高台の恋みくじ

今年も残り二週間ほどになったとき
年内の診察を最後に一回入れながら
主治医が言い出したのは残り二週間
今年やり残したことがないようにと

残り二週やのに結構ハードやな

言われたときの率直な感想がそれだ
普段は言わなさそうな意外な発言で
驚きも多少はあったけれど何よりも
あと二週間で何をしようかと思うと

やり残したことを思いつく限り並べたら
ひとつのことばかりになってしまいそう
つまりそれは恋愛なのかどうかちょうど
今探っている最中の話題のことについて
彼が今どこにいて何を思っているかとか
再会して次は親しくなれたりするかとか

たぶんほとんどすべてのことを
もう来年でいいやと半ば諦めて
焦らないでいこうと思ったけど
もし今年のうちにこれだけはと
思うことをやりきるとするなら

これまで一度も上ったことのない坂道を
この勢いで上っていってみることにした
近くの観光地ほど行かないものだと思う
ロケ地に何度もなっている一帯なのだが
そこにあるのは学問の神様を祀る神社だ
坂を上ったうえに階段まであってやっと
海と街を一望できる高台にたどり着ける

自分なりにこだわったところは
靴の中敷きを新しくしたことと
影響を受けた右耳のイヤーカフ
現時点で自分なりのフルメイク
寄り道せずまずお詣りすること

別の神社で同じものを幾度となく
ひいては言葉に深く思いを巡らし
物事がその通り動いたこともある
珍しいおみくじがお目当てだった

撤収。
わたしには華がある
悪いけどこの恋はにがさん。
もう一度ふたりで始めよう。
どうにもならないことがある。
その愛でいいのか。
好きなら好きと、言えよ。
いつでもどこでも誰とでも。
さよならはあまりに急。

これまでの内容を思い返しながら
これでちょうど十回目になるとか
今回は何を言われるのだろうとか
期待と不安とともに石段を上った

学問の神様にお願いするのは
少し筋違いかもしれないけど
仕事と恋愛の縁を聞きたいと
お詣りをしてからおみくじを

拝殿から下がり振り返るとそこから
山から海まで一望でき思わず深呼吸
春になると花が咲き誇るらしいから
わたしはその頃ここに来るのだろう
動きを振り返りながら物語の展開を
確かめるために恋みくじをひくのだ
手帳のカバーに挟み込んだ衝撃的な
言葉の意味を掴めたかもと思えたら