バカやろうCM

「カップヌードル」のCMは、毎回おもしろいですね。
「I'm hungry.」だったか「Are you hunbry?」だったか忘れましたが、CMの最後にこのフレーズに続いて「Cup Noodle!」で締めくくる、一連のクールなCMシリーズがあったのも覚えています。

中でも私、とっても気に入っていたのが、
「いまだ!バカヤロウ!」
という、ビートたけしさんが出てくるのCMでした。
2016年だったようです。

実はこれ、すぐに打ち切りになってしまいました。よくある、というよりありきたりの、
「(ネットなどで)叩かれたから」
です。

出演していたのは、そうそうたるメンバーでした。

・新垣隆さん
ご存知、佐村河内守さんのゴーストライターでした、この方、どこから見てもどう見ても、悪い人には見えません。いくつかのCMでも見かけましたし、バラエティにもたくさん出ています。
うろ覚えですが、「あまちゃん」の音楽を手がけた大友良英さんに勝るとも劣らない、日本の音楽界を代表するほどの実力者だとか。
CMの教室シーンでは、
「才能はシェアする」
というテロップが流れ、覆いかぶさるようにして指導する生徒はロン毛・サングラスで佐村河内さん激似という手の込みようです。

私は特にこのシーンが好きでした。
NHKスペシャル、佐村河内守さんの密着回、真剣に見たものです。
「なんかすごい人がいるんだなあ」
と、作り上げられた(今ならアバターとも言うのでしょうか)偶像にすっかり魅了されて、彼のアルバム「HIROSHIMA」買おうかと真剣に考えたことも,あったほどです。

ちなみにこの「HIROSHIMA」、未だにアマゾンでも売っていて、商品ページによくある「よく一緒に購入されている商品」では、新垣隆さんのアルバムと著作「音楽という<真実>」が並べて表示されていましたから、こっちの方がよほどシャレが効いている感じです。

・矢口真里さん
モーニング娘。出身の彼女は、最近(今日は2020年6月13日です)もお笑いタレントがやらかしたのと同じ(と言っていいかどうか分かりませんが)不倫騒動を起こしました。
CM打ち切り、動画全面削除の直接のきっかけが、「危機管理の権威」として登場した彼女だったいう説が有力です。

・小林幸子さん、
今やラスボス感の強い演歌の女王ですが、彼女は今でもコミコンなどに直接足を運んでCDを売ったりしているそうです。
さすが長い下積みを経験され、決して奢ることのないすばらしい方だと思います。
彼女は「衣装は建設するものへ」というフレーズで、多分実際に紅白歌合戦で使った彼女の像と一緒に出演しています。

・畑正憲さん
「ネットバズ動画の父」と紹介されている、ご存じ「ムツゴロウ王国」のCEO的存在です。
彼がこのCMに起用された背景は忘れてしまいました。
北海道にあったムツゴロウ王国を引き払って、東京サマーランドに移転しましたが、その後閉園してしまったようです。

・ビートたけしさん
アンタッチャブルですね。
誰も批判する事はできません。むしろ忖度しているかも。
報道番組にも出ているという、まあ日本を代表するご意見番の一人ですから。

で、彼がこのCMの中で言った、
「いまだ!バカやろう!」
このフレーズは良かったと思います。
さらに、カップヌードルからのメッセージとも言える、
「Crazy makes the future.」
CMのデキとして、正直しびれるセンスを持っていました。
「Think Different」
のアップルに通じる所があったと思うのです。

これが1週間で打ちきりになるのですから、日本という社会の不寛容をあらためて感じます。同時に将来性のなさも。
アップルは、1997年に復帰したスティーブ・ジョブスが仕掛けた「Think Different」キャンペーンで、息を吹き返しました。

彼自身が後に述べていますが、復帰した時にアップルは、
「あと90日の命だった」
そうです。
それが、わずか2ワードで、アップルに見事な復活をもたらしたのです。

日清食品が放った、
「いまだ!バカやろう!」
というメッセージは、日本という国をよみがえらせるどころか、またしても低迷を長引かせてしまっています。
もちろん、日清食品に問題があるのではなくて(むしろ私は称賛しています)観る側が、そのレベルに達していなかったのです。
「Crazy Makes the Future」
という、本質を突いたメッセージは、日本人に受け入れられませんでした。

日本人(全員からではなかったのでしょうが)からのメッセージは、
「Japan is not Crazy」
でした。
そして、バブル崩壊から続く「失われた○○年」は、今年でめでたく28年目、そろそろ30周年記念ですね。

このCMのおかげで、私自身1円も損していません。CMというよりは、CMの出演者がしたことで、の方が正確かもしれません。
「お前が(不倫の)当事者だったらどうなんだよ」
と聞かれても反論のしようはありませんが、誰が不倫しようと別に構いません。

まあそもそも、私、芸能人でも一般人でも、自分の不倫には興味がありますが、他人の不倫にはまったく、1ミリも興味ありませんし、不倫している、したことがある、という尺度で人を判断しようなどとはまったく思いません。

今なぜこんなことを思い出したかと言うと、まあ昨今の不倫報道ですかね。
でもおかしな話で、法の番人の検事長が賭博で有罪にならないのに、犯罪ではない不倫のために、芸能人人生、収入源があっさり終ってしまうわけですから。

本物の恐怖というのは、案外こういうところにあるのかもしれません。

さらに言えば、それさえ虚構なのかも知れませんね。
芸能人の不倫であれ、誹謗・抽象であれ、本気でやっているのは、限られた少数の人々なのに、それが目立つのと報道が拡散させるのとで、実際よりも肥大して私達の前に現れているのかも知れません。

学生時代を思い出します。
友達を裏切ってしまった体験が私にはあり、それでとても落ち込み、学校に行くのが嫌になり、いっそこのまま死んでしまった方がいいのかとさえ考えたこともあります。
でも、私が裏切った友達も、周りの友達も、ある程度の時間をおけば次第に私を受け入れてくれて、またもとのように楽しい毎日に戻ることができました。

本当は、私達の社会もそんなものかもしれなくて、誹謗・中傷した人でさえそこまで悪気があってしたわけでもなく、怒りも次第におさまっていくのかもしれませんし、不倫に腹を立ててバッシングする人も、ほんの一握りかもしれません。

でも、逆に残念なのは、
「別になんとも思っていない人は、何も言わない」
ことなのかもしれません。
何も言わない人が残念なのではなくて、そういうものなのだろうと思ってしまうのです。
私自身、芸能人の不倫報道に対して、コメント欄や自分のSNSに、
「死ね」「オワタ」「ゲス」「消えろ」などと書き込みをしたことは一度もありません。大多数の人もそうなのだと思います。

多分「サイレントマジョリティ」は、人のことなど大して気にしていなくて、でも逆に気にしていないからこそ何の声も上げない。
ましてや擁護発言など、自分がターゲットになることが充分に想定される昨今、怖くて声を上げられない。
それに対して「ノイジーマイノリティ」は声が大きい。それがほんの少数でも、声を上げれば誰かに届く。

「もし何か言ったら、ボコボコにされる」
「もし何かやらかしたら、人生終わりだ」
そんな危険性が、日本には満ち溢れています。
本当に恐怖を感じます。

そして同時に、
「この国に、Thinki Differentできる、アップルのような革新的企業は、生まれないだろうなあ、ゼッタイ」
と、思ってしまいます。


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