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Leave No Traceを深掘り!【原則7他のビジターへの配慮編】

 東京は桜も散り、すでに夏日を更新するなど、早くもグリーンシーズンが到来していますね。ピクニックや山などに出かけるにはとてもイイ季節になってきました。さて、今回はそんなグリーンシーズンに向けて、LNTを深掘りしていきましょう!

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前回の記事はコチラ👇

 そして今回深掘りするのは「原則7他のビジターへの配慮」です。この原則の7番、少し違和感をもった方も少なくないはず…。
 僕が初めてLNTと出会った時、謎に思ったのがこの“原則7番目”です。なぜならLNTの他の原則を見ていくと、少なからず自然に対して何かしらのアプローチをしているのですが、この“原則7”だけは、なぜか「他のビジター」と書かれており、配慮すべき対象が人になっているからです。自然を守るための原則なのに、なぜ対象が“他のビジター”なのか…。
今回はそれを深掘りしていきましょう!


みんなはどこを使う?

水辺のきれいな公園へピクニックにやってきました。
皆さんはどの場所にレジャーシートを広げ、ピクニックを楽しみますか?

 水辺のキレイな公園ですから、きっと休日の日には水辺の方から人が入って行きそうですね。水辺が人気なので、👇のように埋まってしまいました…。さて、みなさんはどこに場所をとりますか?

次の機会に訪れると、人気の川辺エリアは芝生の裸地化(らちか)が進んでいました。さて、みなさんはどこに場所をとりますか?

 ここまで3枚の画像で、この公園の移り変わりを見ていただきました。
 最後の写真は、裸地化が進んだところには誰も入らず、芝生が生き残っているところに人が集まっています。さて、この公園の未来はどうなるでしょうか…。
 きっと、水辺から離れたエリアも次第に裸地化が進み、さらにその外側に人が集まるようになり、そこも裸地化し…。その悪循環で、恐らくこの公園は芝生エリアが減少した公園になっていくことでしょう。

 つまり、人間の行動心理によって、自然を少しずつ浸食していくことが上の写真からお分かりいただけたと思います。例えば、これと同様のことが、山頂の狭い山の中で起きたらどうでしょうか。お昼ごろに山頂に到着し、これから休憩をしようとしたところ、山頂には宴会のように騒いでいる数十名の団体グループがいました。皆さんはどうしますか?恐らく、静かに自然を楽しみたい人は、そのグループから離れたところで休憩をしようとしますから、結果、人間の心理的に、「なるべく」山頂の近いところで、静かに休憩できる場所を選ぶはずです。それが積み重なると、結果どうなるか…。恐らく、山頂にあったはずの自然も少しずつ浸食され、いつの間にか山頂が広くなっていることでしょう。
 
 言い換えてみれば、アウトドアを楽しみに来たビジターが、相手も楽しめる声の大きさにしたり、場所を少し譲ったり、少しでも他のビジターに配慮することで、自然環境へのダメージを減らせるのではないでしょうか。

「アウトドアあるある」で考えてみよう!

 これから、アウトドア活動の中で起こり得る“あるある”をいくつか提示していきます。
 その“あるある”に対して、皆さんはどんな気分になりますか?
 提示されたシチュエーションの中で、あなたがされたら嫌な気持ちになるのはどれですか?


アウトドアあるある①

【キャンプ場で…】

出典:https://www.walkerplus.com/article/1104752/

 あなたは家族でキャンプをするために、とあるキャンプ場を訪れました。管理棟で受付を終えて、指定されたキャンプ地に行くと…。 
 シチュエーション①:隣のサイトには20人くらいの団体、大音量で音楽を流しながらBBQしている。 
 シチュエーション②:目の前のファミリーキャンパーの子どもが、木に向かって立ち小便をしている。 
 シチュエーション③:指定されたキャンプサイトからはみ出て、テントやタープをたてている。



アウトドアあるある②

【登山中に…】

出典:https://yamanashi-hiking100.jp/course/detail/36

 あなたは静かな自然を感じるために登山をすることにしました。道中は、小鳥の鳴き声や小川のせせらぎを目や耳で楽しむことができ、山頂に到着してみると…。
 シチュエーション①:山頂の標識前でシートを広げてお昼ごはんを食べるグループがいる。
 シチュエーション②:自分たちが休憩をするその隣で、携帯電話を使って大声で会話をしている。
 シチュエーション③:風向きを考えずにタバコを吸い、吸い殻をその辺に捨てている人がいる。


 以上、2つの「アウトドアあるある」を提示させていただきました。
皆さんはどのシチュエーションに一番嫌悪感を抱いたでしょうか。
(もし、この記事をシェアする人がいたら、是非意見を出し合ってみてください!)どのシチュエーションに嫌悪感をもち、どのような意見をもつのか、恐らく結果は千差万別になるでしょう。

 つまり、その人のアウトドア・自然に対する想いも価値観も楽しみ方も十人十色、人それぞれの感じ方や考え方があるということです。ここで大切なのは、“自分”にとって楽しいと思える行動が、果たして“他の人”にとって楽しいと思える行動になるのか、を、一度立ち止まって考えることです。アウトドアの環境はみんなのものであり、アウトドアを楽しむすべての人が、平等に自然を楽しむことができることを保証しなければなりません。自分だけでなく、他のビジターの体験の質を保つこと、それがこの原則7のキーワードになります。

“LNTポリス”にはならないで…!

 今回の話では決して、「キャンプ中に音楽を流すな!」とか「山の中でタバコを吸うな!」とか、禁止事項を謳っているわけではありません。そりゃ、限度を超えた行動(例えば、ゴミの意図的な放置、管理されたキャンプ場での禁止事項行為etc.)に対しては、適切な対処が必要かもしれませんが…。

 このLNTが目指すところは、今この記事を読んでくださっている方々にLNTを理解してもらい、それらを実際のアウトドアフィールドの中で、“背中を見せて”行動してもらうことです。
 コロナ禍に、コロナ対策としてのマスクを着用しない人に対し過剰に注意をしたり攻撃的に罵倒したりする人々のことを「マスク警察」と呼びました。今回紹介した原則7「他のビジターへの配慮」のみならず、LNTの原則すべてにおいて、押し付けたり、強要したり、やらない人を罵声したりすることを推奨していません。まずは、LNTを理解している我々から「自然のなかはみんなのものである」という認識をもち、自分たちの行動の中でより自然に負荷を与えない方法を探りましょう。強いては、その行動がLNTを知ってもらえるきっかけになるかもしれません。

子ども会ぽけっと「春山ハイキング」より。団体で動く際に気をつけているのは、広いところでは1か所でコンパクトに。狭いところでは、分散して他の人も楽しめるように意識しています。

ひの自然学校サステナブル レスポンシビリティマネージャー
若泉わか

#登山 #ハイキング #アウトドア #環境  

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