれど利用している施設やサービスに、税金が使われているよ。学校・警察・消防・公園・道路・信号機・図書館・ごみ処理・市民病院・・・他にもたくさんあるよね。・・・”と言うように、おそらく税の役割や使い道について説明して終わっているのではないでしょうか。

 親としては、もう少しツッコんで説明してみたいところ。どのような税の種類があって、ライフイベントに沿って、たくさんの税金の種類があることを子供に教えるのも”アリ”でないかと思います。子供に「物知りでカッコ良いところ」を見せてあげたいですよね!

 記事中のイラストは日本税理士会連合会のHPから引用・一部改廃のうえ使用させて頂いています。そこで租税教室の説明「ライフイベントと税」を実況中継形式にまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
 また記事後半では、”おまけ”までに世界のユニークな税金の豆知識を掲載しました。子供たちに興味を持ってもらうためです。併せて、お楽しみ頂ければと思います。

ライフイベントと税:租税教室実況中継

”ここでは、日本にはどのような税があるか、ライフイベントに沿って紹介していきます。改めまして、税理士の稲垣です。先月45歳になり、この年になると「夢のマイホーム」購入に向け、検討中です。”

(児童生徒:”へぇ~、45歳かぁ~” )

”家を購入した際にも税金がかかるんですよね。固定資産税です。”

図①:固定資産税

”おっと、オジサンの夢の話はさておき・・・。皆さんもあと6年ほどで18歳。選挙に行けますよね。あと18歳になると運転免許も取得できます。で、自動車を購入する際にも税金がかかるんですよね。”

(児童生徒:”自動車税!” )

”そう、正解!更に2年後の20歳になると・・・。”

(児童生徒:”お酒が飲めるようになる!!” )

”そうですよね。20歳からお酒やたばこを購入した人に、酒税・たばこ税が課税されます。”

図②:自動車税・酒税・たばこ税

”この年齢になりますと、皆さんの中でも学校を卒業して働く人も出てくると思います。先生は今は都内の会社で働いていますが、20代の頃は大阪に住んでおり、ラーメン屋で社会人生活をスタートしました。支給された給与に課税されるのが、所得税です。また当時、住んでいた大阪市内に収めていたのが市町村民税になります。

図③:所得税・市町村民税

”ところで、小学生の皆さんも既に納めている税金があります。買い物をしたときにかかる・・・”

(児童生徒:”消費税!” )

”そうですよね。ちなみに消費税は、行先は国税と地方税の二つあります。”

図④:消費税

”先生は、30歳手前で、今まで勤めていた大阪のラーメン屋を辞めて、今勤めている都内の会社に転職しています。ひょっとしたら、皆さんの中でも転職、更には自分で会社を作る人も出てくるかもしれません。会社を作って、事業を始めた際に納める税金が、法人税・事業税です。”

図⑤:法人税・事業税

”最後に、寿命を迎えた時、残された家族に財産が相続されるときにも、相続税が課税されます。

図⑥:相続税

”これまで10種類の税金を紹介してきましたが、日本の主な税金の種類は何種類あるでしょうか?”

(児童生徒:”うーん・・・倍の20種類かな・・・??” )

”実は、主な税金の種類は50種類あります。これまでいくつもの税金の種類を紹介してきましたが、今は無理して暗記等する必要はありません。皆さんのライフイベントに合わせて50種類もの税金が課税されるというイメージで十分です。更には皆さんが将来、「そう言えば、租税教室の時に様々な税金を教わったよな」と思い出してくれればうれしいです。今日の授業はこれまで。お疲れさまでした。”

図⑦:主な税金の種類は50種類

 以上、いかがだったでしょうか?税理士は教育のプロではないので、小学校の先生方のように、子供たちに授業する知識もノウハウも持っていません。そこで各税理士協会内の研修会を利用して、先輩税理士から後輩税理士にノウハウを伝承しています。更には研修会でお伝えしきれないことは、この後の懇親会も重要になってくることは言うまでもありません、

図⑧:租税教室の研究会も定期的に開催

おまけ:世界のユニークな税金の豆知識

 あと世界のユニークな税金の豆知識も子供たちにお伝えすると、自由研究の教材として興味を持ってくれるかもしれません。

 皆さんは「アンネの日記」について、一度は耳にされたことはあると思います。第二次世界大戦でナチス・ドイツのユダヤ人迫害から逃れるため、アンネ・フランクは窓の少ない細長い家の構造を利用し、本棚で遮断し隠れ家スペースに隠れて、あの日記を書き続けたそうです。それは戦争の愚かさと、不寛容・人種差別の危険さを世界中に訴えた名著ですよね。

図⑨:Anne Frank House公式ホームページより引用

 ところで舞台となった窓の少ない細長い家。今でもオランダで昔ながらの景観保護のために「カナルハウス」と呼ばれる運河沿いの邸宅は、そのままの姿で残され、古くなった外壁を修繕する際も、壁の色などには自治体が制限を設けているといわれます。なぜ家の建設時、このような構造スタイルになったかは、当時のオランダには窓税という税金があったからと言われています。今回のnote記事後半では、窓税を皮切りに世界のユニークな税金の一部を紹介していきたいと思います。

1.オランダの窓税

 冒頭の「アンネの日記」の舞台となった家の造り。歴史的背景は17世紀に遡ると言われています。東インド会社の交易によって富を得た豪商たちが、こぞって邸宅を建て始めたのを見計らい、建物の間口の幅に基づいて税金を課すようになりました。けれど豪商たちも、唯々諾々と重税を受け入れたわけではなく、少しでも税金を安くするために、間口のみ不自然なほどに狭く、奥行きを長く設計していったと言われています。

 では、アムステルダムで最も間口が小さい家は、どれくらいの幅なのか。諸説あるものの、1738年頃に建てられたアウデ・ホーフ通りの家も「最も小さい家」(細い家)のひとつだと言われており、幅2.02メートル、奥行き5メートルのコンパクトな3階建てとなっています。(税金逃れの仁義なき戦い「アムステルダムの最も小さい家」(オランダ) | サライ.jp|小学館の雑誌『サライ』公式サイト (serai.jp)より)

図⑩:窓税対策の名残である、アムステルダムで最も間口が小さい家

2.ロシアのヒゲ税

 ヒゲ税は17世紀末、ロシアで制定。ヒゲぼうぼうの人がヒゲを整えないと課された税金です。先進的国家をすることをめざし、国民の意識改革のためピョートル1世が作りました。

図⑪:ヒゲ税を導入したピョートル1世

 1698年に西欧遊学から帰国したピョートル1世は、ロシアの近代化改革の一環として1699年にヒゲ切りを法令化(ヒゲ税)、1705年に服装の規範を定め口髭・顎鬚を剃ることを義務化するなどしましたが、多くの反発を招いたと言われています。髭を生やすことはロシアでは古来からの伝統である上、後世の風刺画でもヒゲを切られそうになっている左の男の方がむしろ大きく堂々とした様子で描かれていることからも、当時の世相が窺えます。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

図⑫:ヒゲ税に関する風刺画

3.ハンガリーのポテトチップス税

 2011年9月2日の日経新聞記事(肥満防止で「ポテチ税」導入 財政再建中のハンガリー~毎年7400万ユーロの税収見込む~)では、”ハンガリー政府は1日、国民の肥満防止を目的に、スナック菓子や清涼飲料水など塩分や糖分が特に高い食品に課税する通称「ポテトチップス税」を導入した”としています。

図⑬:ハンガリーでは国民の肥満防止を目的に「ポテトチップス税」を導入

4.トランプ類税

 4つめ最後は・・・。あぁ~、トランプさんが定めた税金ね!?

図⑭:トランプ類税はこの人??

・・・いいえ、全くもって全然違います。(写真は朝日新聞GLOBE:2020年11月2日より引用)トランプ類税は日本の税金です。1957年、日本でギャンブル性の高い麻雀杯、トランプ、花札などに課せられましたが、1989年の消費税導入に伴う間接税の整理によって廃止されています。

図⑮:日本のトランプ類税は1989年の消費税導入に伴う間接税の整理によって廃止

 以上、いかがだったでしょうか。小中学生の子供たちには自由研究のネタとして、世界のユニークな税金を一緒に調べても面白いかもしれません。

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>

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