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シリーズ「いまさら聞けない!?社会教育③」~遊びと学び

 開設から50年、社会教育の実践機関として位置づけられてきた東京・日野市にある「ひの社会教育センター」ですが、時代と共に関わる人もまた変化し、3世代を超えて利用されている場所になっています。
 時と共に変化することと、変わらないもの。社会教育とは何なのか、社会教育に求められることは何なのか…こうした話題について今年度は、現場で日々活動に向き合う職員と、この分野を専門的にご研究されている東京都立大学(2020年3月までの首都大学東京)の荒井文昭教授との対談をお届けしていきます。第3回対談は、荒井先生と、ひの社会教育センター職員の山本江里子と寺田達也です。


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荒井 文昭(あらい ふみあき)教授 プロフィール 
専門研究分野:教育政治研究、教育行政学
社会教育協会の理事として、協会附属「市民の社会教育研究所」(2019年設立)の準備段階から携わり、現在、同研究所の副所長を務める。
所属 東京都立大学人文社会学部 人間社会学科 教育学教室 ・ 人文科学研究科 人間科学専攻 教育学分野
 研究テーマ
1. 教育政治の研究(誰が教育を決めてきたのか、誰が決めるべきなのか)
2. 学校づくりと地域づくり(構造改革下における教育行政の動態調査)、
3. アジア・オセアニアにおける教育自治のあり方
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面白くなくては、遊びではない。
遊びには意欲があるから、学びに繋がる。

寺田:今回のテーマは 「遊び」というところからの世界のひろがりについて話していきたいと思います。

荒井:遊びから広がる世界というのは大事で、研究的な言葉でいうと学ぶということは、遊びときりはなせない。知らない知識を、我慢して一生懸命「学ぶ」。でも本来はそうでなく、大人でも子供でも、「学び」がその人にとって、どう意味があるかということで、意味が変わっていく。
次の世代につながる、本人の意欲と結びついていることが本来の学びであり、面白い遊びや文化には本質があるものです。

寺田:そもそも遊びとは何か?改めて考えるとなんでしょうね。

荒井:まずは面白くなくては「遊び」ではないですね。

寺田:世界を広げたいと思っても、そのきっかけが「遊び」といわれると、どう遊んでいいかわからないところがあります。
たとえば、楽しそうなところに足を踏み入れてみると、主体的に自分が動き、次はあれやりたいと進んでいく、自分が「主体的にものを見るプロセス」なのでしょうか。

荒井:そうですね、学ばされたら覚えない、できないことも、「意欲」が前提にあり、やりたいと思ったらできるんです、不思議なことに。意欲に基づき体を動かす、意欲を理解するところから。そしてその支援する手立てを知らないとできない、そこがセンターの力量のみせどころかもしれません。

山本:学校教育でも意欲を引き出すとよくいわれますが、そういわれる理由はなんでしょうか?引き出せないまま終わっているのが現状ですか?

荒井:学校教育では、「意欲関心態度」が問われ、子どもたちは言われたからやっているという気持ちになりがち。それは子どもには見破られますよね。

山本:現代の問題点かもしれませんが、子どもに「好きなものを自由にさがしておいで」と言っても、出てこない、見つけられない、「何が自由かわからない」という現状があるような気がします。

荒井:「社会を渡り歩けるよう支えつつも、好きなものを見つけてごらん」と言っても、親の言っていることが分裂していると、子どももわかるのでしょう。

山本:何かのための学びじゃなく、好きなことをやっている中から、自分の意見を見出すことが求められますね。
今回のコロナ禍、アニメの世界で見たような、大げさだけど「世界の終わり」みたいな様子をみて、『みんなで学びたい、リアルに会いたい』 と子どもたちが気付くといいですね。

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寺田:「遊ぶことをする」というのは、大人になるとけっこう難しい。
なんでもやっていいよということは困るし、意外と難しいことですね。

山本:一つの事例ですが、ここの講座を選ぶとき、「好き」なことと「苦手」なことを二つ選んで入会した60代の女性がいて。自分に「似合わないこと」への挑戦を始めてみたところ、もう何年も続いているんです。
素敵なことに、年代も性別も超えて同じクラスで習っている、10代の男の子から自分の知らなかったジャンルのことを教えてもらったり、と喜ばれているんですよ。

荒井:ひの社会教育センターでないとあり得ない、ほほえましい光景ですね。

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遊びから学ぶには、
そこが「安心できる場所」であることが大事
遊びを誘う側も「楽しく遊ぶこと」が大事

寺田:新しいことを始めるのは、おっくうで勇気がいることだけれど、何かをきっかけに「こわいけど踏み込んで、やってみて楽しかった」という経験をしている大人が子どもに教えられることがあるはずですね。子どもは「行って最悪」だと二度と行かないですからね。
 挑戦を進めるプロセスは少しずつ広げていかないといけなくて、いきなり限界を超えちゃうと、それまでの心の中の「安心安全ゾーン」までが縮んでしまう。気を付けなければいけないところです。僕らの事業でいうと 「初スキーはいいイメージで帰す」が鉄則です。(笑)
「遊び」を簡潔にいうことは難しくて、遊びの機会をつくる側の、ストレスコントロールが重要で、世界を広げることも閉じることもあることを知っていないといけないですね。

荒井:利用者のニーズに応えるだけならカルチャーセンターと同じかもしれませんが、ひの社会教育センターには人間が発達するときに必要な「安心できる存在」がいる。振り返ったときに、見ていてくれる存在がいつも居て、戻りたくなれば安心感のある場所に戻れる。自分自身が自信を持って、受け入れてもらえる関係であると自覚できる、「安心感」をつくることが、職員としての能力や努力が必要とされるところです。

寺田:ここに集まる人が安心して遊び(学び)を楽しめるよう努力していきたいです。と同時に「面白がっている」「楽しんでいる」その雰囲気を忘れないようにすることは、これからもセンターにとって大事なことですね。
今日も楽しく考える深い時間をありがとうございました。

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楽しく学ぶ、遊ぶように学ぶ。ひの社会教育センターの講座で「やりたい」を実現しよう!

※この記事は、ひの社会教育センターの機関紙「スマイルタウン」の2020/11-12号に掲載した内容です。
※このディスカッションは2020年3月に実施されました。

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