波寄さぬ浜

いろんなことを整理していたら
一度に一点に集中しすぎたのか
他のことに気が回らなくなった
早くカタをつけたくなりすぎて
期限もないのに焦っているよう

こういうときはかすかな感覚だけど
枯渇してしまうかもしれないと思う
想いも言葉も振る舞いも心の潤いも

それはとても現実的なことかもしれない
それは至極まっとうなことかもしれない
それは世間では当然のことかもしれない
それは普通でかつ良いことかもしれない

それなのに
すこしだけ
不安になる
枯れること

いつも潤っていたいと思っていた
心が枯れはてて潤っていなければ
わたしはわたしらしくいられない
嘘をつき続けたとしてもいつかは
耐えきれなくなるか壊れるかする
だからいつも心は潤っていたいと

わたしの体の奥のほう
砂浜みたいなところが
寄せては返す波で潤い
やわらかく水を含んで
そうして生きてきたの

今はまるで波も寄さない
乾ききった水を含まぬ浜
手から滑りこぼれ落ちる
砂粒がすべてさらさらと

届かない波を遠くに見て
乾いた心を抱えて思うの
今触れれば溶け落ちそう
今触れられれば きっと